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―――004―――

本日4話目です。

読み飛ばしにご注意ください。

 空間が消滅した瞬間、世界を感じる。

 目指すは真白。

 

『空間が消滅したわ! とにかく動き回って。近くにサポート妖精がいて、そのサポート妖精が隠していなければ感知できる』

 

 ブラン、お願いね。

 

 背の羽を動かし、体を宙に浮かせる。

 そして、ただ前へと進む。

 高速で迫ってくる木々の間を抜け、ただただ駆け抜ける。

 

 流石機動力が脅威と言われる蜂だ。

 これ程の速度と機動力があるならば森を抜けて空に出るよりも、森の中を進んだ方が邪魔が入らず、早く移動できるはず。

 

 

 

 幼きあの手を僕は離せない。

 まだ、ダメなんだ。

 

 

 

 木々の間から見えたのは兎の魔物。

 倒すべき相手。

 だが、今は時間が無い。

 一瞬でも早く真白の元へ。

 

 兎の前方を抜け、さらに移動する。

 その間も可能な限り接続と切断は繰り返しておく。

 可能性は多い方がいい。

 

 

 

 見つからない。

 今思っても失敗したと思っている。

 僕が口を滑らせなければ真白はここが異世界だと知る可能性は低かった。

 そして知ったとしても、もう少し時間が掛かったはず。

 そうであればよかったのだ。

 ゲームと認識さえしていれば真白は弱くない。

 

 だが、ここは異世界。

 現実なのだ。

 それに、例え魔物を倒して町に辿り着いても……。

 急がないと!

 

 

 

 数種類の魔物が行く手を遮る。

 だが、ハチの機動力ならばそれは避けられる。

 ハチで良かった。

 心からそう思う。

 

 

 

 タ………。

 

 突然何かが聞こえた。

 

 タ……テ。

 

 その音はとても弱く。

 

 タス…テ。

 

 だが、侵食するように心に届く。

 

 タスケテ。

 

 真白、そこにいるんだね。

 約束を守ってくれてありがとう。

 今、行くね。

 

「え、いたの!? 私はまだ感知できてないのだけど」

 

 方角と距離は分かる。

 でも、このままでは間に合わない!

 

「……位置を想像して。神の力で転移を行うわ。対価は後で払ってね?」

 

 お願い。

 指示通りに真白の位置を想像する。

 ただ、声がしたその位置を。

 

 次の瞬間、森の少し開けた場所で巨大な竜に襲われかけている真白が見えた。

 そして考えるよりも早く、右針を竜に突き刺す為に移動していた。

 間に合え!

 

 その針は竜を覆う緑の鱗に阻まれた。

 だが、竜は真白への攻撃を止め、こちらへと顔を向けた。

 これで良い。

 

 あとは、僕がこの竜を倒せばいい。

 それか、真白が十分離れたところで可能ならば逃げ出すか。

 

 それにしても、魔物形態で良かった。

 この状況、真白は僕を置いて逃げないだろう。

 本当に良かった。

 

 

 

 竜は鋭そうな爪を備えたその足で大地をつ掴み、大木のような尻尾をしならせ、こちらへと叩き付けてきた。

 その尻尾は竜の前方にいる僕に届く程長く、そして速い。

 当たれば即死は免れないだろう。

 だが、こちらは蜂だ。

 機動力を生かしその尻尾を大きく避ける事ができた。

 今の僕にはギリギリで避けて反撃なんて器用な真似はできない。

 

 どうすれば勝てる?

 

 竜は太くその巨体を支えるに相応しい脚を持ち上げ、その先端に生えている鋭い爪を木々の間から振り下ろす。

 尻尾には劣るが十分な早さを備えた攻撃だが、尻尾を避けられた機動力ならば十分に避けられる。

 その攻撃を回避しつつ考えを進める。

 

 まず、右針があの鱗に阻まれた。

 そして仮に柔らかい部分をさせたとしても、それだけでは致命傷にはなりえないだろう。

 

 やはり、毒。

 柔らかい部分へと毒を注入し、毒が回るまで攻撃を回避する。

 これがいいだろう。

 

 だが、問題もある。

 あの竜に僕の毒が効かない可能性だ。

 まあこれに関しては試してみればいい。

 

 そうなると、まずは毒を生成しよう。

 左針へ1毒を。

 右針へ2毒を。

 今作成できるのはこの2種類。

 毒の名称なんて知らない。

 ただ、それが作れることだけを知っている。

 

 

 

 竜を確実に倒すことができる毒の量なんて知らない。

 だからこそ、最大まで。

 幸い右針と左針にはかなりの量の毒が込められるので限界まで込めてから突き刺す。

 見たところ柔らかい部分は目と口の中、そして翼膜。

 このなかでまず翼膜は選択から外す。

 あの薄さでは逆に貫いてしまうかもしれない。

 次に口だが、これも危険だろう。

 適性検査で竜になった時、確かにブレスを吐く事が出来た。

 口に攻撃した瞬間にブレスを吐かれた場合、避けられない。

 なので、目にしよう。

 ブレス攻撃の危険はあるが、口側では無く上空から攻撃を仕掛ければ少しはマシなはずだ。

 それに上手く刺されば毒が効かなかったとしても感覚器官を1つ潰せる可能性がある。

 

 

 

 尻尾と爪、その2種類の攻撃を避けつつ毒を生成する。

 場所が森で良かった。

 竜がいる位置こそ少し開けていて障害物が無く、あの巨体が動けるが僕と竜が実際に戦闘している位置は少し開けた場所と木々が生い茂る場所の境界。

 この位置であれば竜の攻撃は制限される。

 勿論竜の攻撃は壮絶で木々を薙ぎ払うこともできるが、僕程度の相手に薙ぎ払ってダメージを受けるのを嫌っているのか、木々の隙間を狙って攻撃している。

 この場所でなければ、この竜の攻撃を避けきれていないだろう。

 

 そして森だからこそ木が邪魔をして大きな竜は飛ぶ事は難しい。

 開けているとは言っても、その巨体故に竜にとってはぎりぎりのサイズなのだ。

 垂直に上がる事すら難しいだろう。

 それでも飛べない訳では無いだろうが、今の僕相手にそこまでして飛ぶ必要は無いと考えているのかもしれない。

 

 

 

 それにしても、ブレス攻撃をしてこなくて良かった。

 先程真白を確認したが、動けていない。

 逃げていないのではなく、動けていないのだろう。

 そして、この体では迫りくるブレスからは真白を守ることはできない。

 この状況でブレスが真白に向けば、真白を掴んで避けられることにかけるしかない。

 他にも方法は思いついているが、そちらは危険すぎる。

 まだつかんで避けることに掛けた方がましなレベルだ。

 なので今できることは竜を真白と反対側に引きつけること、真白から離すこと、真白に注意を向かせない事だ。

 

 さらにブレスがくれば森が一気に開けてしまう。

 そうなれば僕の勝率は一気に落ちるだろう。

 その為、僕を脅威と認識させないように倒さないといけない。

 

 

 

 毒の生成が完了した。

 毒は既に針に注入済みだ。

 あとはタイミングを見計らって竜の目へ突き刺すだけ。

 貫通してはいけない。

 難しいが、やるしかない。

 

 

 

 真白から十分に竜が離れたのを確認できた。

 ここでならば暴れられても真白までは到達しないだろう。

 本当はもう少し引き離したいが、それは僕が持たない。

 今は回避できているが、一歩間違えば当たるだろう。

 あの攻撃にはそれほどの速度がある。

 そして当たれば一撃で死が待っているだろう。

 そうなれば、次は真白が狙われるのだ。

 ここで決めなければ。

 

 

 

 竜の爪が大地を強く掴むのが見えた。

 それを確認し、すぐに竜の頭上へと向かう。

 前方から迫りくる尻尾を急降下することで避け、そのまま竜の右目へと両手の針を突き刺す。

 針は抵抗なく刺さり、貫通はしていない。

 すぐに針を放し、竜から離れる。

 

 次の瞬間、竜がの前足が、鋭い爪が目の前を通り過ぎる。

 できれば毒の注入が完了するまで待ち、針を回収したかったが、攻撃がこないはずは無い。

 その為、すぐに離れる必要があったのだ。

 もし針を回収できるとすれば、竜が壊さずに抜いてくれるか、自分で抜きに行くかだ。

 

 これで僕に武器は無い。

 あとは毒が回ってくれるのを待つだけだ。

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