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毎日毎日楽しそう

 鬱蒼とした森の中を緑の風が吹き抜ける。

 空を見上げれば眩いばかりのお日様が私の存在を祝福していた。

 可愛らしい囀りは小鳥たちの愛の歌。

 踏みしだく枯葉は湿り気を帯びてくしゃくしゃと潰れてしまう。

 川のせせらぎの合間を跳ねる小魚の群れ。

 嗚呼、今日はなんて素晴らしいハンティング日和。

 さぁ、弱ったカトブレパスの息の根を止めに行きましょうかっ!


「素敵な景色が台無しですね」


「まぁそういうな。詩織がやる気を出してるんだらか」


「そうですよ。モンスターをお手軽に倒せるうえ、剥ぎ取ったアイテムを換金すればお金になるんですから。気合い入れていきましょうっ!」


「弱者の戦略っていうか、ただの卑怯者の思考では?」


「まぁそういうな。国としても有用なアイテムの採取は歓迎してる。なにより詩織の借金の返済」


「借金……まさか後輩が借金まみれになる日がくるとは」


 お金の話しはダーティなのでやめて欲しいですね。

 まったく、ツケの肩代わりをしてくれている暁さんはともかく、男性である……いやすでにスケルトンだから元男性というべきか、には触れて欲しくないところです。女の子はデリケートなんですから。

 ぶんぷんっ!


 密かにつけておいた目印を辿って目的地へ到着。

 そこには今にも生き絶えそうな痩せ細ったカトブレパスの姿がある。意気軒昂な個体とはまるで違う。今にも命の火が消えそうな、そんな哀愁を誘う雰囲気を感じた。


 よし、さっそく殺すか。

 踏み出して一歩、肩を掴まれて止められた。

 暁さんだ。なにゆえに止めるのか。このままでは、下手をしたら同業者に見つかって取り合いの喧嘩になるかもしれない。善は急げ。間髪入れずに行動すべし。


「善は急げって、全然良くないから。あと数分もすれば自然死する。だからもう少し待ってやれ」


「なんでですか。もし同業者と鉢合わせたらどうするんですか。そもそもどうしてすぐに息を引き取るって分かるんですか」


「大丈夫だ。この辺りに人の気配はない。あそこまで弱っている個体なら、寿命はあたしの魔眼で見極められる。だからもう少し待ってやれ。死に目に苦しい思いをさせる必要はないだろ。これも命を尊ぶということだ」


 ぐぬぬ……昨日、暁さんと約束した手前、手を振り払って突進というわけにもいかない。それに私だってそこまで外道ではない。苦しまずに自然に息を引き取るならそれが1番いいと思う。

 それに自らの手で命を奪うという行為は気持ちのいいものではない。なのでここは我慢の子。しばらく待つとしましょうか。


 小一時間ほどしてようやく御臨終。

 それではさっそく、の前に手を合わせて南無阿弥陀仏。どうか天国へ馳せ参じて下さいませ。


 それでは内臓を傷つけないように皮だけ剥いでいきましょう。それから立派な頭部の角。蹄も四つ。いったいいくらになるだろう。想像しただけでわくわくです。


「それじゃあ暁さん、よろしくお願いします」


「いや、何を言ってるんだ。お前がやるんだよ」


「…………いやいや、素人がどうのこうのできるやつじゃないですよね。ここはまずはプロにお手本を見せてもらわないと」


「そうか、じゃあ取り分はあたしがあたしが4、タカピコが4、詩織が2な」


「わ、わかりましたっ! 私がやります。でも……その、ご教授頂いてもよろしいですか?」


 やれやれと肩を落として二人羽織。

 よし、準備も整ったところで解体作業に勤しむとしますか。まずは暁さんの指導でタカピコ先輩に毒を溜め込んでいる臓器の部分を切除してもらう。暁さんの魔眼であれば魔力の流れを辿って臓器の位置もまるっと見え見え。

 加えて牛の屠殺の経験もあるのでだいたいの部位の位置を把握している。未知の生物にたいしてもこれまでの経験が生きるのかどうかは分からないけど、何も知らない素人が手をつけるよりはいいだろう。


 ざっくりサクサクすっぱんぱん。

 あまりリアルな描写をすると、うげ〜ってなるので割愛します。なにより私が。とりま頭部を切り離し、皮を剥いで蹄を切断。生々しい肉の塊の出来上がり。できることなら食用にしたいものだが、毒もあるし、自然死だからやせ細っているし、どっちにしても不味そうなのでやめておきましょう。

 剥ぎ取りに成功したパーツだけで勘弁してあげましょう。


 終わってみればあっという間だけど、カトブレパスが巨大なうえに便利な重機なんて物もないからひと苦労。もう日が傾き始めているではありませんか。

 証拠隠滅をしていたら日が暮れそう。仕方ないので日を改めませんか?


「穴を掘って入れるだけだろ。それから毒素が大地を侵食しないように毒を分解するっていうキノコも撒いておかないとな。全部終わるまでは帰さん」


「ぐっ……そんなに睨まなくたっていいじゃないですか。やりますよ。ちゃんと最後までやりますから。とりあえず、キノコは先輩にお願いします。毒なので。私は掘った穴にカトブレパスの死骸を放り込みますんで」


()()だ。命を尊べ」


 もぉ〜〜細かいんだから。という顔をするとまた睨まれた。やれやれ本当に仕方ないですね。まぁこんな私でもパワードの魔法は使えるので、脚を掴んで引きずることくらいはできる。

 現時点でまともに使える魔法の1つ。超初歩の初歩のとはいえ使えないよりはマシなレベルの魔法。はぁ〜〜〜異世界転生したっていうのに、なんでこんなに地味なんだろう。前の生活よりは遥かにマシだけども、それにしたってあんまりじゃないですか。もっと無双したい。ちやほやされたい。楽をして生きたい。


 心の中で愚痴をぼやき、無意識に口から愚痴をこぼし、えっちらおっちらと死体をしょぶ…………埋葬。両の手を合わせて南無阿弥陀仏。これで満足でしょう。貴方の命は終わったけれど、貴方の生きた証は私がきっちりと使ってあげますので感謝して下さいね♪


「う〜ん、剥ぎ取りほやほやだからか少し毳毳しいですね。加工したら滑らかふわふわになるんでしょうか?」


「丁寧になめしてやればそうなるだろう。まぁ皮の性質次第だけど。基本的な工程はイノシシやシカと変わるまい。あとは腕のいい職人に任せればいい」


「任せるって……お金がかかりますよね?」


「当たり前だろ」


「自分でできるものですか。なめし加工って」


「材料と方法を知っていればな」


 自分で加工するのが1番お安くすむ。しかし、そのための材料も方法も知らない。となると職人に教えを乞う必要がある。そのためにはお金が必要になる。

 ぐぬぬっ!

 なんにしてもお金が絡むのか。

 この世はなんて世知辛いのだっ!


 そうだ。角と蹄を売れば多少なりともお金が手に入るではないか。これだけたいへんな思いをして手に入れたのだ。さぞ高値で売れるに違いない。

 さっそく鑑定に持っていくも売却額の安さに驚愕。メロン大の角が2つで2000シエル。蹄四つで3200シエル。併せて5200シエル。やっす!


「ええと……利用目的の決まっていないアイテムですので、最初はこのくらいの価格となります。ただ、初めて取り扱う商材ですので、今後、今回以上の値段で取引されることになれば、差額分の金銭のお支払いをする決まりになっております」


「ご、後日ではなくて、今すぐにお金が入り用なのですが……」


「申し訳ございません。規則ですので」


 取り付く島もないとはこのことか。張り付いた笑顔で私の願いを突っぱねてくる。くぅ〜〜もうこうなったら仕方がない。とりあえず角と蹄は今後、価格が上昇することに期待しましょう。

 大本命は毛皮。これだけ立派な毛皮であれば、さぞ高値で売れるに違いない。ひとまず見積もりだけでも出していただこうではありませんか。


 結果、加工処理の施されていない状況では3万シエルでの買取り。その後、専門業者と相談のうえ、価格設定がなされるとのこと。ぐぬぅ!

 あれだけの重労働にて3万と5200シエルですか。

 ちょっと割に合わない気がしてきた。


「受付嬢も言ってるけど、取り扱いをしていない物品の価格は後日確定される。それに、カトブレパスの素材がどんなものなのか、どんな性質があるのか。具体的に調べないと適正価格が見出せない。まずは解析して、工芸品や衣類にできるかどうかを職人に尋ねないとな」


「それだとカトブレパスから素材が剥げるってバレちゃうじゃないですか。私は隠しておきたいんです。市場を独占するためにっ!」


「安心しろ。出所は秘匿してもらえるから。ちなみに、受け取った3万5200シエルなんだが、仮に売却物が受け取った価格以下だったとしても金銭の返却は起きない。決定後の価格が安かったら残念だが、今回受け取った金額以下にはならない。冒険者にとって限りなく優しいシステムにしてある」


 当たり前ですよ!

 売却額が安かったから渡したお金を返せって言われるなんてふざけてるでしょ。言われても返したりしませんけどね。


 ぶーたれながらもとりあえず、お金は手に入るので受け取っておきます。仲介業者を介すると仲介料金をとられるから、自分で専門業者に持って行こうかとも思った。けど、それだと出所を聞かれるに違いない。ただでさえ信頼がないのだ。むしろ怪しまれる。

 人脈もないし。ここは暁さんの口車に乗っておくが得策か。


 さて、受け取った金額は全部で5200シエル。3万シエルはどこにいったって?

 それは手元に残してあります。自分でなめしてまずは自分で使うのです。巨大なもふもふの毛皮。カーペットにしてよし。裁断して裁縫して毛皮のコートにしてよし。いっぱい集めて毛皮だけでソファにしてみたい。お金も欲しいけど、リッチでセレブな気分を味わってみたい。

 せっかく異世界転生したのだから、めいいっぱい楽しまなければ!


「それはいいが、加工はできないだろう。どうするんだ?」


「神様仏様暁様、どうかわたくしめに職人さんを紹介してくださいっ!」


「…………まぁ、冒険者の副業支援もギルドマスターの仕事のひとつではあるからな」


 さっすが暁さん。頼りになるったらないですね!

 それでは善は急げということで、さっそくなめし職人さんを紹介していただくこととあいなりました。

 やったね♪




 子供のようにきゃっきゃと騒ぎながら、理想の未来を思い描いて小躍りしている少女には悪いが、なめし加工ってそんなに楽なもんじゃないからな。

 手間も時間もかかるし、専門的な薬剤も使うから薬品関係の知識も身につけなきゃならんし。かなりたいへんなんだぞ?

 でもまぁ努力が大嫌いだった彼女がやる気を出してくれている。少しは成長したのかもしれません。

 概ね、リンさんの作った謙虚薬なる劇物のせいだろうけど。


 それにしても奇妙だ。感情の起伏が激しすぎる。いや、感情の起伏というか、毎日別人のように態度が違う。昨日と今日の性格の傾向もズレている気がする。

 気持ち悪いくらいに謙虚になったり、相変わらず傲慢だったり。今日の詩織はやんちゃで感情に流されながらも、あたしの言うことは素直に聞き入れていた。あまりにも精神が不安定すぎる。


「と、いうわけで事情を聞いてもいいですか?」


「やだもぅ。気付いていたなら声を掛けてくれればいいのに」


「隠れて後をつけてるんだから、こっちから声を掛けないでしょう。そんなことより、アレはいったいどういうことですか?」


「う〜ん……まだ観察途中だから分からないけど、もしかしたら薬に対して抵抗力ができてしまったのかも。あるいは服用する錠剤の量が毎回違うとか? 用量用法は守るように釘を刺しておいたはずだけど」


「…………ちょっと待って下さい。それじゃあもしかして、詩織自身が謙虚薬を飲んでるってことですか?」


「そうよ? 知らなかったの?」


 はああぁぁぁぁッ!?

 自分で自分の精神を変質させるような異物を摂取するなんて信じられん。本人は精神安定剤感覚で飲んでいるようだが、デメリットが判然としない状況で服用するのはどうかと思う。というか、絶対にヤバいでしょ。

 動物実験を経ての投入ですよね、と質問したところ、現在進行形で動物実験中。いやいやいやいや、ダメですってそれ!

 倫理観ゼロかッ!


 古来より薬学は実際に飲んで試して検証されてきた歴史がある。だから彼女としては違和感のない行動なのだ。世代なのか、ヘラさんの住む先進的な異世界の常識が頭にはびこっているからか、どうもリンさんの行動に納得がいかない。許容できない。

 彼女は、本人が効果効能を理解したうえで服用している。お互いの利害が一致しているならオールOKというスタンス。


 …………ん?

 利害の一致?


 リンさんは投薬実験を行い、その経過観察をする。

 では詩織は?

 服毒による精神の安定を得ることか。

 薬物を無料で提供してもらうとか。

 なんにせよ、実験に協力する代わりに報酬を受け取っていることは間違いないようだ。呆れてものが言えねぇ。


「報酬は暁ちゃんの想像通り、お薬の無料提供と報酬金の支払いよ。それと、服毒って言い方は酷いんじゃない? 彼女だって自分と、少なくとも暁ちゃんやギルドのみんなのために頑張ろうとしているみたいだし。もう少し寛容になってあげてもいいんじゃないかなぁ〜♪」


「寛容になって欲しいと思っているのはリンさん自身のことですよね」


 小躍りをして誤魔化そうとするリンさん。

 毎日毎日、楽しそうで何よりですわ……。


 やれやれ。しかし冷静に振り返ってみれば、投薬治療と言えなくもない。途中経過ではあるが働いて稼ぎを出そうとしていた。まだ自分のためにしか行動していないけれども、それができるようになれば、いつか誰かの為に行動することの楽しさを知ることもあるだろう。

 大切なのは経験だ。成功体験を繰り返すことができれば自分に自信を持つことができる。自己肯定感も高まり、プラス思考になる癖がつくだろう。


 詩織自身のスペックは高いほうなのだから、努力次第でどこまでも成長できる。努力か……。今日のようなテンションが続いてくれればいいのだが。

 ま、それを促すのがあたしの仕事ではある。


 やれやれ、とため息をもう一つ。こちらは詩織に向けたものではない。明後日に開かれる街道整備の出資会議。聖アルスノートとメリアローザの間に3つの宿泊街を建設する。

 各々の最も近い設備に関しては自国で建設するということで問題なくまとまった。あとは中間。中心に作る街の資材と金の出どころ。その量。人材をどれだけ投入するか。

 そして、その街での売上は出資した額と物量の多さで決まると言っても過言ではない。お互いにおおよそ半々での決着が妥当。通常であればため息の出る案件ではない。


 ならばなぜ肩を落として天を仰ぐのか。

 聖アルスノート王国代表の商人が曲者だからだ。どういう方法かで相手に不利益を要求する。それも相手に気づかれることなく。契約書になにかしらの細工がしてあるらしいことは掴んだが、委細までは知り得ていない。リリス姫も探りを入れているが確たる証拠は掴めていなかった。

 魔法的なものでもないらしい。看破の魔法を使っても見破れない仕掛け。いったいどんな手を使ってくるのやら。


 対策としては会議室の階下にリンさんを配置。結界術による対魔法防御対策を講じる。嘘発見人間のセチアと詩織を侍らせて相手の出方を伺う。

 ただし、セチアの場合は魔法的なジャミングを突破できない。そのジャミングを無効化するためにリンさんを頼っている。が、エヴァング商人がその上を行かないとも限らない。鞄持ちとして同行している息子のほうにも目を光らせておかなくては。

 万全を期して臨もう。私と私の愛するメリアローザの人々と未来のため。メリアローザと聖アルスノートのより良い未来を願って。


 資料の確認。

 明日の予行演習の準備。

 本番の段取りの確認。

 聖アルスノートとの道程を安全にするための一大事業。これを成すことができれば商業はさらに活性化する。それだけではない。街道の延長線上に東北への活路が見出せる。

 山林や山脈。様々な自然的、あるいは過去の因縁的な要因で交流の少ない東の地。これに販路を広げられたのだとすれば、我々の住む世界にとってプラスになることは間違いない。


 商いが活発になれば仕事が増える。雇用が増えるということは餓える可能性を低くすることができる。衣食住を整えればそれだけで心に余裕が生まれる。その余裕はいずれ幸福という形となって人々を満たすことだろう。

 商人を襲う山賊などの輩も生まれなくなるかもしれない。

 孤児も今より減るだろう。

 厳しい冬において餓死者が出なくなるかも。


 未来のために一歩一歩。今日より明日がよくなりますように。


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       ♨️日輪館・露天風呂♨️


暁「うあ〜〜〜〜。たまらんですな〜〜〜〜。疲れたあとの温泉は格別ですな〜〜〜〜♪」


紫「暁さんも肩が凝ってますね〜。いつにも増して忙しくしてるみたいですけど、件の街道建設ですか〜?」


暁「1番はそれかな。2番は詩織。それから街道建設をして、宿泊施設が安定したら移住者を募って農業の開始。西の土地から流れてくるらしい浮浪者や行き場のない人たちを雇って仕事を与えたい。仕事を増やして野盗になる前に雇用するのがベスト。そうすれば街道の治安も安定するはず。伝統的な農業や狩猟に加えて、異世界にいるヘラさんから教えてもらった方法で()()()()()()()()()()。エルドラドで実証実験してるやつを転用すればいけるはず。あとは路面電車を通したいなぁ〜、って思ってる。少し先だが、すみれたちが七夕祭りに合わせて旅行に来るからそれの準備もしとかなきゃな。アナスタシアのために刀を打つからそれの段取り。魔剣の共同研究の足掛かりのための打ち合わせと情報共有。ブルーハーブの使用・栽培条件の整備。マジックアイテムのほうは……アルマに任せればいいか。銀行に行ってクレジットカードの手続きもしとかなきゃな。ダンジョンにも興味ありげだったからそっちの方もカバーしとくか。七夕祭りにはクレアたちも来る。お土産をいっぱい持たせてあげたいなぁ〜〜〜〜」


紫「お、思っていたよりずっと多忙なんですね」


あざみ「本当に右に左にお忙しいようで。はい、温泉卵です。お酒もいかがですか?」


暁「おぉっ、ありがとう。酒はお猪口一杯にしとくよ」


紫「あたいも!」


あざみ「紫にお酒なんて早いですよ。温泉卵で我慢なさい」


紫「ちぇ〜〜。ところで暁さん。山で海の魚を育てるってどういうことですか? 山に海でも作るんですか?」


暁「それが驚くことに、山に海と似た環境を人工的に作って鯛とかフグを養殖する技術があるらしい。言われるがまま作って、今は稚魚がいるだけだが、きちんと生きて大きくなりつつある」


あざみ「人工的に海を作る…………とても信じられないことです。異世界の技術はとてつもないのですね」


暁「いやぁ〜フラワーフェスティバルに行ってみたけど、どれもこれも想像を超えすぎていて目を白黒させてしまったよ。勝手に動き出す鉄の箱。超巨大な図書館。夜は昼みたいに明るかった。そしてご飯がどこも美味しかった。世界中の料理がひしめいていて楽しかったなぁ」


紫「グレンツェンってところですよね。アルマが留学してるっていう。いいな〜。あたいも行ってみたいな〜。連れてってほしいな〜♪」


あざみ「媚びが露骨すぎますよ。ところで、お土産にいただいたチョコレートケーキなのですが、あれ以外にもチョコレートを使ったケーキはあるのですか?」


紫「姉ちゃんだって媚びてんじゃんっ!」


暁「まぁまぁ、落ち着いて。連れてってやりたいのはやまやまなんだが、あたしはメリアローザのことが手一杯でどうにもならん。アルマがちょいちょい帰ってくるから、その時に頼んでみてくれ。チョコレートを使ったケーキもそうだが、チョコを使ったお菓子はいっぱいあったよ。とりあえず、レレッチに教えてもらった方法でカカオ豆を育ててる。今、芽を出したところだから、順調に育てばメリアローザでもカカオが栽培できる。お菓子に使うほどの量になるにはまだ先だけど」


紫「よっしゃ! 絶対にアルマを口説いてみせるぜっ!」


あざみ「まぁっ! 以前は育たないということで断念したのに。異世界の技術、本当にものすごいですね! どうやって芽を出したのですか?」


暁「それが……種を一度冷凍することで、種が寒さに強くなる、ということなんだ。正直信じられなかったが、本当に芽が出た。一応、温度を保つためにハウス栽培にしているが、あとは実が成るのを祈るばかりだ」


あざみ「それは本当に楽しみですね。チョコレートは貴重な嗜好品ですから」


紫「凍らせると実がなる……姉ちゃんは氷のように厳格なのに全然実が結ばない……」


あざみ「ーーーーーー紫、あとで私の部屋に来なさい」

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