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黒ウサギ、魔力について触れる

ブックマーク500越えました。

感想も書いてくださり、ありがとうございます。とても嬉しいです!感想を書いてくださる分、いつも以上に頑張ります。

 そもそも魔力とは何か。

 この世界では誰もが多かれ、少なかれ差はあれど魔力を保持している。


 動物界では、基本魔力を持たぬ生き物が多いが、稀に持つ生き物も存在している。

・魔に浸食され、理性を持たぬ生き物〈魔物〉

・理性があり、人間と同等の能力を持つ〈魔獣〉

・何らかの特殊能力を持ち、人間よりも優れた能力を持つ〈聖獣〉

・この世に存在しているか知られぬ、神の力に近い能力を持つ〈幻獣〉


 大きく分けて、四種類存在する。

 そして、魔力は自然の力……地、水、火、光、闇、無属性に分類されている。それぞれ生き物は持っている属性が一つか二つが一般的であり、市民に多い。貴族階級の方々は二つから三つ。王族も属性を持つ数は貴族と同じだが、代々、光を受け継いでいる。

 現王、ナシュタル・ランスラーは漏れなく光を受け継いでおり、他に地、を持つ。

第一王太子、ヴィリンジ・ランスラーは光、火、地を。

第二王太子、クリストファー・ランスラーは光、水を。

今は亡き王妃、ミルネリア・ランスラーは光、水、地を持っていたとのこと。


 そして闇は非常に少ない。人間界では稀にいるが、片手で数える程度しかいないと言う。動物界では、魔物に多く存在している。聖獣も人間同様稀にいる。幻獣は未知なことが多いが、持っている物もいたと歴史では記されている。さらに属性を四つ以上持つと言う。

 また、それぞれの属性の特徴を大雑把に挙げると、地は防御力が高い。水は全体攻撃に優れている。火は攻撃力が高い。光は回復系が優れている。闇は攻撃力は高いが耐久力はない。無属性は特殊魔法……転移や別次元を一部に作ること等に分類される。



「……て、言うのが魔力の基本だが、分かったか?」


 うむ、団長の教え方が分かりやすかったので、ある程度は理解できた。できたが、ツッコミどころが多すぎる。え、王っているの? 見たことないぞ? 王妃様、つまりは殿下のお母様は他界されていたのですね。ご愁傷様です。なぜか私が言うと軽くなってしまうが、申し訳ない。……他にも気になることはたくさん出てきたが、ウサギなので喋れない。くぅ、私に翻訳の人を付けてくだされ! ……あ、ウサギ語分かる人なんていないわ。だって、ウサギ、声、出ないじゃん。

 どうにか伝えたいが、喋れないなら今度、書斎に行こう! そうじゃん! そうすればもっと、話がスムーズに理解できるじゃないか! ……あ、でも、書斎行きたい旨をどう伝えれば?


 再び、頭を抱えたい衝動に駆られるウサギ。

 珍しく頭を使ったので諦めて、殿下の膝の上でべちょっ、と、潰れるウサギ。それを見て、全力でまた発症した持病(?)を押さえ込む殿下。ふむ、何も変わらないわ。


 あれから私は、殿下に抱えられて団長に付いてきた。そして、今は団長室のソファに殿下が腰を下ろし、その膝の上に私が居る状態で、魔力について話を聞いた。

 だが、殿下の膝は鍛えている者の感触であり、筋肉がある。つまりは硬いのだ。居心地が悪い。さっきからどこか良い角度がないか、ちまちま動いている。あぅ、筋肉だらけで硬いよー。


「そのチビクロ、居心地悪そうにしているが……ヴィリー殿、ソファに降ろしてやらぬのか?」

「降ろすつもりはない。俺以外の所でくつろぐなど許さぬ」

「心が狭いのぉ。心が狭い男は嫌われますぞ?」

「嫌われっ……?! クロ! 俺を嫌うか?! 俺から離れるな!」


 もう、命令口調なのですね? 決定なのね? 私に拒否権はないのですか。そうですか。

 段々、殿下を扱うのが面倒くさくなった黒ウサギでした。


 団長さんは「相変わらずだな、坊ちゃんは」と呟き、溜め息を吐いていた。お? 団長さんは殿下と長い付き合いなのですか? 殿下のことを坊ちゃんとか……。そういえば、殿下を前にしても、堅苦しい口調ではなく、軽い口調で話しかけている。ヴィリンジ殿下を愛称でヴィリーと呼んでいるし。もしかして、年も五十代くらいだし、殿下の剣の稽古でも見ていたのかしら?

 そう、思い首を傾げる。


「……ふむ、言葉が聞こえないのは不便じゃの。こちらの声は理解しているが」

「! クロは俺の話が分かっていたのか……?」

「そうじゃよ。我々がこうして会話をしているように、このチビクロも理解しておる。何せこの子は魔力が多いからのぉ」


 え? 魔力が多いから、私は彼らの言葉を理解しているの?


「それは、魔力が多いから理解しているってことか? なら、クロは魔獣なのか? 理性はあるし……」


 殿下も同じく思ったのか、そう団長に質問する。しかし、団長はその言葉を聞くと目が点なり、殿下を凝視。


「……まさか、何も知らずに連れてきたのか?」

「? どういう意味だ?」

「そのチビクロ、聖獣じゃぞ? しかも、幻獣に近いほうの。分かってて保護していたのではなかったのか?」


 は?


「聖獣……? 噂ではなく、本物の?」

「そうだ。こやつはまだ、儂でも全部分かるわけではないが……属性は少なくとも四つ。闇、光、水、地を持っているだろう。魔力量も下手したら、国一つ滅ぼすぐらいの量を持っていると思われる」


 な、何だが面倒くさい流れになってきたぞ。え? 私が聖獣? は? 属性は四つ? で、国を滅ぼすぐらいの魔力量を持っていると……やっぱり混乱。ちょっと現実逃避を…。


「チビクロ、現実逃避するでない」


 ひぃ! なんで、分かったのぉおおぉお?! 私がまさしく、今、現実逃避しようとしたこと!

 団長さんはまたも溜め息をつくと、飼い主に似てしまったのかのぉ。と、こぼす。

 いやいやいや。違う。私がこの残念な変態筋肉に似てきたって? ぜっーーーたい違う!

 その思いを、全力で殿下の膝をダンッ、ダンッ! と叩くことで表現する。

 すると、殿下は静かに私を床に降ろした。私はそれでも続けて、今度は床ダンッ! を繰り広げる。あれ? 殿下はなぜ降ろしたのか?気になり、チラッと殿下を見ると、自分の膝を……正しくは私が叩いたところを押さえてうずくまっていた。

 あれ?そんなにダメージ受けた? 痣ができていたらごめんね!


「そう、怒るな。床に穴開くどころか部屋が壊れてしまう」


誰が怒らせたんじゃぁああぁ! しかも、部屋が崩壊するなんて表現が大げさすぎない? 私はか弱いウサギなのよ-?!


「チビクロ、さっき言っただろう? お主は魔力が多いのだ。しかも、今は自覚がないときている。そのような状態で感情的になると大変なことになる。お主は怒ると無意識に足に魔力を溜め、力が足から流れておる。後はお主の周囲にも魔力が散らばっておる。気が乱れれば物を壊すことになる。魔法は便利だが、万能ではない。……まぁ、自分が怒らせたみたいなもんだがな」


すまぬ、と私に頭を下げる団長さん。

 怒ると物を壊すことに……そういえば、ミルク出したメイドさんと対峙したときも足に力入れたとき、テーブルの上にあった皿がガチャンって音、立ててたな……。あれ、もしかして魔力の影響で? それに今も殿下の膝を足で叩いて、殿下がうずくまって痛がっていたし。

 それでは確かに、先程、話を聞いたばかりなのに馬鹿なことをしそうになった私も悪いわね。許すことにしよう。て、ことで私も謝罪した。ごめんなさい。

 しかし、所詮はウサギ。首が短いので僅かに下向いているなー、程度しか曲げられない。度々、申し訳ない。

 しかし、団長さんには伝わったようでグレーの瞳を優しく緩め、にっこり微笑んでくださった。

 わぁ、きっとさぞかし昔は……いやいや、現在もそのダンディーな姿に見とれる女性の方々はいらっしゃるだろう。きゅーんと来るだろう。

 そして、殿下はというと、私の謝罪姿を見るなり、例の持病(?)がまた出たようだ。赤い顔を押さえて、「うぉお」だか、「うごぉおぅ」だか変な呻き声を出していらっしゃる。お疲れさん。



 コンコン。

 おっと、団長さんに来客かな? と思ったら、扉の外にいた衛兵が「宰相様がお見えになりました」と言う。


 え、宰相様? 私たちもいて良いのかな? と、耳を立ててそわそわしていると、宰相様が入ってきて私を見るなり「やはりここでしたか」と微笑んでくる。

 おぅ、今日もイケメンですね。笑顔が素敵です。


「この、チビクロに用がおありですかな? 」

「チビクロ……えぇ。クロ様に提案がございまして」


 提案? なに-? と宰相様が立って私を見ているので私は自然と首を上に上げ、宰相様の目を合わせる。すると、殿下が私の顔を覆った。

 な、何よ?!

 いきなりの行動にジタバタして、短い手でタシタシと手をどかせーと訴えるが、どかしてくれぬ。なんなんですか!


「そんな、上目遣いでエリクを誘惑するな」


 ……エリク? あぁ、宰相様の愛称ですか。で、誘惑? はて、いつ誘惑したと? 今のただ宰相様を見ただけで。

 なんだか段々、殿下が面倒くさい。

 面倒くさいと呆れて、自然と鼻を鳴らす。鼻を鳴らすも変な音が出て、ぶふん、みたいな音が出た。


 ぶふん、付き合うの面倒くさいぜ。


 そして、そんな私と殿下のやりとりに爆笑するダンディーな団長さん。ひーひー言ってお腹を抱えているわ。そんなに面白かったなら何より。別に嬉しくもなんともないですが。

 宰相様とはというと、私は何もツッコみません、といった体で微笑んでらっしゃる。あぁ、温かい眼差しだわ。色々、ダメージが大きいから止めて欲しいですわ。


「我が城には、優秀な魔道具を造る者がおります。その方に、クロ様の言葉を翻訳する機械を造って頂いては、と思い、提案させて頂きました」


 きっと、先程団長から色々話を聞いたでしょう?

 この人は、お見通しというように、にっこりと私に微笑みながら告げた。

 

 ……よーし、私は何もツッコまないぞ-。ただのウサギよ-。び、ビビってなんかいないんだからね! 毛が逆立っている?む、武者震いだからね!


「ふむ、あやつは帰ってきていたのか? 」

「先程、部下より報告を受けました。例の視察は終わりましたが、解決はしてないとのことです」

「そうか、ことはそう簡単ではない類いの物だったか……」



 ……? どうやら、私の例の翻訳機を造る方が仕事から帰ってきたことは分かったけれど、なんでしょう? 例の視察? 事はそう簡単ではない類いの物?

 これ、私、聞いても良かったのかしら? あ、そうよね。私はウサギ。ただの黒ウサギ。


「このチビクロ。なんでこんなに分かりやすいんだかな? 翻訳機いりますでしょうか、宰相殿」


 な、必要よー! 確かに私は貴方たちの言葉は分かるけれど、喋れないならね! 私の意見も聞いて!

 宰相様はそんな私の怒りに対し、苦笑を浮かべ「彼女の言い分もちゃんと聞きましょう」と、進言してくださった。ありがたや! 女の子の気持ちをしっかり理解できるなんて、素晴らしい宰相様だわ。


「待て……」


 と、そこで殿下が宰相様に声を掛けてきた。


「何故…クロが雌だと知っている? 」



 ……そこ? え? そこ、気にします?

 きっと、その場にいた殿下以外のメンバーはそう心でツッコんだことだろう。

 しかし、そこは流石は我らの宰相様。冷静に「マーラが話していたのを耳にしたので」と返す。

 言外に、見ただけで分かったわけではありません、と伝える宰相様。素晴らしいわ。


 後日、私はその優秀な魔道具を造る人に会うことを決め、その場は解散となった。因みに帰りも、筋肉(殿下の腕)に挟まれて帰りました。すれ違った者は、それに対し手を合わせお辞儀して見送っておりました。


 おい、そこ! 哀れみの眼差しでご愁傷様とか言うでない!

クロさんは呼び名を気にしないタイプです。

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