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俺は夢と異世界を行き来する  作者: 井ノ上
序章-30年後の俺は-
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第1話 死神さん

ある程度設定が定まっていますが、伝えたい事を文章にコンパクトに纏める難しさを痛感しました。

 「んん……ん? なんだ、あさ(現実)か。俺は死んだ……のか? クソッ!! なんでこんな事に……。俺のせいで……殺された……」


 ずいぶんと長く眠っていた気がする。だが朝が来る時間は毎日決まっている。時計を見ると朝の7時を回っていた。俺は出掛ける準備をして家を後にした。


 --------


 俺の名はシン。何処にでも居る工場作業員30歳だ。こんな俺だが神様のお陰か、家族を持てた。1つ下の妻と2歳の娘が居る。


 誰しも悩みの1つや2つくらいは有るものだ。勿論俺にも悩みがある。それは、夢。寝ている間に見る夢だ。

 それの何が問題なのかというと、俺が3歳になった時から死神が夢に現れるのだ。

 そいつは黒い衣を纏い、骨の身体、その身体よりも大きな鎌を持っている。

 そいつが死神なのかはわからない。昔やっていたゲームで出てくる死神がそいつにそっくりだったので勝手に命名した。

 そして夢の中で俺が死神に見つかってしまうと死神は必ず追いかけて来るのだ。俺が死ぬまで……。

 さらに大きな問題がある。それは、


 "死神に殺される瞬間に死神の顔面が俺の知っている人間の顔面に変化している"

 "もしそこで俺が殺された場合、死神の顔になっていた人物が近い内に必ず死ぬ" 

 ……ということだ。


 そして夢の中でその死神が活動する時間帯になると必ずある音が流れる。

 その音は極端に高音なバイオリンのような音とラジオノイズが混じった不規則なリズムと不協和音だ。

 精神的にかなり恐怖を感じる音だ。俺はその音の事を勝手にデスマーチと呼んでいる。なぜその音が鳴るのかはよくわかっていない。


 そしてつい先ほどまでデスマーチが続いていた。果てしなく長く終わりの無い夢だった。それに……まさかここに帰って来れるとは思わなかった。

 ここに居る俺は本当の俺なのか? ははは……俺は何を考えているんだ。もう……精神的にもう限界かもしれない。

  俺は周りや家族にこの悩みの事は一切言っていない。かつて生きていた一人を除いて。


 時は遡り1日前。


「マユ、シホ、俺は今日は先に寝ることにするよ。家事の手伝い出来なくてすまない、ちょっとストレスきつくてさ」

 マユが俺の妻、シホは2歳の娘だ。

「ストレスためてるのかな? 適度に息抜きしなよ、ストレスはためちゃダメ!」

「なんのストレスだろうな……。なあ、マユ。睡眠時間7時間でほぼ永久に夢の中で暮らせるとしたらどうする?」

「えっ? いきなりどうしたの?」


「あぁ、いや、何でもないよマユ。ちょっと眠くて寝ぼけてるだけだよ、おやすみなさい。今日はシホの寝かしつけを頼んだよ」

「はいはい! ……まああたしだったら暫く夢の中で遊んでるかも。でもね、きっと家族の顔が恋しくなって途中で帰ると思う!」


「はは、流石だな。お前らしいよ。それじゃあ今日はおやすみなさい」

 そんなことを言いながらその日は珍しくすぐに寝付けた。家族たちは知らないだろうな。これから俺は夢の中で果てしなく長い旅を始めるということを。

 俺の夢はかなり特殊で、体質的なものなのかわからないが、必ず前回見た夢の続きから始まるのだ。厳密には前回の夢の終わりから何分か経ったあとの夢の世界から始まるのだ。

 夢の世界から現実へ戻る方法は、今のところ"夢の世界で死ぬ事"だ。殺されなければ永遠と、夢の世界でさ迷うことになる。


 あぁ、もう眠くなってきた。おやすみなさい。


 ◇◇◇


 ……夢の世界が始まったようだ。


 空を見上げると薄暗いが美しい夕焼けにグラデーションがかかっている。綺麗だ。冷たい風が吹いていて身体が冷える。冬なのだろうか。

 さらに真上を見ると、遥か上空にかすかだが、黒い影が何体か見える。俺はすかさず隠密魔法を詠唱した。

「……消音隠密魔法(サイレントスニーク)!」

 俺は魔法で気配を消す。

 

 そうそう。上空に居るソレが死神だ。おもむろに数を数えてみた。 6、7、8……10体か。前回に比べて大分少ない。あいつらは突然現れては群れで襲ってくる。

 もう既に帰りたい。でも殺されたくはない。

 ちなみに前回の夢は夕方に早めのデスマーチが始まり、大群で襲って来やがった。俺はその時に100体くらいに囲まれて殺されてしまったんだ・・。


 どうみても無理だ。範囲攻撃魔法で一掃とかってレベルじゃない。100対1だ。

 とんでもない例えだが想像して欲しい。100匹のネズミが入ったカゴの中心にチーズを置いたようなものだ。

 勿論チーズは俺だ。俺は一瞬で喰われてネズミ達の小さなフンになってしまうだろう。


 しかも倒しても倒してもどこからともなく補充してきやがる。まるで死んだらお仕舞いのスコアアタックゲームのように。

 俺は一応魔法を使える。もちろんこの世界限定だけど。でも魔法が使えるからと言って100対1では死ぬしかない。俺は餌でしかないのだ・・。


 前回のデスマーチで俺は死神から大鎌の一撃を喰らって死亡した。

 死神の顔面は俺の親友トモの顔になってやがったんだ・・。

 つまり、トモは現実世界で死ぬ。という事になる……。考えるのを止めよう。というか考えたくない……。


 そろそろ暗くなるからここから移動しなきゃ。

 死神は暗くなりだすと地上に姿を現し、完全に真っ暗になると隠密魔法すら効かない個体が出てくる。そしてデスマーチが始まり、人を狩り始める。この世界で人間を見たことないけどさ・・・。


 ちなみにこの世界ではモンスターと呼ばれる生物が多数存在している。狼やら蛇やら色々居る。そして夜になると不死生物(アンデッド)達が出現する。

 死神は恐らくアンデッドの部類だろう。だって骨だし・・。


 あっち(現実)の世界では1日24時間と決まっている。

 ここの世界でも1日24時間なのは同じだ。


 だか昼が8時間と少ない。残りの16時間は夜になる。それに太陽がひときわ眩しい。つまりデスマーチが始まったら16時間近くも戦わなければならない事を意味する。誰だよ、昼8時間に設定した奴は・・・。


 そして今俺が立っている場所は小学校のグランドの真ん中。前回の夢にこんな場所有ったっけ? よく覚えてないや。最近の夢は懐かしく思える場所ばかり出てくるんだよな、でも相変わらず死神さん達にフルボッコにされるんだけどね・・・。


 あぁ。早く移動しないとな。日が沈む。

 俺が上に居る死神たちを視認出来るということは上空で飛び回っている死神たちにいつ見つかってもおかしく無い。

 もうそろそろだ。デスマーチが鳴り響くだろう。まずあの建物へ避難しよう。


 俺はグランドから校舎の方へ歩く。そして長い長い魔法世界の夢(たび)が始まる。

 まだまだ不慣れでございます。


次回。デスマーチ。

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