第16話 魔法戦士軍ドラゴン・ウォーリアー
仕事が忙しくなかなかゆっくりと書くことが出来ません。ので、ちまちま投稿しますー!
◇◇◇
五千年前以上前の遥か昔。
この世界に魔法を獲得した人類は存在せず、人類は悪魔族やその他の魔物が使用する魔法を恐れていた。
そんな中、人類は自国の力の誇示の為に世界の五ヶ所で開催される世界武闘大会に力を注いでいた。大会主催国はとある公国。
そしてその中を勝ち抜いた各国最強の五人は世界の中心に位置する主催国の島に招待された。
その島の名は、アルセナ魔公国。
五人はそれぞれ悪魔族の公爵達から力を分け与えられ、もう一つの名を与えられた。
「そなた等に力を分け与える。どうか世界に均衡を!」
人類が魔法を獲得した歴史的瞬間であった。
五人は一致団結し、周囲の者を惹き寄せ、世界を魔物の手から守り均衡を保った。五人はいつしか世界からこう呼ばれる。
"勇者"と。
五人は一つの国家を作り上げた。その名はメイ・ガス王国。
五人の勇者の内最も実力のある者が王になり、残りの者は四将と呼ばれる。
王の名は無のアザトース王。
四将はそれぞれ、
火の将クトゥグア。
水の将クトゥルフ。
風の将イタカ。
光の将ヨグソトース。
勇者達は寿命が近づくと、とある技術により次の世代へ世襲をした。
こうして何千年と勇者の世襲を繰り返し、世界は長い間均衡を保っていた。
そして。火の将クトゥグアの本名は、エドガー・ドラゴン。
ドラゴン一族は類稀な戦闘能力を持つ最強の一族である。
その能力は詠唱を必要としない無詠唱魔法に加え、圧倒的な魔覇を生まれながらにして持っている。
そして。多くの時が流れ五千年後。ドラゴン一族はその多くが死に絶え、ドラゴン一族という称号すら無い時代。
魔法大国メイガスにドラゴン一族最後の末裔が生きていた。
その名はジークフリード・ドラゴン。
----ノースラミエル王国・南西境界線・野営テント内----
「我が軍は帝国の猛攻により深手を負い、現在陣形が崩れ、後退しつつ有ります。
帝国との戦力差は圧倒的です。敵戦力七万に対して、こちらは連邦王国軍三万。
貴方方の援軍を含めても四万弱。それに加えてこちらの負傷兵が多数。このままでは……」
「落ち着いてください。ロイ将軍。我々ドラゴン・ウォーリアーは先程着任しました。王国軍の兵士達全員に例のタグを装備させて有りますか?」
「ええ。勿論装備させて有ります。なにか作戦をお考えですか?ドラゴン将軍」
「はい。我が軍の少将一名と私自ら出向いて少し牽制します。
恐らくその一撃で帝国に大きな隙が生じるでしょう。その間に負傷した兵士をここへ運ばせます。テント外には魔法軍医団を待機させて有ります。
帝国に隙が生じても深追いは厳禁でしょう。恐らくは魔効遮断結界や幾多の罠が張り巡らされているかと思います」
「さすがはメイガス軍! 私は意気消沈してる場合では有りませぬな。ではドラゴン将軍の作戦通りに決行すると致します。我が軍は強力な魔法を持たず非力だ。誠にかたじけない!」
「ジャック少将。行けるか?」
ドラゴンの問い掛けに答える若い少将。
「はい。ドラゴン将軍。僕は既に準備万端です」
「ならば話は早い。飛行後、帝国兵達の上空から牽制しろ。こちら側には例のタグが有る。味方には効かんだろうから安心しろ」
「御意!」
「俺は結界を調べる。ではいくぞジャック!」
ジャックは飛行し味方と敵の境目の上空で停止した。
帝国兵達が上空に居るジャックに向かって銃弾を放っている。
だがジャックには全く効いてないようだ。
ジャックが悔しそうな声で叫んだ。
「……好きで殺したくはない。許してくれ! …劇毒豪雨!」
上空から猛毒の雨が大量に降り注ぎ多くの帝国兵が溶け、苦しみ、死に絶える。
雨は帝国兵達の前方通路を完全に塞ぎ後退を余儀なくされた。
「俺もそろそろ行くか。重力魔法・無重力」
ドラゴン将軍は重力を操り飛行し、ジャックの少し前で静止した。
「もぐっとこうか!? 地殻幽閉!」
その瞬間、帝国兵達の足元に大きな網目状の地割れが発生する。その地割れに多くの帝国兵が飲み込まれ、大きく地形が変化する。
だがある一角だけは平地のままで有った。その一角だけは綺麗な六芒星の形をしているのだ。そこに何キロにも渡る大きな結界がある事を意味している。
ジャックが兵に念力で命令をする。
[総員一時後退だ。負傷者を運んで陣営へ戻れ!]
「ジャック。あの結界が見えるか? あの六芒星だ。恐らく魔効遮断結界だ。
こちらから攻めて帝国を退けるには白兵戦は避けられんぞ。奴ら結界内で本隊を待機させているようだ」
「見えます。ドラゴン将軍。あの結界へ入ったら我々の魔力はゼロになるでしょう」
「では、こいつらに先に白兵戦を始めてて貰おうか」
「召喚魔法・神竜! 召喚魔法・烏賊! ほれ、好きなだけ遊んでこい」
それぞれ体長三十メートルは有るであろう巨大な翼龍と巨大イカが結界の中心の方へ移動しだした。
「ジャック。奴らが俺のペットと戯れている間に一旦野営陣に戻るぞ!」
「御意!」
----ヴァルドルフ帝国軍・魔効遮断結界内----
「ヤコフ将軍! 報告致します。前線部隊がメイガス敵将二名により壊滅した模様!
敵兵は負傷兵を回収し、一時野営に戻ったと思われます。尚、敵将は巨大な化物を二体召喚。現在二体共こちらに急接近中です!!」
帝国兵斥候が将軍に報告する。
「そうか・・。メイガスめ。いらんことを……。 カラシニコフ!」
「ハハッ! ここに……!」
帝国軍大佐が重たい表情で答える。
「魔導兵を投入し、敵陣営に遠隔射撃を放て。混乱に乗じて暗殺部隊を各ポイントに派兵しろ。相手は大国メイガスだ。正攻法では敵わんぞ!」
「ハハッ! すぐに取り掛かります」
命令を受け、去っていくカラシニコフ大佐。
「クトゥルフ!! まずは化け物2体を始末しろ。ついにメイガスが動きだした。お前の出番だぞ……」
まだ幼さが残る少女が無表情で答える。
「……はい……」
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「うわ! 化物め。これでも食らえ! ぐ、ぐあああ!」
「おい! 大丈夫か? し、死んでる!? しまった! うああぁぁ!」
「な、なに!? く、喰わないでくれ! うがぁあ…ア!」
ファフニールとクラーケンが敵陣営で兵達を惨殺している。
ファフニールは敵兵を片っ端から喰いちぎり、火炎の息で敵兵を灰にしている。
クラーケンは八本の足を使い敵兵を絞殺し、触腕で獲物を撲殺していた。
「……どいて……」
グシャッ ボトッ。と嫌な音が聞こえる。
目にも止まらぬ早業でクトゥルフはファフニールの首を片手剣で切り落とした。
「……あなたも……邪魔だわ…水魔法・超純水…」
クラーケンの身体を水が覆う。クラーケンが暴れだしたが水はクラーケンの動きに合わせて動き出す。
一切の酸素も空気も含まない純水はクラーケンを窒息死させた。
「うおおお! クトゥルフ様ーー! 万歳ーー!」
二体の化物は一瞬にして少女に倒された。クトゥルフは兵達からの歓声に眉一つ動かさない。
帝国軍陣営から暗殺部隊三十名程が動き出した。
さらにクトゥルフの力を応用して創り出された魔導兵達も動き出した。
魔導兵は人の姿をしているが全て水。水が人の姿に変化しているのだ。
その水は成分を自在に変えることが可能、さらに水で砲台を形成し、猛毒液を発射出来る。
その猛毒は触れたり、臭いを嗅いだだけで直ちに体組織に浸透し死に至る恐ろしい毒だ。
全部で十体の魔導兵が敵陣営に向かって一斉に大量の猛毒液を発射した。
----ノースラミエル王国軍・野営テント内----
「と、まぁこんな感じですロイ将軍。作戦通りに行けば相手を翻弄出来るでしょう」
「なるほど。ドラゴン将軍の戦術はとても素晴らしい! 今後とも参考にさせて頂きます」
「ロイ将軍の案も敵を欺くにはもってこいですな。早速実施したいところです」
と、その時ーー
ブシャッブシャッ。
ボチャッボチャッ。
と、音を立てて空から大量の液体がテントを突き破り降ってきた。
敵魔導兵の猛毒の弾が降ってきたのだ。
「ロイ将軍! ど、毒ガスだ! 皆息を……グハ!」
「う、うぐぅ!」
「く、クソ! これは敵の罠だ。僕としたことが……ゴホゴホッ」
バタン……。ドラゴン達は倒れた。
辺り一帯は静まり返った。大勢の兵士が倒れたようだ。
その時だ。
「フッ。雑魚にも程があるな。敵将あろう者がこの程度の毒で倒れるとは」
「そうね。こんな技も読めない連中はマヌケにも程があるわ!」
「はははは!」
ロイ将軍達の前にマスクをして顔を隠した暗部が三人現れた。
「さて、いきなりお目当ての三人を仕留めたし死体をヤコフ将軍にプレゼントしようではないか! ヨイショっと! ……!?!?」
「なんだこれは。岩!? 鎧を着ているが人ではないぞ!」
「え!? 全員岩!? あれ? 穴だらけだったテントが元に戻ってる……。なぜだ!?」
暗部達は驚きを隠せない。先程までそこに居た人間が全員岩になっているのだ。暗部達は一部始終を見ていたのにも関わらず。
信じられないという表情で驚く暗部。
「これは一体どういうことだ!? 最初から岩が喋っていたってことなのか?」
「ピンポーン! 正解……。それ、僕の魔法なんだよね」
ジャックは冷静に答えた。
「そうね! こんな技も読めない連中はマヌケにも程があるわ! ガハハハ!」
「な!? あたしのセリフを!」
「全員捕らえろ!」
ロイ将軍が叫んだ。
次回。ドラゴン・ウォーリアー 其の弐。