―――035―――
本日10話目です。
読み飛ばしにご注意ください。
「それにしても、ギルド長は貴方が大事なのですね。どこが任務を優先するのですかね」
「からかっているのですか~?」
「貴方はそれでいいのですか?」
「あの人の思い、嬉しく思っていますよ~」
「人にあれ程大事にされる。良い事だと思いますよ」
「透君も真白さんを大事にしているのですよね? アキラから聞きましたらよ~?」
「僕があの時動揺しなかったのは、真白が貴方達の誰にも負けないと信じていたからです」
「ふふっ。アキラとブレイが聞いたら落ち込みますね~」
「その意味、貴方に分かりますか?」
「何が言いたいのですか?」
「先程の事に対する、ちょっとした仕返しですよ。あの時は貴方を狙ってしまい、申し訳ありませんでした」
そう、クリアの為にしてくれた先程の行動。
それに対するお返しだ。
まあ少し予定を早めた、それだけ何だけどね。
「いえいえ、私が一番弱そうだったのでしょう~?」
「そうですね。そして一番脅威であろうギルド長の弱点を狙いたかったのですよ」
「君の観察力は恐ろしい程に正確ですね~。熟練者ですらブレイの方を強く見ると思いますよ~?」
「貴方とブレイさんでは真白に及ばない。念の為ですが、唯一真白に及ぶ可能性を秘めていたギルド長を封じておきたかったのです。そしてそれは正解でした。ギルド長は貴方に危害が及ぶなら自らの命は二の次で貴方を守るでしょうね」
「……」
「僕が殺された後、3人が真白と戦う場合に真白は貴方から狙います。そこで貴方は死んでしまうでしょう。そうなった場合、真白では怒り狂ったギルド長に勝てはしない」
今の真白はその力を理解できないから。
だからこそ、少し厄介であり一番弱いであろうヨウコさんから狙うだろう。
「僕であれば貴方を殺さず、ギルド長から倒します。その時点で真白は貴方達に負けません」
まあ現状だと僕が殺された時点で、僕としては負けなんだけどね。
「君は先程から何が言いたいのですか?」
「真白は通常のギルド長に勝てます。僕は貴方を使ってギルド長に勝てます」
「私には君の言いたい事が分からないです」
その悔しそうな表情、それが答えか。
まあヨウコさんの口から聞けるまでは止めないけど。
「ところで貴方から見て真白はどうでしょうか?」
「それを本音で聞きたかったのですか?」
「あまりいい方法ではありませんでしたね。申し訳ありません。正直に教えて頂きたい、貴方達3人で真白に勝てますか?」
「……」
「やはり真白はそこまで強いのですね」
僕の意見では無く、この世界の熟練者の意見を知りたかった。
そして僕の意見は正解であった。
全力ではない真白ですら、あの町では脅威となりえる。
「強いです。少なくとも私では足元にも及ばない程に」
これはあと少しだろうか?
いや、まだまだかな。
「ステータスに出てましたか?」
「彼女の魔力、質が高すぎるのですよ」
「貴方の魔力も質は低くないですよね?」
多分だけどね。
今日集まった人たちでの比較だから正確ではないだろう。
それでも、あの中で一番質が高かったのは分かる。
僕の場合は魔力を色で捉えられるので、濃ければ濃い程にその魔力の質が良いと分かる。
まあこれはここ数日で初めて分かる様になったことで、さらに魔物形態限定だけどね。
「貴方にも質が分かるのですね。それならば分かるでしょう?」
「私には知識がありませんからね。質が高い、それしか分からないのですよ」
「ごめんなさい。実は貴方達の戦闘を隠れて見ていた事があります。その時、彼女は適性の無いはずの魔法ですら高精度で使いこなしていました。それならば、適性のある魔法を使用されては足元にも及ばないです」
「謝る必要はありませんよ。貴方が見ていたことは2人とも知っていましたので。それよりも気になるのですが、真白は適性の無い魔法を使っていたのですか?」
「知っていたのですか? もう少し隠蔽系の魔法も鍛えないといけませんね。そして彼女はその時、全て適性の無い魔法を使っていました。それでいて私と同等の魔法が扱えるのですよ? 私が敵う訳が無いですよ」
ブラン先生!
『あの子は特別。本来ならばあの子は1系統しか魔法を使えない。それ以上は言えないわ』
ありがとう。
「よく知らないのですが、精霊族はそのような事ができるのでは? あとは神の加護の可能性は?」
「確かに精霊族ならば宿り主と同じ系統の魔力を使用することは出来ます。ですが彼女には1種類の魔力しか存在していません。なので、まだ宿り主が存在しないと考えています。次に神の加護ですが、本人ができない事はできるようになりません。コツや知識を授けてもらえる感じです」
知らなかった。
そしてこれで納得がいった。
不思議だったんだ、何故ヨウコさんの中に2種類の魔力があったのか。
そしてその一方がギルド長の魔力と同じに感じられたのか。
「そうでしたか。あと1つ、貴方は全てにおいて真白に負けているのですか? 予想ですが、火と氷は勝っているのでは?」
「……何故氷まで知っているのですか?」
「貴方は精霊族ですよね? そして宿り主はギルド長。ギルド長は氷が得意なのでしょう?」
少し情報を漏らし過ぎだよね。
まあいいけど。
「僕は真白以外に言うつもりはありませんので安心してください」
ブランとクリアは知らない。
『私は言わないわよ?』
そうだよね。
多分クリアも言わないと思う。
「まあ親しい人達には、既にバレていますよ」
まあ、僕がすぐに分かった程だからね。
親しい人は知っているだろう。
それにしても、宿り主って途中で変更できるのかな?
流石に生まれた時からギルド長を宿り主にするのは難しいよね?
『その通りよ。精霊族は宿り主を途中で変えられる。まあ決められはしないけどね』
そうなんだ。
条件、教えてもらってもいいのかな?
『……その人の中で一番大きな存在よ』
ありがとう。
さて、良い情報も聞けたことだから次に進もうか。
『透、その前に1つ聞いていいかしら?』
何?
『何故、彼女にこの話を振ろうと思ったの?』
真白とクリアとブランの3人があの町やこの世界で暮らしやすいように、ギルド長達に恩を売っておこうかと思っていてね。
そして丁度それを満たせそうだったからかな。
まず、ヨウコさんは力を求めている。
それは尾行の時に感じていた。
そして先程の言葉で確信した。
今回話しを振ったのはそれを確認したかったのもある。
次に何故、力を求めているか。
ここがまだ確定ではないかな。
ヨウコさんの口から直接言ってもらいたい。
そしてこちらを解決できれば、かなり恩が売れると思う。
今の予想だと、力は必要無いはずなんだ。
『ありがとう。私としてはそこに君も含めてほしいのだけどね』
「透さん、失礼な事を1つお聞きしていいですか?」
「私も貴方に失礼な事を言いましたから気にしないでください」
「貴方は真白さんの足手纏いになると感じたことはありませんか?」
きたか。
これはもう少しかな。
「戦闘ですか?」
「そうなりますね」
「何故、そう思われました?」
「貴方の魔力の質がとても低いからです。いくら他が強いとは言っても、魔力の質が低すぎるのは戦闘に影響が出ると思います。そして真白さんはあの魔力の質です。彼女に劣等感を感じませんか?」
これは……。
便利……なのかな?
それとも……。
まあ、今は置いておこう。
「一切感じません。そして僕は置いて行かれる事を恐れていませんよ?」
「……何故です? 何故分かったのですか?」
よし、今日はこれでいい。
強引に進めるほど切迫してはいない。
それどころか強引に進めると状況が悪くなる。
少しずつ、そして機会があれば一気に進めばいいのだから。
「貴方が力を求めていたのは気づいています。そしてその理由ですが、貴方は私と話していた時の自分の表情をご存知でしょうか? 僕は貴方を使ってギルド長に勝てます。そう言った時の貴方はとても悔しそうな表情をしていました。そこから想像し、かまをかけました」
「そんなに分かりやすかったですか?」
「偶然気がつきました」
嘘は言ってない。
尾行が無ければ気づけなかっただろうからね。
「……それならば安心です」
「その様子だと、本人に聞く勇気はありませんね」
「あったらこんな事してませんよ」
まあそうだよね。
「とりあえず、私とこの子は知りました。相談や愚痴を聞くことは可能です」
「……今日から愚痴ってもいいですか?」
「帰り道なら構いませんよ?」
「……分かっていて言っているのですか?」
「いえ、今日は本当にそのタイミングしかありません。帰った後はゆっくりと休みたいので」
実は結構ギリギリなんです。
「ごめんなさい。話せる相手ができて浮かれてしまいました」
「いえいえ。その気持ち、少しは分かっているつもりですので」
「ありがとう」
それにしても、異次元倉庫の条件はあれで合っていたのか。
これは最高の武器になるかもしれない。
使うのはまだ先だろう。
それでも、最後の一手として最高の武器となりえる可能性を秘めている。




