表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の成りそこない  作者: 味醂味林檎
ベエル暦一七一六年 夏の終わり、そして秋
6/53

第九月三週目第二曜日

 キャンディが何の気まぐれか、私を財団の職員として正式に雇うと言い出した。

 従わなければならない理由はないが、私の現状を鑑みるに、これを断るのは今後あまりよろしくない状況を作り出しそうだ。腕が癒えたとはいえ、私は既にあらゆるものを失った身である。

 何もやることがないのなら潔く死んでしまっても構わないのだが、どうにも自分はまだ死ぬ気がない。何故生きようと思うのか自分でもわからないが、いつか死ぬその時は、弟の目の届く場所でなければならぬと思っている。自分のことながら、思考が論理的でない。まだ感情面に揺らぎがあるのは、自分が弟に負けたことを割り切れていないという証明に違いなかった。

 キャンディの使用人が持ってきた書類によれば、今後私の身柄は財団の預かりとして公式に扱われ、新たな戸籍が用意されるという話だ。アールヴはアールヴでも、最早かつての魔界貴族ロサフォルティとしての私は、一切失われる。もう、失っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ