??? エピローグ 大宴会
よろしくお願いします。
「それでは、初代女将に乾杯!」
「かんぱーい!」「乾杯!」「乾杯や!」
娘である二代目女将が一通りの挨拶を終え、畳敷き大宴会場の最奥にある遺影にグラスを捧げて乾杯の音頭を取る。
直後、揃いの浴衣姿で立っていた数百の人々から、様々な乾杯の音が響き渡った。
――ワイワイガヤガヤ
「”王国の”、やはり鶏の唐揚げにビールがたまらんのう」
「”帝国の”、このモツ煮込みにイモショウチュウも最高だぞい?」
上座では先帝――先代帝国皇帝と、前王――国王の先代王――が、差し向かいで会話を弾ませていた。
「おやおや、聞き捨てなりませんな。モツ煮込みにはカラクチダイギンジョウと決まっておろう?」
「”ご隠居さん”はニホンシュ党だからじゃないかね?」
「はっは、違いない! あっちの”爺様”には負けるがの?」
ご隠居――先代魔王――が”だるま徳利”を片手に携えて二人の側に座ると、先代皇帝がそう返し、魔王はカッカと笑った。
爺様――東方連邦の先々代首相――は酒樽に一番近い席に陣取り、獣人族の族長らと共に若いネーチャンを侍らせてご満悦の様子だ。
「わしも爺様には勝てる気がしないな」とご隠居。
「うむ」と前王
「じっくり呑むのが一番ぞ」と先帝。
◇
「しかし早いものよのう、一年というのは」。
「儂にしてみれば、つい先日ぐらいの感覚じゃがな」
「湯都に居ると時を忘れますからのう、そのせいも有るかも知れんの」
「湯都ビバノンか……。あの荒れ地をよくもまあこれだけの観光都市にしたものよの」
「豊かな温泉、うまい飯に旨い酒。ネーチャンは綺麗で、争いも無しってな」
「国や地域、人種でいがみ合うこともない。ここは地上の楽園じゃのう」
三人は、しみじみと頷き合った。
「あの娘には本当に頭が上がらんの」
「うむ、儂がさんざん悩んでいたことをあっさりと解決しよってからに」
「帝国も然り。……ふむ」
先帝が杯を遺影へと向ける。
「世界を救ったゆ~しゃに乾杯」
「ん、乾杯」
「乾杯じゃ!」
三人は改めて杯を掲げるのであった。
「さて、思い出語りといこうかの?」
「いい肴になりそうじゃ。よし、朝まで語り合うぞ」
「げに。おっと……中居さんや、お酒のおかわりを頼むぞい」
「はーい、ただいまー!」
宴会は夜を徹して行われた。
――この物語は、その女将――世界を救った”ゆ~しゃ”――の物語である。