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『七行詩集』

七行詩 521.~530.

作者: s.h.n

『七行詩』


521.


その美しさは 夜露に潤い


月や外灯に 照らし出される長い髪


その美しさは 呼吸をしている


触れられそうな 近い距離で


貴方は私に語りかける


かつて 一度もなかった瞬間に


私は何を 残せたのか



522.


ただ好いて欲しいだけなら


駄目なところは 隠せば綺麗になれるでしょう


ただ知って欲しいだけなら


駄目なところは 笑い話にもなるでしょう


見つめてください 呆れながらでも


少しでも広く 少しでも長く 貴方の心に焼きついて


目を閉じ 映し出される 貴方の空の中に居たい



523.


貴方と 向かい合えたとき


貴方の声が 耳の奥まで響いてきては


そのまま私の喉までも 震わせてしまいそうになる


私が言葉を持った理由


今 目の前の貴方へと 美しく育ってくれたこと


何よりも大きな 奇跡を讃えるためでしょう


貴方の存在が 私にとっても 奇跡なのです



524.


ひとつの円になるためには


なにも半分ずつを 持ち寄ることはないのです


もしも貴方が 完璧な円を描くなら


私は離れて見つめ ゼロになる


貴方が傷を負った場所には

 

私が立ち入り 塞ぎましょう


満ちては欠ける 月の表情と同じように



525.


もしも貴方が望むなら


私は風へと 生まれ変わり


貴方の目には映らずに


見守り続けることができます


もしも実体を持つならば


この腕で貴方を抱き寄せて


浜辺の風に さらわれぬよう 守り続けます



526.


今夜 月がなくても構わない


星が導いてくれるから


今夜 嵐が来ても構わない


静かな夜を 数えるばかりでは耐えられないから


今夜 貴方が来なくても 私の心は変わらない


寒さに耐え 長きに坐る 巌のように


小鳥を休め 社を守る 大樹のように



527.


私には決めたことがある


いつか手を取り合えたなら


私たちの歩いた時代が


灰に埋もれて 層になっても


太陽さえも力尽き


世界が氷河に 覆われても


残せるよう 足跡をつけてゆくのです



528.


目を閉じれば 涙は胸の内側へ流れ


返しきれない数の種子が


私のなかで育ってゆく


その一つは やがて大きな幹となり


私を支えてくれるでしょう


私は水を注ぎ続ける


貴方を想い 涙を流し続ける



529.


生まれくるものは 止められず


それが 傷に染み入る 涙となっても


貴方の答えがいつも正しく


私は何度も それを聞かせて欲しくなる


ああ神様、


愛することが罪ならば


私はこれ以上の罪を 犯すことはできないでしょう



530.


向かうものは 止められず


それが 重ね続ける 過ちとなっても


水面を乱す 気泡のように


私に息がある限り それは途切れぬものなのです


本能よ、


堪えることが偽りならば


私はこれ以上の真を 得ることはできないでしょう



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