第12話 死神再来。 強くなったシン。
新しい章が始まりました。これからシンはどう成長するか楽しみです。
親父は戦地へと旅立った。心配だが親父の強さならきっと敵を叩きのめして帰ってきてくれると信じている!
俺は親父と別れてからメイガスの街を散歩していた。親父からお小遣いを貰ったし街にどんなお店があるか見に行こうかな!
この姿じゃ、ちょっと厳しいな。
俺は路地裏に入った。
「身体強化・組織増幅!」……さて、ちょっとお店へ行ってみよう!
俺は武具屋で巨大化した身体のサイズに合う装備を幾つか買った。
軽装甲鎧と鋼合金籠手、戦闘用ズボンと戦闘用ブーツを買った。
武器はアザトースの記憶からある程度武器具現化出来るし、お守り程度のつもりで手頃なアイアンソードを1本買った。
さらに地図屋さんで世界地図を買ってきた。見たことも無い国や大陸名ばかりだ。
地図の素材である羊皮紙に魔法が掛けられているらしく、今自分が立っている場所やどの方向を向いているのかが赤い三角形で表記されていた。これは素晴らしい! あっちの世界でも欲しいくらいだ。
さて、ちょっとお店巡りも飽きたし、外へ出るか!
----魔法大国外壁魔法門----
外壁魔法門に到着した。外壁の高さは30mはあるだろうか? その外壁には巨大な門が見える。この門より外の世界は魔物が居ると親父は言っていた。門の前には門番兵が何名か立っている。
「外へ出たい。門を開けて欲しい。これは身分証だ」
俺は門番兵に身分証を渡した。
「はい。確かに受けとりました。照合致しますので暫くお待ちください」
「この方はドラゴン将軍の……!!! 貴方の国民区分は"大貴族"です。外へ出られるのは大変危険です。出られるのなら警護をお呼び致しますが!」
大貴族? よく分からんが一般人よりは上なのかな。親父の養子だからか?
「いや、一人で構わない。通してくれ。親父の許可はとってあるからさ!」
「ははッ! お怪我を為さらないよう、お気をつけて!!」
「これより魔法門を開門する。門兵4名。合図と共に詠唱開始!」
門番兵の魔法により巨大な魔法門が開かれる。
----外壁魔法門外----
門が閉ざされた。
うおーー! 初めて来る場所はやっぱり新鮮だな! 国の外ってこんなに広かったのか! 気持ちーー。目の前には大草原に雄大な山々が連なっている。
「その前に……。身体強化・組織増幅!!」
(さて、ちょっと探険しに出掛けるか! トモ、日没まであとどのくらいかわかるか?)
《日射の位置からの計測なので精度は出ないがだいたい後3時間程で完全に日が沈みそうだ》
(わかった! それまでには魔法門へ戻ることにしよう)
暫く歩いていると、茂みから突然謎の生物が2体現れた。そいつらは人のような外見だが人にはない身体的特徴が有った。
1体は全身虎のような模様の体毛。そしてやや女性よりな顔をしている。もう1体は体毛は無いが、頭には角が生えていて肌の色がやや青い。
そしてそいつらは突然俺に話しかけてきた。
「俺はゴブリン族の堕落まどうしだ。おい、人間。ここへ何しに来た? この付近は俺とこのワータイガーちゃんの縄張りだ! 用が無いならさっさと立ち去れ! さもないとぶっ殺すぞ!」
「この子の言う通りよ。ぶっ殺すわよ!」
「俺はただ探検してるだけなんだが……。嫌だと言ったら?」
「ふん。説明が面倒だわ。ぶっ殺してやる!」
ちっ! 短気な虎女め! 痛い目にあわせてやる!
「…水魔法・氷!」
虎女は全身氷付けになった。これで少しは頭冷やせよ。
「わ、ワータイガーちゃん! お前許さんぞ。よくもワータイガーちゃんを!」
もう1体は堕落まどうしとか言ってたな。魔法使いか? 一応やっとくか。
「…静寂魔法!」
「げ。魔法を封じられた! ち、ちくしょーー!」
「その虎女を連れてとっとと消えてくれ。威力は抑えた。すぐ溶かせば虎女は助かるぞ?」
「ちくしょう! お、覚えてろーー!」
堕落まどうしは虎女を抱えて逃げていった。
……ふぅ。終わった。なんなんだあいつらは。だいたいモンスターって喋れるのか?
さらに暫く道なりに歩いていると突然目の前の地面が盛り上がり中から体長20m以上はあろう太くて巨大な蛇が現れた。これは完全にヤバそうな奴だ! とりあえず身を固めよう。
「身体強化・鋼!」
「ゴアァァァ! ハラペコダ、クッテヤル!」
蛇が喋った……。大蛇は一瞬で俺に巻き付いてきた。痛くはないが身体が動かせない。マジでやばいやつだ! こいつ動き早くね!?
そして大蛇は口を大きく開けて俺を喰いやがった。大蛇の食道に俺は居る。とてつもなく臭い。
「ふざけんな! ………重力崩壊!」
俺は大蛇の腹を突き破ってなんとか脱出した。マジでアブねぇ! さっきからよく敵に絡まれる。さっきの大蛇、普通の人間からすればかなり脅威だよなぁ。一瞬で喰われたし。
うーん。外の様子を見たいから散歩がてら出てみたけど、モンスターまみれでまともに行動出来ないな。だんだんと日が沈んできたし一旦戻るか。
「…………」
ん? 今後ろに何か居た気がするが気のせいか? 視界の隅に黒い影が見えたような。
俺は魔法門までだいたい3キロ程の所まで来ているはずだった。なのに、一向に魔法門が見えてこない。地図でも進行方向に間違いはない。
何か嫌な予感がする。念の為に強化魔法をかけておこう。
「…魔法防御!」
「…物理防御!」
「…付加属性・光!」
「身体強化・俊足!」
俺は魔法門がある方向に高速で移動する。既に時間は夕方だ。大分暗くなってきた。まずい。
だがあるものを見つけた俺はその場で凍り付いた。
先ほど戦闘した大蛇の死骸が目に入ったのだ。そんなバカな? 大蛇と戦った場所は遥か北のはず。俺は南の魔法門に向かって移動したんだぞ!
(トモ。この状況どう思う?)
《シンが移動した方向は南北のみ。道は間違っていない。となると何かが俺たちを惑わしているとしか思えないね》
(お前もやはりそう思うか)
その時だった。
[キィーーガガ……ガ、キィ……キィーー……]
くそ……! こんな時に。デスマーチだ……。
(うっ! 頭が…アタマが割れそう…に…痛い…)
《おい、シン! 何が有った? しっかりしろ!》
(わからん……。とにかくアタマが痛くて……割れそうなんだ……)
《シン、待ってろ! お前の脳にアクセスして助けてやる!》
《お前の脳からいま、痛覚を一時遮断した。大丈夫か?》
「ありがとな。助かったよ、さすがトモだ!身体強化・多視! さらに身体強化・暗視!」
俺は視野が大幅に広がり、さらに暗い中でもハッキリと見えるようになった。
「トモ、俺は正面を見張る! トモは俺の背面を見ててくれ」
《任せろ! 見えた物は直ぐに伝達させてもらう》
辺りはほぼ真っ暗闇だ。この状況はいつもと変わらないのだが、長い間街の生活に慣れたせいで俺はデスマーチの恐怖を忘れかけていた。
《シン! お前の背後だ。黒い空間の歪みが発生したぞ!》
と、その瞬間。
黒い衣を纏った3mほどの身体には大きな鎌、骨の顔面には赤い光を放つ眼。リッチが現れた。
「出やがったな! リッチ! お前は許さん。……聖葬円陣!」
死神の身体が光に包まれた。その光がさらに増してリッチを覆い尽くす。
だが……死神は全く効いていない。奴が消えないのだ。
「なぜだ!? あの時は確かに効いていたのに!」
「…………クックック。今ノ貴様二、私ヲ倒ス事ハ 不可能ダ。以前戦ッタ者ハ全テ、私ノ分身ニ過ギヌ。貴様ハ ドラゴント出会イ チカラヲ増シタ。直接見二来テヤッタノダ」
何だと!? 今までの奴はただの分身だったってのか? 親父の事も知ってるみたいだ。
「黙れよ! お前さえ居なければ俺の大切な人達を失わずに済んだんだ! 俺はお前を必ず殺す! ………神聖大魔法!」
死神の身体が光り、聖なる光の大爆発が起こった。……が、リッチは全く効かないどころか淡々と喋りかけてきた。
「天獄の道デ 貴様ヲ喰ッテヤロウトシタガ、ドラゴンガ邪魔ヲシタ。貴様ノ精神ハ崩壊シカケテイタガ、アザトースヲ奪エナカッタ。ドラゴンハ始末シナケレバ ナラナイ」
あの異空間の黒い空間の歪みは死神のものだったのか。あの時俺を喰おうとしたのか。それにアザトースを奪えなかったと言っていた。どういう事なんだ。
「親父に手を出すな! 親父は関係無いだろ。それに何故アザトースの事を知っている?」
「安心シロ。マダ時期ガ早イ。奴ハ チカラヲ付ケ過ギテイル。オマエハ アルセナデ私ノ宝、アザトースヲ盗ンダダロウ! アザトースヲ返セ。今後貴様ノ精神ハ ユックリト崩壊サセテヤル。フハハハハ! デハ、精々パーティーヲ 楽シムガヨイ。 悪魔召喚・死ノ宴……」
死神はそう言い残し黒い空間の歪みへ消えていった。
「待てよ! クソッ。なんて力だ。あいつあんなに強かったってのかよ?」
《おい。シン! 後ろだ!》
いつの間にか俺の背後にウェンディゴが大量に発生していた。さらに周囲にも大量のウェンディゴが発生している。
「邪魔だ…。お前らに用は無い! ……雷魔法・召雷連撃!」
周囲に居るウェンディゴに雷の雨が降りそそぐ。俺の周囲数百メートルのウェンディゴが文字通り全滅した。
だが、どこからともなく大量のウェンディゴが四方八方からこちらに向かってくる。戦況はまさに地獄絵図。
無限に沸き出るウェンディゴとの交戦は15時間にも及んだ。だがついに朝が来たのだ。
朝日が昇る。ウェンディゴの発生が止まり、辺りは静寂を取り戻した。
「はぁはぁはぁはぁ。終わったのか? トモ。急いでメイガスに……街に戻るぞ……。魔覇が底を付く……」
《よく生き抜いた! シン!直ぐに街へ行かなければ!》
今回は戦闘シーンが多目でした。僕は戦闘シーンを表現するのが苦手で苦労しました。
次回。ピノ達との出会い。