ある少年の日常②
「んー フゥー」
冬を感じさせる冷たい空気が肺に入る。
軽く準備運動をして冷えた身体を温める。
「よし!」
そして少年は息を吸い込み大きく口を開け何かを叫んだ。
それは言葉ではなく超波数の音波だった。
音波は瞬く間に森へ響いていった。
「60メートル先にフロストボアか!
あれは美味いからなぁ どう調理しようか」
少年は意地悪に笑い、勢いよくツリーハウスから飛び降りた。
大人であっても無事では済まない高さを音もなく着地し消えるように走り出した。
まだ暗く足場の不安定な森の中をスピードをあげ続けて走っている。
走り出してすぐに獲物の姿が見えた。
少年の縦にも横にも何倍もある巨体で体中は厚い氷で覆われている猪のすがたがあった。
少年に気づいたフロストボアは少年目掛けて突進してきた。
巨大な物が自分に突っ込んでくる光景は普通なら恐怖で足がすくむほどだろう。
しかし、少年は怯えるどころか好戦的な笑みを強め、さらにスピードを上げてフロストボアに向かっていった。
「《狂狼の鉤爪》!」
すると少年の指先がメキメキと音をたて爪が伸び鋭利になった。
衝突寸前で地面を蹴り上げ一瞬でフロストボアの頭上に到達する。
爪を立て頭をめがけて思いっきり突き刺す。
「うお!」
分厚い氷を貫通して脳を潰したことにより勢いよく血が吹き出してきた。
フロストボアは即死したが勢いをそのままに木々に突っ込んだ。
「あーあ...ん?この気配は...」
ドドドドと地響きがなり森の奥からフロストボアの大群が突進してきた。
「は!仲間の敵討ちか?
おもしれぇ! 第2ラウンドだ!!」
これが最強の戦闘種族デルダードの生き残りレオ・デルダードの日常である。