表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

忘憂

作者: 高野 夕夏

 何かが、あったわけではないんだ。

 ただ、なぜだろう、少し話がしたくてね。

 君は、冬が好きかい?

 はは、そうか。嫌いか。

 …うん、私は冬が好きでね。凍えるような寒さも、指先の痛くなるような冷たさも、なぜが私には「ちょうどいい」気がするんだ。

 雪が降るのもいい。松の雪下ろしをするのも好きなんだ。

 それに、空気も澄むだろう?月が、綺麗に見える。

 冬の風を感じながら、雪を見て、月を見て、酒を呑むのも好きだ。

 熱燗?いや、冷酒かな。酒が温くならないのも冬のいいところなんだ。

 「酒は忘憂の徳」ってね。ん?曽我物語だったかな。

 彼は、酒は忘憂の「友」って言ってたっけ。

 聞き間違えか何かだろうけど、私にはそっちの方がしっくりきてね。

 盃を濡らす日本酒でも、グラスに揺れるジンでもいい。飴色のスコッチでも、壜のままのスタウトでも。

 忘れたい、忘れられない、やっぱり忘れたくない、忘れてしまうのは悲しすぎる。

 そういうことも、こういう狭間のような時間にはついと思い出してしまうだろう?

 思い出させて、それでも酒は・・・慰めて、幾度ともなく忘れさせてくれる。

 この厳しく優しい友人と付き合う時間は、私にとって大切な時間なのさ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ