第17話 魔法戦士軍ドラゴン・ウォーリアー 其の弐
この回は何度も一からやり直して書きました。
ドラゴン(タツ)が再登場して僕もうれしいです(^^)
「全員捕らえろ!」
ロイ将軍の命令で暗部達は直ぐに包囲され、全員が縄で縛られた。
「何故だ。お前達は確かにそこに居たはずなのに。それにマスクも無しでどうやって……!」
「帝国さんはメイガスの魔法の怖さを知らないようだね……。全ては僕の幻惑魔法だよ」
「ガハハハ! お前達があちらから動き出した事も、魔導兵を動かした事も全て筒抜けだ」
「なんだと!? そんな馬鹿な!」
暗部達が驚いて居ると、なんともう一人ドラゴンが現れたのだ。
「なっ! ドラゴンが二人!?」
「まぁそう驚くなよ。ただの分身体だ。こいつを通して上空から全ての一部始終を監視させてもらった。戻れ! 分身統合!」
ドラゴンの分身が本体と統合する。
「くそ! 何て事だ……。戦いの次元が違いすぎる……」
「当然お前達の魔導兵が放った小汚い薬物は上空で全て消毒させてもらったよ。そしてそこに居るジャックは幻惑魔法のスペシャリストだ。なんでも望んだ結果が見られるらしいぞ! ガハハハ!」
「お前達は捕虜となってもらう。大人しくしていろ。連れていけ!」
「魔法なんてインチキだぞ! メイガスめぇぇーー!!」
ロイ将軍が捕虜を連行するよう命じる。青ざめた顔で暗部達は連行された。
◇◇◇
作戦会議が始められた。ロイ将軍含め各軍の隊長が集められた。
「ドラゴン将軍、私からの説明は以上になります」
「ロイ将軍。アドバイス大変感謝致します。では部下たちに説明を始めます。ミランダ参謀長。皆に説明せよ」
「ハ! 各隊長に次ぐ! 今から説明する内容は私を含めロイ将軍とドラゴン将軍が決めた作戦だ。しっかりと聞いて欲しい」
「メイガスの調査部隊が結界を無効化するまでの間、メイガスは魔法による遠距離砲撃を行う。物理属性魔法だ。
この魔法は魔効遮断結界内へも届く。結界の無効化が成功したらドラゴン・ウォーリアー本隊が敵陣営へ進軍。ノースラミエル軍は予定通り軍を進める。メイガスはノースラミエル軍への後方支援、強化魔法を絶対に怠るな。
結界無効化の合図は「ギガファイアーの火柱を同時に立ててもらう。私からの説明は以上だ。続いてはドラゴン将軍から説明がある」
「皆知っていると思うが敵兵の中に"クトゥルフ"が居る。奴が現れたらここは私が対峙する。魔法支援は怠るな。
万が一だが私が倒れた場合、ここに居るメイガス軍の全指揮はジャックが行う事とする。尚、戦況が悪くなった場合撤退命令を行う。
合図は私が魔法で水柱を立てる。もし何らかの問題が発生して待機命令を出す場合がある。その場合氷柱を立てる。以上だ。総員、心してかかれ!」
「ハハ!」
◇◇◇
「ドラゴン将軍。貴方に大変な役を申し付けて誠に申し訳無い。我が軍も全身全霊で戦いますぞ!」
「ロイ将軍、大丈夫です。ここは私が適役かと思います。この戦、絶対に負ける訳にはいきませぬ!」
◇◇◇
ノースラミエル軍三万名。メイガス軍一万と千名。計四万千名全員が味方陣営に集結している。
ドラゴンが深呼吸をし、全身を震わせて味方に魔法を放った。
「範囲物攻上昇!」
「範囲物理防御!」
「範囲時魔法・速!」
約四万の兵の物理攻撃力、物理防御力、身体速度がドラゴンの魔法により向上した。
普通の魔道士がこれを行えば、発動と同時に魔覇消失で死を迎える。
ドラゴンが持つ超膨大な魔覇が有ってこその荒業だ。
調査部隊は全員で三百名。調査部隊兵はドラゴンウォーリアーの中でも屈指の魔法戦士達。念力で相互コンタクトを取り五十名ずつ分かれて六か所あるとされている結界の元を無効化する作戦だ。
調査部隊が結界の方へ移動を開始する。
それと同時にノースラミエル軍が進軍。メイガス軍戦闘部隊が重力魔法により全員が空高く飛び上がった。
メイガス軍は空中から敵を捕捉し物理属性魔法を放った。
「…隕石砲!」
直径五十センチ程の小隕石が時速二千キロ程の早さで敵陣営に直撃する。
大爆発が起き、大量の兵が死亡した。
それをジャックを筆頭に何千名で大量に放っている。
二十分もそれは続いた。
かなりの兵が死亡したのは間違いない。
敵からも戦車砲が大量に放たれているが身体速度がかなり向上している味方兵からすれば飛んでくる蝶ぐらいの速度にしか見えない。戦車砲は全て回避されていた。
……だがしばらくすると敵陣営に着弾する隕石砲が水の弾により相殺されるようになった。
こちらからは見えないが恐らくクトゥルフの仕業だ。何千という全ての隕石砲を水弾で落としている。それも一人でだ。
だがよく見ると捌ききれずに着弾している隕石砲もある。
かなり必死に防いでいて手一杯なようだ。
だがこれを誘うのがロイとドラゴンの作戦である。
----ヴァルドルフ帝国・陣営テント内----
「ぐわあああ!」
「うああぁぁ!」
隕石砲が周辺に落下し帝国兵達の断末魔が周囲に響き渡る。
「クソ。クソクソ! 何故だ。何故結界の中に味方以外の魔法が飛んでくるのだ! このままでは勝つどころか全滅だ。クトゥルフ! なんとかしろ!!」
不測の事態に焦るヤコフ将軍。
「……数が多すぎます……私一人じゃ……無理です……」
「貴様私に逆らうつもりか? さっさとやらんかぁ!」
バシンッ。と乾いた音がテント内に鳴り響く。
「しょ、将軍!!!」
ヤコフ将軍がクトゥルフの頬を強く平手打ちした。それを見て慌てるカラシニコフ大佐。
「……やれるだけ……やります……ごめんなさい……」
クトゥルフがテントの外に出ていった。
「落ち着いてください将軍! 相手は魔法のプロです。相手側が結界内でも有効な魔法を見つけたに違いありません。
ここは一旦後退し作戦を練り直しましょう! あと一週間すれば本国から増援があるではありませんか。このままでは……」
「カラシニコフ。なんだ貴様。大佐の分際で少将の私に命令するつもりか?
ここの全指揮は俺が任されて居る。兵の数では圧倒的に有利なんだ! さっさと自分の仕事に戻れぃ!」
「申し訳ございません。ですが私の仕事は護衛として貴方をお守りする役目がございます。貴方の命を失わせる訳にはいかないのです!」
「ならば黙って見てるが良い。クトゥルフがこの程度の攻撃でやられるはずはない。新任護衛の分際で偉そうな口を叩くなよ?」
「はい……。失礼致しました……」
外ではクトゥルフが必死で隕石を撃ち落としている。
「……お願い……もう……やめて……。…水球散弾……」
クトゥルフはひたすら隕石に向かってアクアショットを打ち続けていた。
戦車もひたすら詠唱者に撃ち続けているが当たらず、何百台も撃破されている。
七万居た帝国兵は絶えず降り注ぐ隕石砲により死亡し、四万程になっていた。
隕石砲の攻撃が始まって一時間半。ようやく砲撃が止まった。
いつの間にか四方の空には六柱の火柱が立っている。
帝国兵斥候が慌ただしく走ってきた。
「しょ、将軍! 報告致します。メイガス軍の小部隊により結界を守っていた大魔導兵六名が死亡致しました……。よって結界がやぶられーーー」
ドオォンッ! と、テント内に銃声が響き渡る。帝国兵斥候が頭を撃たれて死亡した。
銃口からは白煙が上がっている。拳銃を持つのはヤコフ。
「将軍……な!? なにを!」
「報告ご苦労だった。もういい。敵の砲撃が終わった。奴等は魔覇を使い果たしたのだろう。クトゥルフと全兵力で敵を叩きのめす! カラシニコフ、行くぞ!」
(違う、魔覇切れなはずはない。……この戦はもう終わったんだ将軍。メイガスが来たら勝てない。だがアリス、お前だけは何としてでも守らねば!)
----帝国陣営・テント外----
「お前達よぉーーく聞けーーぃ! 隕石の雨は止まり敵兵の魔覇は底を尽きた!
今こそ強大な帝国の恐ろしさを奴らに思い知らせてやるぞ! 士気を上げろ。行軍開始ーー!」
帝国兵はかなり戸惑っていた。魔覇切れで敵の攻撃がピタリと止まるのだろうか? なにかの意図が有って攻撃を停止させたのではないか、と。周囲がざわめき始める。だが。
「う、うおおおおーー! いくぞおおぉ!」
一人の兵士が行軍を開始した。それにのまれて戸惑っていた兵士も後に続いて行軍したのだ。
----ノースラミエル側・上空----
[火柱が上がったぞ! 結界の無効化に成功。撃方止め!]
ジャックが念力で味方兵に伝えた。
ピタっと隕石砲が止む。
[作戦通り本隊は敵陣営へ乗り込む。僕に続けーー!]
地上では帝国軍とラミエル軍が白兵戦を繰り広げていた。
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「どういう事だ? 身体強化を持ってしても硬すぎる! 剣が効かない!」
「我々にはドラゴン将軍の加護がある。同じ身体強化でも全然違うんだよ! 食らえ!」
ラミエル兵の剣が帝国兵の胴を鎧ごと貫いた。
「ぐあ……ド、ドラゴンだと……!? まさか奴がここに居るなんてーー……」
倒れる帝国兵。
白兵戦ではドラゴンの魔法効果が大きく反映されていた。ドラゴンの魔法加護を受けた味方兵は目にも止まらぬ速さで剣を振り、剣を食らっても掠り傷しか出来ず、拳で殴れば相手が大きく吹き飛ぶ力を有していた。
-----二時間後-----
帝国兵が予想外に早く行軍し、開けた天然の大広場にて敵味方が入り混じった乱戦になっていた。
メイガス兵が魔法を放つ。
「…風魔法・ストーム!」
タグ持ち以外の人間が空高く巻き上げられ地面に突き落される。
味方認識タグ。機械都市グラトーンが開発したパーティー用の味方誤射防止タグである。持っている者同士で魔法攻撃を仕掛けてもダメージを受けないという優れものである。しかし欠点は製造情報が流出し、全世界に出回り帝国側も全員装備しているという事だ。
味方の攻勢は突如として止められた。
クトゥルフと敵将二名が現れたのだ。
「…王酸霧……」
周囲の空気が霧へと変化し空気中の水分が強力な酸へと変化した。
「息が……出来ない、身体が……焼けるようだ……うぐ……」
呼吸をした味方兵の多くが肺を溶かされ死に至った。
「何なんだこれは! 毒か?」
[ラミエル兵及びメイガス兵に次ぐ、クトゥルフが現れた。あの怪しいモヤの中で呼吸すると死に至る。総員一時後退せよ]
ジャックの指示により味方兵がクトゥルフを警戒し後退する。ジャック達ドラゴン・ウォーリアーは上空で距離を取っていた。
[ドラゴン将軍。クトゥルフの奴が現れまーー]
ヒュンッッ………ゴゴゴゴォォ……。
「う、うお!」
ジャックの前に何かが高速で通過し衝撃波が発生した。通過したあとの衝撃波がその速さを物語る。
その正体は……ドラゴンだ。
[お前たちは下がっていろ。此処は俺が出る]
クトゥルフの前に突如として巨漢が降り立った。焦るカラシニコフ大佐。
(こ、この方は最強の……! まずいぞアリス!)
「身体強化・完全体!」
「武器具現化・竜爪!」
「き、貴様はまさか! ドラゴンか!? 何故ここに!」
ヤコフがドラゴンの頭に銃弾を放った。
「はは! やったぞ! 奴を仕留めたぞ!」
……ドラゴンの額からぺしゃんこになった銃弾が落ちる。
「う、うそっ!」
「誰だお前……? 雑魚は引っ込んでろ。邪魔だ」
ドラゴンがヤコフの肩に肘打ちをする。たかが肘打ち。だがヤコフは大きく吹き飛ばされて瀕死の状態になった。
「や、ヤコフ将軍ーー!」
ドラゴンがカラシニコフを睨み付ける。
その猛獣のような鋭い視線から非常に濃い殺気を感じたカラシニコフは戦意を喪失した。
「くっ! なんて殺気だ……!」
「邪魔をしたらお前もこうなる……。将軍様でも介抱していろ。さてと、クトゥルフ。相手になれ。今からお前の相手はこの俺だ!!」
やはり戦闘描画はかなり苦手です。せっかくの良い場面にあまり臨場感が無くて申し訳ありません!
次回。 決闘!ドラゴン将軍vsクトゥルフ。