はじまり
大学の帰り道。
俺、咲神晴彦はいつも一緒に家路につく1つ上の学年の友人がいる。
他愛のない雑談を交わし、5本目の信号で別れるのが俺の日課だ。
そして、今も日課実行中であった…のだが。
今日は話の内容がいつもより少し違う。
「なあ、お前さあ。バイトしない?」
「何です?可愛い子がいるコンビニでも見っけたんスか?ww」
「ちげえよ。バーカ。ほら、俺の親父って園長だろ?大学の近くの保育園の。そこまでは知ってるよな。だが本題はこれなんだ。」
俺の友人で先輩の勇次さんは『春山保育園保育士バイト募集中!』とカラフルに印刷されたチラシを渡してきた。
「実は今、俺の親父の保育園で、保育士が不足してるんだよ。それでお前がバイトしてくれねえかなーって。1人入ってくれるだけでもありがたいんだ。」
保育士か。
「なるほどなー。」
と俺は相槌をうった。
「まあ、強制はしないから、考えてくれないか?ちなみに俺もバイトしてる。」
「分かりました。3日以内に答え出すんで、それまで待っててもらっていいっすか?」
「分かった。そのチラシはお前にやるから。」
「ありがとうございます。じゃあ、また明日。」
「おう、またな」
視界に現れた5つ目の信号で勇次と別れ、さっきもらったチラシを眺める。
「保育士か。面白そうだな。」
案外早く答えが出てしまった。
家に着くとすぐに勇次さんに『バイトをする。』と、メールを送った。
返事は30秒ほどで帰ってきた。
明日、保育園に来てほしいとのことだった。
幸い、明日は土曜日だ。
『分かりました。』、と送信して、俺は机の上に置いてあった菓子パンをほおばった。のどに詰まった。
同じく机に置いてあったペットボトルの水を飲み干す。
「し、死ぬかと思った…」
ある程度落ち着いてから、ふと考える。
保育士ってどんな感じなんだろう?
「明日が楽しみだなあ」