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   2  少女の名は

「これは……? 赤でもなく青でもなく……?」


 担当神官は玉に現れた光を見て首を傾げた。


「……んう?」


 少女はきょろきょろと周囲を見回すと、同じように首をこてん、と傾げた。


(なんかへんなかんじする)


 少女のその違和感は、湯神が本格的な加護を作動させ始めたのが原因であった。


「うーむ、これは見たことがない組み合わせですねぇ。前例も無しのユニーク属性ですね」


「ゆにーく?」


 聞き覚えのない単語に繰り返す少女。


「はい、ユニ―ク属性です。色合いからすると火と水、それに関わる適性が有りそうですが詳しくは判りかねますが」


「ほほー?」


「まぁ、どのような魔法が使えるのかは解りませんが、先ほどの光の強さから言って魔力は高そうですので良い方向に向かうでしょう」


「解りました」

「わかったー!」


 おそらく判っていない。


「はい、ではこれを持って席にお戻りください」


「有難うございます。さ、行きましょう」

「はーい!」


 少女は母親と共に父親の隣へと戻ると「ゆにーくだって!」と笑顔を振りまいた。

 母親は「よかったねー」と頭を撫でつつ、

 父親は「こりゃ大物になるぞー」と少女の手をにぎにぎしつつ、この先の育て方について悩むのであった。





「はい皆さん、属性鑑定及び魔力登録が完了いたしました。いま君達が持っているのは識別票と言って持ち主が誰であるかが解る魔道具です。私もこのように所持しています」


 担当神官は左手に楕円の板をもって見せる。


「これからこの識別票の使い方を説明しますので、よく見ていて下さい。良いですか?」


少女たちは「はーい!」「はい」と返事を返す。


「まず、そのままであれば貴女達の名前とこの神殿の名前が見えているはずです」


 少女たちも識別票を見る、そこには少女たちの名前と神殿の名前が書かれていた。


「そして次に、識別票を見ながら”自分の技能(スキル)が見たい”といった意識を持ちながら”ステータス”と呟いてみてください。 視界に自分だけが見える文字が出てくると思います」


 すると「……すてーたす?」「すてーたす!」「すて~たす」と様々な声が響いた。


「おー!? なんかみえたー!」


 きょろきょろと向きを変えても、視界内に表示され続ける半透明の文字に驚いた。


「どうやら皆さんうまく出来た様ですね。今はまだ文字が読めないと思いますが、文字が読めるようになったら、お父さんやお母さんに教えてあげて相談するといいでしょう」


「「はーい!」」


 この文字は本人の視界のみに投影される為、他人から覗き見ることは不可能なのだ。



 なお、実はこの段階で驚愕に値することが書かれていたのだが、それが発覚するのはまだだいぶ先なのである。



「その文字は見えなくなるように念じれば消えます」


(きえろ~)

「きえたー!」


 無事に消すことが出来たようだ。


「さて次に、この識別票は身体に隠すことが出来ます。道具を身体に当てて……”かくれろ”とでも言ってみてください。何も言わず身体に入るように念じるだけでも大丈夫ですが、なれるまでは口にだすと良いでしょう。かくれろ……とこんな感じです」


少女たちは「おおー!」と声を上げると「かくれろー!」と試し始めた。


「わらちも! んー……かくれろー!」


 識別票は左手首あたりに吸い込まれていった。


「おおお!? しゅごい!」


 少女たちははしゃぎ始めた。


「では逆に取り出してみましょう。識別票が出てくるよう念じて下さい。そうですね……”でてこい”とでも言ってみてください。でてこい……とこんな感じです」


「よーし……でてこいー! ……でてきたー!」


 識別票は左手に飛び出していた。


「皆さん出来た様ですね。 これからの人生、その識別票はとっても大切なものなので、普段は身体に隠しておいてください」


「「はーい!」」


「最後に、その識別票は”タグ”ともいいますので覚えておいて下さい」


「「はーい!」」


「ではこれにて三歳記念式を終わります。気をつけてお帰り下さい」


 担当神官の宣言で式は終了し、一同はそれぞれの帰路についた。


 少女一家は、お祝いだとばかりに少し高めの夕食を摂るのであった。




 

 一泊した後帰宅。


 少女の自宅リビングにて。


「ふう、これでやっと名前で呼べるわね、貴方」

「長い様で短かかったような気もするがな」


 この世界の人々は”三歳の式を終えるまでは名前で呼ばない”という風習、これを守り続けている。


 小さなうちに名前で呼ぶと、死魔――不幸の象徴――に目をつけられて連れて行かれるのでは? という旧暦時代からの伝統なのだ。


「では……」

「ああ」


 父親と母親は互いに頷くと声を合わせて娘の名を呼ぶ。


「せーの……」


「「無事に育ってくれて有難う、愛してるよ(わ) キーナ!」」

「あい! おとーちゃ! おかーちゃ!」


 少女、キーナは両親へと抱きつき、その愛を全力で受け止るのであった。


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