観察日記13
朝、そわそわしながら家を出たお兄ちゃんの後ろを、私はこっそり尾行し始めた。
伊達眼鏡とかつらを被って大分印象が変わったおかげか、バレることなく、待ち合わせの場所までついて行くことができた。
そのまま茂みに隠れてじっと待っていると、一人の女性がやってきた。その人は、とても綺麗な人だった。正直な話、どうしてこんな綺麗な人がお兄ちゃんみたいな人を好きになるんだろうと疑問に思ったほどだ(お兄ちゃんには悪いけれど)。
お兄ちゃんの呼び方から、名前は「あくねさん」ということが判明。なお、漢字は分からない。
その場で少し話をしてから、お兄ちゃんと阿久根さんは移動を始めた。私もこっそり後を追った。
最初に訪れたのは映画館だった。お昼は後に食べるらしい。映画はお兄ちゃんが選んだ。怪物に寄生された男の人の話だった。もっと他にあるんじゃないのかと思ったけれど、あくねさんも好きなジャンルらしい。意外だ。静かに見ている二人の後ろで、私も映画を楽しんだ。
映画を見終わったお兄ちゃんたちは、遅めのお昼を食べながら、映画の内容について話をしていた。会話も結構弾んでいたみたいで、中々良い感じだった。
ご飯の後は本屋巡りになった。二人とも読書は好きみたいで、お気に入りの作家さんの本について話しながら、楽しく本屋をまわっていた。
夕方ごろになると、二人は最初の待ち合わせの場所に戻ってきた。別れ際、あくねさんがお兄ちゃんの耳元で何かをささやいた。内容は分からない。あくねさんのいきなりの奇行に面食らってしまって、聞き逃してしまったからだ。お兄ちゃんも何か言っていた気がするけれど、よく聞こえなかった。
二人が別れた後、お兄ちゃんが見えなくなったところで、あくねさんが私の元へとやって来た。これには驚いた。だって、ちゃんと見つからないように隠れていたんだもの。
びっくりしている私に対して、あくねさんはこう言った。
『私、お兄さんの邪神の力に興味があるの』
思考停止した私をよそに、あくねさんは言うだけ言って帰ってしまった。
家に帰ってからお兄ちゃんに今日の感想を聞くと、衝撃の回答が返ってきた。
『正式に付き合うことになった』
まぁ、お試しみたいな感じなんだろう。話も合うみたいだったし。付き合うことに関しては本人たちの問題だから、とやかくは言えない。
言えないんだけれど……あくねさんって、いったい何者……?
(・ω・)<私、お兄さんの邪神の力に興味があるの Σ(゜Д゜ 妹)
(妹; ´Д`) 正式に付き合うことになった>(*´▽`* 兄)




