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近所のラーメン屋とそのほか色々

作者: 佐伯

「ったくお前は……」椅子にふんぞり返り、さあお前の無能さをこれから語ってやるぞと、言わんばかりにハゲオヤジは息を吸い込む。背を丸め立ち尽くす俺に一声を浴びせる瞬間。

「俺、辞めます。会社辞めますから」

それを受け「え?」だってさ、お前の所為だよ。意外そうな顔するなよ。

そして、事務所のBGMの世間話が止まっていた事に気付き、ああどうだろうね。これ人によって違うと思うけれど、俺は気持ちよかった。なぜなら、きっと目の前の彼と同じ素っ頓狂な顔をしているだろうからさ。


そんなこんなで会社を辞めた。

多少は引き止めらたよ。けれど、これ以上あそこにいて良いことが起こる気はしなかった。惰眠を貪り、夕方近くになりとりあえず母親に会社を辞めた事をメールをすると、すぐさま母親から着信があったので電源を切りキッチンで頭を洗い、適当にヘヤワックスをつけ。行きつけのラーメン屋に向かった。

へい、らっしゃい。ドアを開けると店主の声がわっと降ってきた。この人うるせえなとはじめて思った。4人席に座り(空いてたから)今日くらいはいいかと、ラーメン餃子のAセットに、おつまみチャーシュー、唐揚、それと生ビールを頼もうと思った。

置かれたお冷は一口でカルキ臭いのがわかる。どうせビールがくるから、もう飲まない、誰かが野球中継からチャンネルを変えた。

上のテロップの「原因不明」「病原菌」そして、「感染性の高い」が目に入り、そんなもんをテロップするなと思った。

日本じゃないと思ったら、やっぱりそうでどこか知らない国だった。だからテロップでながしたんだろうな。

店主は腕を組み神妙そうな顔をしていた。そんな事よりさっさとオーダーを取りに来いと、それと味だ。味を向上させろ。ちっちゃいこんな店の店主が考えなきゃいけない事は世界平和じゃない。顧客満足だ。


臨時ニュースがまた入る。「宇宙人」「病原菌」そして、「拉致」だった。


「ご注文お決まりですか?」


「あ、ああ。ビールAセットに……ああ。Aセット、醤油で。あー餃子のやつ、それとビールね」


で、食って帰った。なんか、会計が安い気がした。


そこからがおかしいんだ。

翌日町から人が半分消えた。とりあえず1ヶ月は行かなきゃいけない会社に行ってみると、嫌いな奴が消えてくれてた。かわりはみんな宇宙人で、奴らは地球の文化を知らないから俺は重宝される事となる。当然クビなんてなかった話だ。どさくさでハゲオヤジのポジションは俺だった。宇宙人どもを顎で使い、文房具を扱う会社をどんどん大きくさせた。


でさ、

「本当君はなあ……」俺は腕を組み考える。宇宙人にも出来のいい奴と、悪い奴がいる。

けれどさそれって、なんつうか……わるくないよね。人生って感じ。


俺は言葉を選ぶ。

「世話が焼けてかわいいよ」

にこやかに笑う。


彼らには表情がないゆえに気持ちはわからない……上司という概念もないのだろう。「オマエクビ」と彼が言うと、俺のクビはポロリと落ちた。

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