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パーティメンバーが結婚したので。  作者: 青咲りん
パーティメンバーが結婚したので、酔った勢いでパーティ組んだ。
2/2

その2

 珍しく夢を見ていた。

 最近は全く見なくなっていた、前世での夢だ。


 私は、当時大学生だった。

 文芸学生だった私は、毎日小説のネタになることを探しながら大学に通い、バイトに通い、街中をちょろっと散歩していた。


 そんなことをしながら思うのは、『あぁ、異世界転生してぇ』の一つに尽きた。


 そんなある時だった。

 示し合わせたように猫がトラックに轢かれそうになっていたのを見かけて、思った。


(チャンスじゃん)


 思いながら飛び出した。

 結果、見事私は例の何もない真っ白な空間へ。


 目の前に現れたのは、ハバネロ年金デュクシの真理みたいな奴で。


『いやチャンスじゃねぇよ』


「……ですよねぇ」


 なんか怒られたし。

 当たり前だよねー、うん。

 わかってた。


『わかってたらするんじゃねぇよ、仕事増えるだろ!?』


 どうやら神っぽい彼は、上位次元で世界の魂の行き来を調整する作業員だったらしい。

 そんな単なる作業員だからか、望んだチートなんてくれるはずもなく。


『ったく。次の世界じゃもっと安全に暮らせよ!仕事はあるんだからさ!』


 そう言って、私を別の世界へと転送させた。


 神様って、あんな一般人っぽいやつなんだなぁ。

 まぁ、ギリシャ神話の神様も結構俗っぽいところあるし、こんなもんか。


 そもそも人が考えたものにそういうのを求めるのが間違ってるよな。


 なんて思いながら目を覚ます。


 どうせ転生するなら、魔法がいっぱい使いたいなぁ、なんて考えながら体を起こした。


 ……体を起こせた?


 視界に映る自分の両手を見る。

 それは確かに子供のものだったが、どうやら赤ちゃんからのスタートではなかったらしい。


 記憶を探れば、どうやら今世と前世の記憶が混じっているらしく、何やら『前世を思い出す』という形で転生することになったようであった。


「なるほど、今世の種族はエルフか」


 慣れない耳の重さに違和感を覚えながら、その長い耳を触る。

 意外とプニプニしてるし、しっかり筋肉と軟骨があって想像してたのより自由に動かせる。


 ピクピク耳を動かしてみる。


 …….が、なんだか耳の辺りが筋肉痛になりそうな予感がしたので、すぐにやめた。


 前世の記憶を思い出した私は、今世の記憶を辿って情報を整理する。


 名前はエルサ。

 この世界ではどうやらメジャーな感じの、日本で言う太郎の女の子版に相当する名前だ。

 要するに、花子。


 ……もっと良い名前つけてよ。


 年齢は6歳。

 レベルは未測定。


 家族構成はおばあちゃんだけで両親はいない。

 理由は……わからん。

 なぜか急に預けられた。


 ……戦争のために疎開させられたとか?

 は、どうやらない。

 里に住んでるけど、全くそんな兆しは見られなかった。


 容姿は端麗、髪型は金髪ベリーショート。

 もみあげが長くて、この髪型もエルフの子供にとってはとっても一般的な髪型。


 なんでも、後ろ髪を伸ばして良いのは大人になってからっていう決まりがあるらしい。


 そのかわり、もみあげは伸ばしても良いのだとか。


 なんだそりゃ、どういうルールだよ。


 ……ていうか、意外とパニックとかにならないのね、私。

 普通なら結構取り乱すと思うんだけど。


(実感が湧かなくて、感情がラグってるのかも)


 そんなことを考えていると、どこからかおばあちゃんの声が聞こえてくる。


「エルサ!エルサ!起きな、エルサ!」


「起きてるよー」


「良いから寝ぼけてないで早く起きな!」


 おばあちゃんの声が、どんどん若くなっていく。


 おかしい。

 風邪でもひいたのかな。


 だったら風邪薬を調合しないと。

 えっと、いつもの薬草はどこにしまってたっけ──。


「だから……おきへるってぇ!」


 ガバッ。

 体を起こす。


 目に映るのは、いつものぼやけた酒場。


「……あれ?」


「やっと起きたか、この酔っ払いが。

 店閉めるから、さっさと出てってくれ!」


「あぁ、はい……」


 寝ぼけた頭で、言われるがままに勘定を済ませて店を出る。


 リー、リーリーリーリー。なんて、虫の鳴き声と鉱石灯の灯りだけが、闇夜に私を照らした。


「……あれ?????」


 振り返り、仰ぎ見る。

 そこには、『三本の槍亭』の文字と、コップ同士を乾杯させているイラストの看板が、淡い鉱石灯の灯りに照らされているだけ。


「……」


 ボーっとする頭で考える。

 考えるが、なぜ自分がここにいるのかわからない。


 ……まぁ、いっか。


 鞄を枕に、その場に倒れる。


 そのまま私の意識は泥沼の中に溶けて消えていった。

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