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3.デビューします。

 とうとうデビューの日がやって来ました。


 朝からビオラを筆頭に数人のメイド達に磨き掛けられそれだけでももう疲れ切っている私です。

 コルセットをいつもよりきつく締め付けられながら舞踏会とかに出るドレスなら仕方ないけど普段はコルセットなんて必要ないよね。自分で脱ぎ着できないし。前世にあった一体型のボディスーツを作ろうなどど考えていました。


 ドレスはこれでもかと云うくらい豪華に仕上がっていた。

 だからと言って派手々しいものではないのよ。

 肩を出したパールピンクのプリンセスドレスで刺繍は銀糸一色だけなので落ち着きもある。

 父さま、かなりお金を掛けましたね。


 全ての支度が整いビオラと馬車で王城迄向かいます。エスコートしてくれる父さまは先に行っており私が到着するのを待っていてくれることになっている。

「両陛下を間近で見れることなんて初めてだから緊張するわね。でも一つ楽しみもあるわ。今日は聖女マリー様のお披露目も兼ねているでしょう。どんな聖女なのかしらね」

「これから長い付き合いになるんだからしっかり聖女を見て置いてくださいよ」

「うん。それにてもビオラが一緒に入れないのは残念だわ」

「大丈夫ですよ。私もフォルちゃんもどこにいても念話さえ送ってくれれば直ぐに飛んで来れます」

「頼もしいわ。宜しくお願いします」


 馬車が到着し従者が差し出す手を取ると降りる補助をしてくれる。

 その先には父さまが最高級の笑みで私の事を待ってくれています。

 父さまの正装姿も完璧で素敵過ぎます。

 従者の手を離し父の腕に手を添えて王宮の中へと入って行きました。


 赤い絨毯の上をエスコートする美丈夫な紳士とそれに負けないくらい愛らしいプラチナピンクの髪と瞳を持つ少女を見て周りにいる来賓たちは息を飲み言葉を失った。二人が己の目の前を通り過ぎるとその後ろ姿が見えなくなるまで見惚れていたのでした。


 王宮内で一番広い会場の広間はデビューを迎える娘とエスコートする家族、そしてその娘たちをひと目見ようとする来賓貴族で溢れています。

 その中でもひときわ目立っているのがオレガノ家。

 会場で合流した美しさと色気ムンムンの母さま、そして今や社交界の華と言われる姉さまが揃ったのですから注目されない訳がありません。

 姉さまは今回兄さまのエスコートで来場し、兄さまはそのまま騎士団のお仕事で見回りへと出てしまったそうです。私が寂しそうな顔をしていると


「アンナ大丈夫よ。イーサンは交代の時間を見計らってまたこちらに来てくれるわ。可愛い妹の晴れ姿を見ないなんてことあり得ないでしょう?。ファーストダンスも父上と取り合っていたくらいですもの」

 と私の背中を優しく摩りながら言ってくれたのでした。


 兄さまにもこのドレス姿はやっぱり見て欲しいものね。

「ありがとう、姉さま」


 その時両陛下のお出ましを知らせるファンファーレが広間に響き渡りました。

『うわぁリアル国王陛下、やはり威厳がある。王妃陛下も優しそうで綺麗、マリア様みたいだわ』

 私はミーハー気分でお二人の姿を見つめています。

 今日デビューする私達への歓迎とお祝いの言葉を陛下から賜り次はいよいよ聖女のお披露目です。


「この目出たい日に我が国とって救世主として八年前に誕生した聖女マリーを皆に紹介させてもらう。 聖女マリーをこちらへ」


 陛下の言葉に王席の後ろのカーテンから王太子殿下に手を引かれた聖女マリーが登場した。すると会場からは歓喜の声が上がる。

 聖女が両陛下の間にある椅子に座ると会場内がもとの静寂を取り戻すのをまって、陛下がすっと立ち上がり言葉を発する。


「聖女マリーは我がアデライト王国で十年以上続いた災いを誕生と同時に全て浄化してくれ国を救ってくれた。去年満七歳の誕生日を迎え今までおった神殿から王城内の離宮へと移って参った。一年間は王宮での生活に慣れるため人前に出る事は控えさせておった。これから大事な聖女としての使命は勿論のことだが、まだ幼き八歳の少女であるマリーが世の中の事を知り皆の心に寄り添う事の出来る者となるべく人との関わりを持って成長して欲しいと我は思う。

 彼女の成長に従いこのアデライト王国もまた平和であり続ける事が出来ると云う事を忘れてはならない」


 話し終え陛下が聖女マリーの小さな手を取ると黒髪の少女は椅子から降り真っ白なドレスを空いている手でつまみ礼を取りました。

 その愛らしさに会場からは盛大な拍手が起こり、中には「聖女さまー」と涙ぐむ者もいたのでした。


 私は聖女の姿を見て内心驚いていました。

 おかっぱ頭の少女の髪はこの国では珍しく黒く、瞳も同じだ。

 どう見ても東洋系の面立ちで日本で言う座敷童にしか見えなかったからだ。

 念話でビオラに問う。


『もしかして聖女は私と同じ世界から転生して誕生したの?』

『そんなことは無いわ。彼女は正真正銘アデライト産よ』

『そうなのね』

 ビオラがそう云うのだから間違いないのだろう。


 両陛下の間に挟まれて座り退屈そうに足をプラプラさせている聖女マリーを見ていたら彼女の背後に何かもやもやとしたものが見え違和感を感じた。

 何だろう?

 そのもやもやは灰色の煙のように見えます。それ程悪いものと云う感じではないけれど決して良いものとは思えません。もしかしたら今の彼女の心情が現れたものなのかも知れないけれど、気になるわ。

 

 その後デビューを迎えた数名ずつの名が呼ばれエスコートするパートナーと共に両陛下の御前に並びご挨拶をします。

 「オレガノ男爵家次女ジュリアンナ嬢」

 呼び出しの声に父と共に一歩前に出、足を引き礼を取ります。

 「面を上げなさい」

 陛下のお声で顔を上げると


「ほう、ジュリアンナと申すか。アドルフよ今まで儂に隠して居ったな。流石お主とマリアンヌの娘だ。長女といいまた世間を騒がすこと間違いないわ」

 何か含みを持って笑う陛下。

「有難きお言葉ですがご配慮下さませ陛下。陛下にそのようなお言葉を掛けて戴きますと娘が一層注目を浴びてしまいます」


「あはは、そうか、そうか。しかしもう手遅れの様だぞ」

 そう仰って響き渡るお声でまた笑われたのでした。


 先々代がお国に多額の資金を提供し名誉爵位を賜った。その代からの王族とのお付き合いでアドルフは今の陛下とは気心が知れた仲である。

 今一度頭を下げ御前から退いて母と姉の元戻ると父は


「全く。相変わらず陛下はお人が悪い」

 とため息をつきました。

「ふふ、いつもの事ですわ。それより貴方アンナにダンスの申し込みが来そうですわよ」

 母は父の後方より私に向かって歩いてくる数人の子息を見ながら口元を少し上げて笑います。


「いかんいかん。ファーストダンスは当然私の権利だ。どこぞの馬の骨とも分からぬ男に可愛いアンナの手を取らせて堪るか。ほらアンナ行くよ」

 父は私の手を取ると男性たちを睨みつけホールの中心へと私をエスコートしていくのでした。


「父上は私の時よりも酷いですわね。でも気持ちは分からなくもありませんわ。今日の会場で一番輝いているのは我が妹、ジュリアンナですもの」

「そうねぇ。うちの子は飛び抜けているものね。流石私くしの娘だわ。明日からお手紙が殺到するでしょうね」

 父に劣らず末っ子ラブの母と姉。

「それは私の時と同じ様にあしらっておけば良いのですわよ。母上の得意分野でしょう?」

「そうね、ふふふ」


 そこへイーサンが息を切らせて戻って来ました。


「私の可愛いアンナは何処にいるのですか?」

 会場内をキョロキョロと見回す長男に母とマリエッタは苦笑いをし

「ダディとダンス中よ」と扇子で場所をさして教える。

 中央で周りの注目を浴びながら二曲目を続けて踊る父と妹の美しい姿を目視する。


「はー。父上と踊っているのですね。安心した」

と胸を撫でおろしてテーブルにあったグラスを取るとシャンパンを一気飲みしたのでした。


「この先ジュリアンナも苦労するわね」


 自分たちの事は棚に上げて父親と長男の事を呆れて言う母親に長女も又同調して笑う。

 この様子は周りから見たら家族総出で末娘を溺愛し、そう簡単には令嬢には近づけさせないというオーラ満載に見えたことでしょう。


 



 



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