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黒ウサギ、王宮の庭へ散歩

ブックマーク1000越え!

感想もありがとうございます!皆様に愛されてるクロさんも、とても喜んでいることでしょう。

 暖かい日差しが注ぐ午後の日ー……。

 マーラさんが提案してきた。本日は庭を散歩してみませんか、と。

 おぉ! やっと外に出られるのですね! 是非、お願いしたいです。


 どうやら、私専属の騎士が決まり、本日から付くとのこと。う、ウサギにそんな大層なものを付けなくても……とも、思ったが、私は黒い。

 つまりは、珍しい色の生き物としてどこかに連れ去られたり、間違えて処分されてしまう恐れがある為とのこと。また、今までは殿下の傍にいた為、殿下の護衛も常にいて安全だったが……そう、最近、殿下は出張が多いのです。どうやら仕事も大詰めに差し掛かった様子です。何をしているかはさっぱり分からないが、何やらいつもの残念殿下ではなかった。緊張感を孕んでいた。それに、私を見る目が日に日に悲しそうな顔ににっていた。


 もぉ、何で肝心なことは言葉にしてくれないのかしら? 少し、寂しくも不安が募る日が続いた。

 そんなこんなで、一気に私の周りは手薄になり、外に出してもらえなかったとのこと。

 面目ない。それでは、是非とも私を守っていただきたい。しがないウサギに付くなんて、騎士様もきっと腑に落ちないだろうけれど、頑張っていただきたい。


 と、僅かな二人分の足音が聞こえた。これはもしや例の騎士様でしょうか?

 扉を叩いた後、一人の男性が「失礼します、本日から黒き聖獣様の護衛を務める者です」と声がした。

 マーラさんは私に騎士様がいらっしゃいました、と告げ、扉の前にいた者を部屋へ入れる。


 て、ふわわわわ。


「お初にかかります。私、本日から黒き聖獣様の護衛を務めさせていただくことになりました、ラズリアス・インブレラーと申します」

「同じく、護衛を務めさせていただく、フィンリッヒ・ダントランと申します」


 そう言って、私の前で跪き、頭を垂れる二人。わあ、これが騎士! とってもカッコいいわ!


 ラズリアスさんは青いサラサラな髪で、前髪は片方が長く片目のみ、髪と同じ色合いの青い瞳がチラッと見えた。程よい筋肉の付き方をしており、美男子の中に男らしさも加わった素敵な騎士様。

 もう一人の男性、フィンリッヒさんは栗色のロングヘアーをポニーテールで結びキリッとした雰囲気だが、瞳は垂れ目の綺麗な空色をしており、色気があった。見た目はスレンダーな感じだが、この人もきっと騎士らしい体つきをしているのだろう。


 こんな、女性に人気がありそうな雰囲気の二人が私の護衛! 驚きと感動で……後、若干の女の敵視の的になることを思い、耳がピーンと張り、たまにピクピクと動く。目も見開いて二人を凝視してしまう。


「ふふっ、お二人とも面を上げてくださいませ。クロ様は二人を歓迎してくださるそうですよ」

「! ……有り難き、幸せ。私の命をかけてでもお守りいたします」

「黒き聖獣様に、怪しい者は近づかせません」


おぅ、意外に歓迎されてる?私の護衛の騎士に付いたことにとても嬉しそうな二人。ふぅ、嫌々付かれるのは気が引けるなーと思っていたので、私としても嬉しいことだ。宜しくお願いします。でも、命を差し出すほどに守られるのは嫌です。命を大切にして、是非長く共にいて貰いたい。


 翻訳器ができたら、そう伝えよう。


 私もきちんとお辞儀した。例の首の短さが分かるお辞儀。それに対し、流石は騎士さん。私語はなく、短く頷くのみをし、部屋の前へ移動した。

 一人は……青髪の方が扉の外側に。もう一人の栗毛の方が部屋の内側に。

 で、早速マーラさんより栗毛の人に庭へ行くことを伝えると、「では、お供します」と応える。

 騎士様はいざっと言うときのために、手が空いてないといけないので、マーラさんに運んで貰う。


 わーい、クッション付き~(笑)



「さあ、どうぞ。お好きなようにお散歩してください」


 やった-! お外ー! 久しぶりです。

 王宮の庭は流石手入れが行き届いており、季節にあった花々が各花壇に芸術的に配置して植えてあった。もうすぐ冬も来るが、まだ、日中の時間帯なので、毛皮もあるし何も寒さは感じない。

 あ! トンボ!

 赤いトンボが私の周りをぐるぐると回ってきた。私も目で追い、そして追いかけた。


 待てー、トンボ殿-。

 てっ、てっ、と走り回る黒ウサギさん。その様子を暖かい眼差しで見守る護衛とマーラさん。と、走り回っているとヒヒィーンと言う鳴き声が聞こえた。

 はぅ?! そういえば、久しぶりの外に浮かれていたわ!

すっかり野生の勘が鈍くなってしまい、周囲の確認をするのを忘れてしまっていた。

 ふ、ふぇええぇ……。さっきの鳴き声は? あっちから聞こえたぞ? と思い、伏せした状態で、耳だけ先程聞こえた鳴き声の方へと向ける。


「あらら、急に動かなくなってしまったわ」

「馬の鳴き声に怯えてしまったようですね。待女殿、どうされますか?」

「……馬さん達に挨拶してきましょうか」


 そうして、その場から動けなくなった私をマーラさんがクロ様、と呼びかけて抱っこしてくださる。

恐かったよぉ! ママー!

 余談だが、最近、黒ウサギにとって、マーラさんは母親ポジションになった。前から母親がいたらこんな感じかな? と感じていたのだ。


 まぁ、その話はさておき……。


 そのマーラさんにより先程、声が聞こえた方へ運ばれる。

ひぇ?! どうしてそっちに行くのよ! 私、どっかマーラさんを怒らせたことあったっけ?!

 あったら、謝るから、許して-! と、小さくキーキー鳴きながらクッション(笑)を短い前足で何度もタシタシと叩く。


 で、着いてしまった。目の前にはお馬さん。デッカーーイお馬さん。白い子です。長い白いまつげが素敵な綺麗な鬣のしたデッカーーイお馬さんです。


 ひょえぇええ! マーラさん! 本当に何で連れてきたのよ!


「クロ様、落ち着いてくださいませ。この子は雄ですが、殿下の馬でごさいます。きちんと殿下自ら調教した子でもあり、お利口なお馬さんなんですよ」

『……噂の黒き聖獣殿に会えるとは嬉しいことです。驚かせてすまなかったな。このメイド殿が言うように野蛮なことはせぬ』


 はわわ、それは失礼しました。どうも、自分より大きなものに会うと、本能的に身がすくんでしまいまして。


 そう、返すと白馬さんはよいよい、動物の本能なのだから仕方ない。と、鼻を鳴らして応えてくれた。


『なんなら、私に触れてみると良い。毎朝、馬場の番の者がブラシをかけてくれるおかげで、毛並みはいいぞ。まぁ、黒き聖獣殿には負けるがな』


 あ、名乗るのが遅くなってすみません。私は皆からクロ、と呼ばれています。どうか、黒き聖獣とは呼ばず、そちらを呼んでくれたら嬉しいです。


『了解した、ではクロ殿と、呼ばせていただく。私はジュリーと申す』


 お互いに改めて名乗り、鼻をくっつけ合う。ほんとはお尻辺りの匂いをかぎあって、挨拶するのがウサギの挨拶なのですが、相手は馬さん。なので、鼻同士をちょこんとくっつけ合った。


 宜しくお願いします-。


「ふふ、どうやら無事挨拶が済んだようですわね。もぉ、挨拶する姿までもが可愛いとか、クロ様は非の打ち所がないですわ」

「お、あの気難しいジュリーがクロ様に鬣を差し出してる。凄いですね。流石は黒き聖獣様です」


 私はジュリーの鬣の上にマーラさんの手から降ろして貰い、乗ってみた。

 ほぉう……サラサラです。滑らかです。まるでシルクの上にいるみたいで気持ちいいです。あまりの気持ちの良い手触りに何度か顎を噛む動きをして、ごりごり音を立てました。


 うぬーん、気持ちいいです。


『気に入っていただいたようで良かった』


 こうして、初めてのお外の散歩は終わった。また、連れて行ってくださるというので、その時はまたジュリーさんの鬣に触りに行きたいです。

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