0.プロローグ
それは今から何十億年も前のこと。この世界が生まれたその時に、共に生まれたとされる五つの命があった。
曰く、万物の属性を司る「唯一神」――『命の蝶』
曰く、絶大な魔力を宿す「魔王」――『サタン』
曰く、無類の力を有する「鬼王」――『閻魔』
曰く、不解の能力を持つ「妖怪の長」――『ぬらりひょん』
曰く、生死の概念を操る「死神」――『カガリ』
彼らの血脈は「古の血」と呼ばれ、現代から三億年の昔、超古代と呼ばれる時代に繁栄を始めるべく新たな命を生み出していった。
命の蝶はその力を分け与えた各属性を司る神獣と、更にその血を継ぐ半神半人の氏族を。
サタンは様々な魔法を自在に操る十三人の子供達と、その眷属の悪魔達を。
閻魔は怪力を揮う手下の鬼達と、血族を増やすために力を棄てた吸血鬼達を。
ぬらりひょんは動物やモノを昇華させた各々特殊能力を持つ新たな妖怪を。
――しかし。ただ一人、死神であるカガリだけは血族を増やすことをしなかった。頂点を拒み、自由に魂を狩って生きていくことを選んだ。
そして現在。世界は彼ら古の血と何処からか現れ繁栄を極めた人間や動物、そして炎や水などの概念そのものである精霊によって成り立っていた。何十億年の間に、世界は作り直され、破壊され、また様相を刻々と変えて今を生きていた。
何の変哲もないのどかな春の山。涼やかな風が吹き抜けるこの場所から物語は始まる。
これは、一人の死神がささやかな冒険をする物語。人間の寿命なら一秒にも満たない少しの期間、日常を離れて羽目を外す物語。
それが世界を「作るのか」「壊すのか」「変えるのか」あるいは「救うのか」
――今はまだ、誰も知らない――