プロローグ
私には 好きなことがあった
やりたいことがあった
でも それは
諦めるしかなかった
ねぇ いるというなら 答えて
どうして
こんな自分を この世へ
生を与えたのですか?
神様
ねぇ 教えてよ
――――――――――――――――――――――
「おねーちゃん、どうしたの? 」
「……昔のことを少し思いだしていただけ。大丈夫よ」
日差しがぽかぽかと暖かいある日の午後。
私は突然、自分の住み処の近くに住む、子どもたちの面倒を見ていた最中に頭に強い衝撃を受けた。
そのとたん、きっと……前世だろう一部を思い出した。
と、いっても自分が何者だったとか、前世はどうしていたか具体的なことは分からない。ただ、前世で抱いた強い後悔が私の今の感情に根付いた。
(自分がやりたかったこと……何だったかしら?)
その疑問も解決方法はなさそうだ。感情しか思い出していないのだから。しかし、こんな複雑な感情を抱くということは恐らく前世は人間だったのだろう。そう思うのも今の自分は人間ではないからだ。
「おねーちゃん! ここのタンポポ美味しいよ!」
そばに薄茶色のもふもふが一匹寄ってきた。
「ねちゃ、眠い……」
ちっちゃいモノクロ模様のもふもふが一匹、さらに自分に寄ってきた。もふもふの正体はウサギだ。で、何故そんなウサギに挟まれ、ウサギの言ってることが分かるのかって? えぇ、皆さんのご想像通りです。
私もウサギだからです。黒の。体も目の色も。そりゃあ真っ黒いもふもふなウサギです。
て、ことで眠いと一番ちっちゃいウサギの子がすり寄って来たし、お昼寝にちょうど良い時間だし私も寝ようっと。
ウサギとして生を享けて一年半。まだまだ若輩者の部類ですが元々ウサギは穏やかなので、のんびり森生活を送っています。
「クロちゃん、今日も面倒見てくれてありがとう。また、明日もお願いね」
「おねーちゃん、バイバイ! また明日も遊ぼうねー」
「こちらこそ、人参をありがとうございました。はい、明日ね、薄茶の子」
私はいつも大人のウサギさんが住み処の穴を補正したり、食料調達で少し離れたところに生えている、野生の人参を取りに出掛けたりする親のために、その子どもを預かり、面倒を見ているのが日常だ。そして、親はお礼の品を毎回くれるので、私はあまり食料調達しに行かなくてすむ。
お互いに利益があり、ご近所とは上手くいっている。
さてと、早速頂いた人参を頂きましょうか。ガリッガリッ、モグモグモグモグ……うん、美味しいです。今日も平和に過ごせて感謝です。
私の日常はこんな感じだ。
基本、薄明薄暮性なので朝と夕方の方が私たちは活動しているが、最近は冬に備えての準備をするウサギさんが出てきているので昼に子どもを預かることが今は多い。
それに、ここの森は比較的穏やかで、大きい獣は見かけないので余計にウサギを始め、草食動物は昼に活動することがここの森では多いのだ。
さて、明日はどこのウサの子を預かるのかなー、と、のほほんと人参をかじりながら明日も平和に過ごせることを疑わずに、一夜を過ごした。
薄明薄暮性とは→明け方と夕方頃活発に動きやすい性を持つもの。
全くの夜行性ではないが夜行性に近い動き方をすることです。




