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 ……でも、なぜだかこのとき、鞠はすごく(自分でも驚くくらいの)大きなショックを受けた。

 それはまるで、今の今まで、自分の中に溜まっていた偽りや、嘘が、おんぼろのダムが大雨によって決壊するときのように、一気に川下に向かって吹き出してしまったかのような、そんな強い、そして抑えることのできない、ショックだった。

 そのせいで、鞠は気がついてしまった。

 自分の本当の、本当の気持ちに。

 ……そうか。と、鞠は思った。……『私はずっと無理をしていた』のだ。

 私は今も、昔も、ずっとずっと、あの、優しくて、笑顔の素敵な大橋綾くんのことが大好きなのだ。

 気がつくと、鞠はぽろぽろと涙を流しながら、土手の上で泣いていた。

 鞠は土手の上に立ち止まって、しばらくの間、その場から動くことができなくなった。その間、鞠はずっと泣いていた。

 もう涙を隠すことも、なにも、することができなかった。

「……先輩? 突然、どうかしたんですか?」

 鞠と同じように立ち止まった透が、泣いている鞠に心配そうな顔をして、そう言った。

 鞠は無言で、首を横に振った。

 それは、なんでもない、という意味のメッセージが込められた動きだった。

「……先輩」

 透が言う。

 ……それから少しして、きょろきょろと周囲の様子を伺っていた透は、土手の反対側を歩いている、小舟南と大橋綾の二人の自分の先輩である三津坂西中学校の生徒の姿を見つけた。……そして、なぜか透は、その二人の生徒の姿を見て、『鞠が土手の道の上で一人、立ち止まって泣いている理由』に、きちんと気がついたようだった。

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