―――003―――
本日3話目です。
読み飛ばしにご注意ください。
「基本的にこの世界の生物は魔物を倒すことでも力を増して成長するの。これは倒した魔物が持つ魔力の一部を吸収しているからと言われているわ。特殊能力の種類が増えるのもこれに関係しているとされているわ。君なら毒生成ね。そしてレベルはその力の段階を数値で現しているだけよ。ここで気を付けてほしいのが、レベルはあくまで基準の1つという事よ」
基準の1つ。
このレベルでは高レベルでも、他の基準では低レベルに該当すると考えればいいのかな。
「それでいいわ。まあ高い方が良い事に変わりはないけどね」
それと魔物は多く倒せばいい、訳では無いよね?
先程の毒の説明から、数よりも種類が重要な気がする。
「それはどちらとも言い難いかな。種類だけを求めて数を疎かにすれば、それはそれで成長しない事もあるのよ」
つまりバランスが大事と。
「そうね。ちなみに魔物を倒すことに抵抗はある?」
理由があれば問題無いよ。
「理由ならあるわ。魔物は魂が転生する前に強い魔力に捕らわれた存在よ。倒して解放しなければその魂は転生できないの」
それは魔物として転生した事にならないの?
「正しい転生では無いわね。魔物であるといずれ魂が破壊されてしまうの」
それは……。
「だから魔物を倒すことは推奨されているわ。これは神から直接人に与えられた情報だから間違いないわよ。これで理由は問題無いかしら?」
魔物を倒した際に吸収するのはその魂では無いよね?
「それはあり得ないわ。君と同じように神に問いかけた人がいたのだけど、神はその答えを人に与えているわ」
ありがとう。
これで心置きなく魔物を倒すことができる。
ゲームだとしても理由の有る無しは大事だからね。
「ゲーム? まあいいわ。それで宿る魔物についてなんだけど、倒した魔物の種類によっては新たな力を得る場合があるの。吸収した魔力によって倒した魔物が持っていた力の一部を会得すると言われているわね。ただし、これは適性がある能力だけね」
適性次第か。
僕はどうなのかな。
「それは分からないわ。同じ魔物でも得られる場合と得られない場合があると言われているからね」
自分で見つけるしかないということだね。
うん、頑張ろう。
「さて、説明は終わったのだけど他に聞きたいことはある?」
形態変化は……何となく分かるからいいかな。
そうだ、形態変化して人や半人半魔の状態ではスキルはどれを使えるのかな?
「いいところに気が付いたわね。基本的に魔法は全形態で、武具召喚は人形態以外で使用できるわね。そして君の場合毒生成は毒袋がある魔物形態でしか使用できない」
ありがとう。
それだと戦闘時は魔物形態が一番いいのかな。
まあ状況によって判断しよう。
「さて、残り10分程か。ゆっくり休んでおくといいよ。辺りを警戒しているところ申し訳ないけど、この空間の安全は神が保証してくれているわ。この空間は一見森に見えても実際は神の力で隔離された空間になってるから」
チュートリアルの為かな?
もしかして10分経過したら空間が消滅して魔物が出現する森に放り出される?
「そうよ。だから今の内に休んでおきなさい。それとこの空間を出たら君の能力に関する事は既に聞かれたこと以外は答えられないと思うから今のうちに聞いておいてね。妖精を介しているけど、実際の返答は神が行っているからね」
おっと、それはそれは。
他に何か聞くことあったかな……思いつかない。
ならゆっくり休んでおこう。
「それがいいわ。ちなみに世界の基本的な知識についてはこの空間から出ても応えられるから安心してね」
分かった。
「ところでさ、君が先程から不思議な事を言っている気がするんだけど、聞いていいかな?」
何を?
「キャラクターやゲームとかだよ」
気にしないで。
演出を考えなかった僕が悪い。
「嫌! これはかなり大事なことだと思うの。君が、いや、君達が勘違いしている気がする」
……ごめん、話すよ。
それと君達?
他のプレイヤーにも関係あるの?
「関係あるかもしれないわ。ちょっとこの世界に来るまでの事を話してもらえないかな?」
それはこの世界に来ることになった理由でいいのかな?
「それでいいわ」
分かった。
あの日学校で参加募集のチラシを見てから仮想体験装置の体験学習に関係していそうな事を全て話した。
どうしても、ブランが演出で言っているのだとは思えなくなってしまったのだ。
それに、真白にも影響があるかもしれない以上話しておくべきだ。
勿論、話した以上は納得できるだけの答えはもらうつもりだ。
「何てことなの……。話が違うじゃないの……」
話しが違う?
「少し待って頂戴。他の神にもこの事を伝えないと」
他の神にも伝える?
これは思ったよりも深刻な状況なのか?
「お待たせ。ここから先は神の言葉と考えてね」
分かった。
「まず、君達はゲームに参加しているつもりでいると思うけど、実際は異世界に転生したと考えてほしい」
異世界に転生……。
待って。
死んだらどうなる?
「……死ぬわ。君達が思っているような特定地点での復活やその場での復活等はあり得ない」
それは……。
「真実の死よ。再度生き返られるとは考えないで」
それはあちらでも?
「……ごめんなさい。私達の問題に巻き込んでしまって」
それはいい。
それよりも、あと数分で全参加者が未知の世界へ放り出される……。
他のプレイヤーの位置は分かる?
「同じ神を信仰している人なら分かるわ」
真白を!
「……ごめんなさい。名称、真白は同じ神を信仰していない」
別の名前を付けた……こちらの名前でしか探せない?
「その通りよ」
それならば別の名前を付けている可能性を……いや、時間が無い。
他の方法を。
それに真白は僕に分かりやすいように真白と付けているはず。
……転生者の初期位置は近いの?
「条件があった場所からランダムで選ばれているわ。だから遠い可能性が高い」
範囲は広い?
「広い」
最後に僕が行けない場所の可能性は?
「最低でも人形態ならば生存可能」
それならいい。
探そう。
「待って、全ての転生者は町の近くの弱い魔物しかいない位置にいるわ。だから安心して」
それでは安心できない。
左針、右針。
早速だけど、僕に力を貸してね。
君はどうする?
「私は君のサポート妖精。君に憑依することができるから気にしないで」
死ぬかもしれないよ?
「どうせ君が死ねば私も消えるから。君の選んだ道を進んで」
……ありがとう。
あと1分くらいかな?
「あと1分ね」
できることは全て。
異次元倉庫は魔力を消費するよね?
「その通りよ」
魔物形態の維持や、飛行、毒生成には魔力が必要?
「君、ハチなら必要ではないわ。ただし変化時には使用するから気を付けて」
ありがとう。
それならば……可能性は上げておきたい。
異次元倉庫をできる限り分割。
そして各部屋へ接続と切断を繰り返す。
突然、目の前にいたブランが消えた。
『透、憑依させてもらったわね。これで空間が消滅した瞬間に動き始めても問題無いわ』
その声は、まるで直接理解しているかのように聞こえる。
それでも、憑依前のブランの声と違いなく聞こえる。
ありがとう、ブラン。