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―――005―――

本日5話目です。

読み飛ばしにご注意ください。

 おかしい。

 竜は空を飛んで逃げることも、森の木を薙ぎ払うことも、ブレスを吐いてくることも無く今まで通りに木々の隙間を狙い爪と尻尾で攻撃してくる。

 動きが若干良くなった気がするが、それだけだ。

 つまり、竜はまだ僕を脅威と見ていない。

 目を刺して、毒を注入してだ。

 

 ここから考えられること。

 1つ目は目への攻撃は致命打にならない。

 これは回復能力が高い可能性が有る。

 

 2つ目は毒が効かないか、効果が薄い。

 竜なので毒に強い耐性があっても不思議では無い。

 ただ、それよりも思うことがある。

 この竜、もしかして僕よりも強い毒を持っているのではないか?

 

 こちらは転生後すぐのレベル1の蜂。

 当然その毒は弱いものだろう。

 

 あちらは生物の頂点とされる事が多い竜。

 この世界ではどうかわからないが適性検査の時に体験した竜は、この蜂よりも強かった。

 あの竜と同等レベルの場合、あちらの火がこちらの毒に置き換えられると考えて……僕の毒では勝てないだろう。

 

 だが、針を目に刺しても効果が薄い。

 対策を考えつつ、毒が本当に効果が無いか待つしかない。

 

 

 

 やはり、あの2つの毒で効果が無かったのだろう。

 ならば次の手を考えろ。

 幸い敵はまだ油断している。

 僕を脅威と考えていない。

 そして真白を狙う素振りは無い。

 

 まだ、時間はある。

 今は新たな力もある。

 あの時とは、違うんだ。

 

 

 

 2つ。

 1つは最終手段。

 なのでもう1つの方を実行しよう。

 こちらも失敗すれば終了ともいえるので結局どちらも最終手段かもしれないが、こちらは自信がある。

 

 そして、こちらは成功すれば新たな力となる。

 2つの毒が効かなかった以上、意味が無いかもしれないが成功すれば新たな力とはなるだろう。

 まずは毒を生成しよう。

 2種類ともだ。

 

 

 

 よし、毒の生成はこれくらいでいい。

 集中しろ。

 さらに集中しろ。

 少しでもずれると大ダメージは免れない。

 そしてそれは回避を行いながら実行しなければならない。

 

 落ち着き、集中し、体に2番目の両手を当てる。

 そして、すこしだけ上へと向けた。

 この奥にあるのは2つの毒袋。

 先程2つの毒を同時生成して気が付いたが、毒袋は2つ以上あったのだ。

 そして今、2つの毒袋にはそれぞれ違う種類の毒がある。

 普通では混ぜることのできない2つの毒。

 僕という蜂だからこそ、混ぜることのできる2つの毒。

 

 2段目の右手で1毒の毒袋へ接続先を生成。

 2段目の左手で2毒の毒袋へ接続先を生成。

 

 それぞれを別の隣り合った部屋へ接続。

 2つの毒袋から毒が減っていくのを感じる。

 2つの毒がそれぞれの部屋へと入り込むのを感じる。

 

 1部屋、2部屋と命名。

 そして、1部屋と2部屋の分割を解除。

 元部屋の時間経過を停止から現在可能な最大へ。

 これで毒は混ざり合う。

 

 2種類の毒。

 それぞれ違うものであり、混ざり合うかは分からない。

 混ざり合ってもより強力になるかはわからない。

 強力になっても、求めている強さまで届くかはわからない。

 それどころか反発し合い、最悪の場合異次元倉庫が使用できなくなるかもしれない。

 そして部屋から出した瞬間僕自身が毒に負けてしまうかもしれない。

 それでも、できるのだ。

 可能性があるのならば、行おう。

 

 毒を異次元倉庫の同じ部屋へ入れられたので、次は針だ。

 今だ竜の目に刺さっている針。

 あれを回収しなければならない。

 

 先程と同じ手段は使えないだろうか?

 警戒はされているとは思うが、試してみよう。

 勿論、危険なようならすぐに逃げる。

 

 

 

 竜の爪が大地を強く掴むのが見えた。

 それを確認し、すぐに竜の頭上へと向かう。

 前方から迫りくる尻尾を急降下することで避け、そのまま竜の目に刺さった2本の針へと手を伸ばす。

 

 あと1歩。

 あと1歩のところで届かなかった。

 だが、回避できただけ良い。

 

 流石に竜も対策を取っていたらしく、頭へ急降下したと同時に頭を振り上げてきた。

 もう少し、僕が戦えればあそこで針だけを抜き離脱できたかもしれない。

 だが、所詮僕なのだ。

 それに未知の行動された時点で回避に徹すると決めていた。

 

 先程までいた位置を通過する爪を見ながら、次の作戦を考える。

 

 

 

 突然、竜が目の針を引き抜いた。

 そして、こちらへと投げてきた。

 いや、相手側は投げ捨てたのだろう。

 

 そこで針を回収しに行くか迷ったが、止めておく。

 針の軌道は決まっているのだ。

 そこを狙われてしまうと避けられない。

 それどころか無事であった針すら巻き込む可能性もある。

 

 何故、竜は針を投げ捨ててきたのだろう。

 ここで破壊するならまだわかる。

 だが、その様子は無い。

 

 まあこちらとしてはチャンスができたのだ。

 隙を見て、拾いに行こう。

 

 そしてもう1つ。

 竜が動いていない。

 攻撃動作に移れる体勢ではあるのだが、動いていない。

 針を拾いに行きたいが、この状況では拾うことはできない。

 攻撃の隙であればギリギリ拾えると思っているのだが……。

 ここは相手の行動を待つしかない。

 

 

 

 突然、竜が動き出した。

 そして、大地を掴み尻尾を横向きに動かし始めたのを確認した瞬間、急上昇した。

 大木のようなその尻尾は木々を折りながら僕の下を通過していく。

 その尻尾は先程までよりも、速い。

 

 これは……僕が逃げ回っているので、面倒になったのかもしれない。

 針を抜いたのは、余裕の表れか、目を回復させて視界を得るためか。

 目に空いた小さな穴が塞がったのかどうかは確認できない。

 先程動いていなかったことを考えると、回復の可能性が高いか。

 

 いや、動かなかったのは……毒を体から完全に消していた?

 もしかして、毒は少し効いていたのだろうか?

 知覚できない程に弱く、だが竜の体内で負けることなく。

 それであれば、可能性はある。

 ならば今は針の回収と攻撃の回避に全力を注ごう。

 

 

 

 竜の左腕が目の前を通り過ぎる。

 ここだ。

 ここで、相手の視界に入らないように、腕の陰に隠れて移動する。

 そして針まで到達する。

 少々危ないが腕を振り上げた今、他の腕で攻撃はできないだろう。

 尻尾も踏ん張りがきかないので速度は出ないはず。

 そうなれば見てからでも避けられる。

 そして飛ぶにしてもそれよりも早くこちらは針を回収できる。

 

 目の前に2本の針が見える。

 欲張りはしない、1本でもいい。

 間に合え!

 

 ……届いた。

 だが、もうすでに尻尾は動き始めている。

 もう1本は諦めてすぐに回避行動へと移る。

 このタイミングならばぎりぎり避けられる。

 風圧で体勢を崩すかもしれないが、敵も連続攻撃はできないだろう。

 その時間で立て直す。

 

 左から迫る尻尾を急上昇することでギリギリ回避した。

 だが、予想通り風圧が飛行の邪魔をする。

 急いで体勢を立て直し、どうにか次の攻撃が行われる前に針を回収する前の位置まで戻ることができた。

 相手も尻尾を元の位置に戻し、こちらの様子を窺っている様子だ。

 

 これはチャンスだろう。

 2番目の左手を毒袋の少し上の位置へと移動させ、毒袋に向ける。

 そして、先程毒を混ぜた部屋と毒袋を接続。

 毒が体内へ入ってくるのを感じる。

 ……どうやらこの毒は僕に害をなさない。

 流石僕が作り出した毒同士だ。

 

 毒袋へ毒が移動しきったのを感じ、毒袋と部屋を切断する。

 そして左手に持った左針に毒を注入する。

 上手く混ざって、僕には害をなしていない。

 あとは竜に注入すればいい。

 それでもダメならば、最終手段を取ろう。

 

 先程から移動が少し難しくなってきている。

 蜂にも体力はあるのだ。

 そして、激しく移動すればそれは減っていく。

 今まででさえ良く持っていたと思っている程なので、動けなくなる時は近いだろう。

 なので最終手段を考えると、これが最後のチャンス。

 

 狙うのは目。

 先程、少しでも毒が効いた可能性のある部位。

 もしかしたら効いていなかったかもしれないが、可能性が無い訳では無い。

 それに他の部位は危険すぎて狙えない。

 まだ、最終手段も残っているのだから。

 

 問題は狙う方法だろう。

 前回と同じようにはいかない。

 それは針を回収しようとしたときに証明された。

 他の手段を考える必要がある。

 だが、時間が無いので急ぐ必要もある。

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