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8. 手の内に入れる

 翌日私は王家のバラの庭園でジュリアンナ嬢が来るのを今か今かと待ちわびていた。


「バージル落ち着けよ」

 ダニエルの声も上の空のだった。

 恥ずかしい事に彼女と踊って魔力が流れ込み昨夜は眠れる夜を過ごしたのだ。

 ベッドの横になっても彼女の温もりが忘れらず、久しぶりに気持ちが昂り抑えきれず自分で慰めてしまったのだ。

 いい年をして何か彼女に対して妙に後ろめたい気持ちになり申し訳ないと思ってしまっていた。

 それでもいつもとは違いあからさまにスッキリとした顔をしてたらしい。

「お前」

 ダニエルはそこで言葉を止めた。


 侍従に案内されアンナ(ジュリアンナ)がメイドを伴って現れた。

 急な呼び出しに応じる条件としてメイドのビオラを連れていく言われれば断る訳に行かない。

 家族にも自分の魔力量を伏せていると言った彼女が連れて来たいと言った侍女なのだからよほど信頼しているのだろう。

 アンナと話しながら私はビオラを観察していた。

 思った通りアンナの魔力の話をビオラに振るとアンナの事は全て知っていると答えて来たのだ。

 人払いをしビオラも一緒の席に付かせ昼食を取る。


「アンナは自分の魔力についてどのくらい知っているの?」

「さぁ、ただ普通の人より少し多いくらいにしか思っていないです」

 と昨日と同じく惚けている。

 そんな筈はない、絶対的に魔力量は私より多いはずなのだ。

 サンドイッチに夢中だったビオラにそれを突っ込むとむせながら「アンナ様の魔力量は最大だと思っていますわ」

 とあっさりと認め、自分の事はどう見ているのかとドスの効いた声で反対に尋ねて来たんだ。

 ビオラからは子供の頃に出逢った妖精と同じような気を感じていた。

「僕にもキミと似たような友達がいたからね、何となく分かるよ」


「えっ、殿下にも精霊のお友達が居られるのですか?」


 ぽとっ。

 アンナの言葉に体が硬直し口に運ぼうとしていたチキンを落としてましまった。

 目の前でサンドイッチを頬張りながら太々しくこちらを伺う次女が精霊だと?!

「なんだって!侍女は精霊殿なのか?私はてっきり妖精だと思って。。。

 アッ、アンナは精霊とともにいるのか!・・・」

 彼女は【あっ!】小さく声を上げ侍女の顔を見る。


「あーあ、アンナったら墓穴を掘っちゃったじゃないの」

「ごめん」

 令嬢とメイドとしての会話では無いと思った。


「しょうがないわね。アタシは光の精霊よ。アンナに名前を貰って契約したの。文句ある?」

 

 文句があるかと言われても・・・にわかには信じられない。

 でもどうしてアンナと契約をしのか聞いてみたかった。


「それはアンナが愛し子だからよ」


 何故、聖女は愛し子にならなかったのだろうと不思議に思い尋ねると精霊ビオラはアンナが好きだったからと恥ずかしそうに言った。


「そうよ、私達精霊は自由なの。魂に響かなければ愛し子とは感じないわ」


 一体アンナは何者なのだ。私より魔力も多く気まぐれだと言われる精霊と契約をし加護を受けているなんて。

 動揺はするものの絶対に彼女を手放してはいけないと私の本能が告げている。

「愛し子か。羨ましいな。アンナはやはり特別なのだね。だから私が触れても大丈夫なのか。昨日出会えたことはやはり運命だったんだ」


 最大限の魔力を持ち精霊と契約しているジュリアンナか・・・うん。

 立ち上がりアンナの横の来ると座っているアンナを椅子ごと自分の方へ向ける。

 驚くアンナの前にそのままひざを折り初めて会った時と同じように彼女の手をとった。


「ジュリアンナ・オレガノ、私は貴女に婚約を申し込む」


 私はその場でアンナに求婚をした。

 彼女の魔力量は国家に置いても貴重で悪用されない為にも国として守らねばならないと理由をこじ付けた。

 背中でダニエルが呆れて苦笑いをしているのも分かっている。

 それでも私は権力かさにしてでも君を守る為に直ぐにも婚約すべきだと訴えた。


「これからアンナが社交界などいろんな場所へと出て行けばいつ私のような魔力持ちと会うか分からない、そういった事から君を守ることが出来るのなら・・・」

 私はふっと小さく息を吐くと肩に置いた手をアンナの後頭部と背中にまわし優しく抱きしめ耳元で

「それに、こうして触れて抱きしめることが出来るのはアンナしかいないんだ。だから私の婚約者といや、恋人になって欲しい」

 そう囁くと腕の中の彼女は耳まで赤く染めている。

 

 可愛い、今すぐ押し倒してしまい程可愛い。


「可愛いねアンナ。耳まで赤ってる」


 その瞬間アンナは腕の中で崩れるように気を失しなってしまった。


 ダニエルとビオラにやり過ぎだと罵声を浴びせられながら馬車でオレガノ邸迄彼女を送った。

 馬車の中で彼女抱き抱えたまま私は人に言えぬ心地良さに酔いしれていた。

 彼女とは触れ合うだけで魔力の交換ができるようだ。彼女の魔力は私の身体の中を巡り魔力の暴走を抑えてくれる気がする。

 こんなに気持ちが良いのなら口づけを交わしたらどうなってしまうのだろう。

 ああ、早くアンナを自分の物にしたい。

 一人で悦に浸っている内に馬車はオレガノ男爵邸に着いてしまった。

 邸に先に飛び込むビオラに続いて愛娘をお姫様抱っこして入っていく私を見てオレガノ男爵夫人が驚き倒れそうになるのをダニエルが支えた。

 ビオラに案内され彼女の部屋へと運びベッドに寝かせ、私は事の次第を夫人に説明すると気を失っている娘を心配しながらも私が婚約を申し込んだ事を伝えると「まぁ」といって微笑んだ。

 改めて正式な申し込みをしますと伝え私とダニエルはオレガノ邸を後にしたのだがその馬車の中で再度ダニエルに散々怒られることとなる。


 帰城し直に父と母にアンナの事を報告する。

 母上は兄上から弟がオレガノ男爵の次女ジュリアンナ嬢に一目惚れしたようだと聞いていたらしく嬉しそうに私の話に聞き入っていた。

 父上はというと私の魔力酔いの話を周り洩らさないよう事情を理解してくれるだろうと思う侯爵家から令嬢を娶るつもりで動き出そうとしているところだったと云う。

 自分の思いも寄らぬところで話が進む前で良かったと胸を撫でおろした。


 アンナの父親であるアドルフ・オレガノ男爵は商家であった曽祖父の時代から王家と繋がりを持っており父上の幼馴染みでもあった。その関係で母上もマリアンヌ夫人と気心が知れた仲であったことから彼女の類稀な魔力量の事と私が触れても魔力酔いしない存在である事を伝えると一つ返事で婚約の許可を貰うこと出来、 直ぐに閣議を開かせた。

 大臣貴族の中には元々商家から成り上がった男爵家令嬢では釣り合わないと意見するものもいたが、彼女の魔力は凄まじく王家の保護下に置くものとする為の婚約だという国王の一言で承認されることになる。


 それにしてもあの時倒れてしまったのは魔力酔いだったのだろうか?

 そんな不安を抱えながらも私はその夜またもや嬉しくて眠れぬ夜を過ごしたのであった。





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