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第20話 ボウリング後のカフェ

 四人目は妹原だ。ボウリングが初めてなので、上月から投球フォームを教わってからの投球だ。


 しかし教わった甲斐もむなしく、一投目はガーターで、二投目がかろうじて三ピン倒しという可愛い結果だった。


「ボールがまっすぐに転がってくれなくて」


 戻りながら妹原は恥ずかしそうに言ってくれたが、いやいや、女子はこのくらいが丁度いいんだよ。


「だいじょうぶだよ、雫。気にしないで」


 上月も妹原を優しく励ましているが、間違ってもこいつのような野獣系女子になってはいけないぞ。


「次は弓坂の番だぞ」

「あっ、ほんとぉ?」


 アンカーは弓坂か。山野に言われるまで気づいていなかったみたいだが。


 しかしおっとり天然系の弓坂はクラス切っての不思議女子だから、ボウリングの実力は未知数だ。


 六ポンドのボールでさらっとストライクを出して、「わあ、全部たおれちゃったぁ」となったら末恐ろしいことになるが。


「あ、失敗しちゃったぁ」


 コロコロ球で二投ともガーターとは……弓坂、さすがだ。


 そんな感じで実力の差が極端に離れていたが、ジュースを賭けたりしていないので、ゲームは和気あいあいと進められた。


 六フレームが終わった時点で、上月と山野のスコアはすでに百二十を超えているが、なんだよこのスコアは。


 しかもよく見ると、どのフレームもストライクとスペアばかりだ。お前たちはプロ志望のアマチュアだったのか?


「あんた、なかなかやるわね」

「そういうお前もな」


 当人同士は俺の後ろで不敵な笑みを浮かべ合ってるし。もうついていけないな。


 対して妹原のスコアは、非常にほのぼのした感じだなあ。今のスコアが三十八だから、トータルできっと五十前後だろうな。


「ボウリングって、難しいね」


 そう言って妹原は控えめに笑ってくれたが、いやだから、このくらいが丁度いいんだって。


 後ろで火花を散らしている阿呆二名のことは無視してくれ。


「ああ、またガーターになっちゃったぁ」


 残念そうに肩を落としながら戻ってきた弓坂の現在のスコアは……四。先に断っておくが、一フレームで倒れたピンの数ではない。


 各フレームの結果のほとんどがガーターだが、数箇所で器用に一ピンだけ倒しているのだ。これ、ある意味上月たちのスコアよりすごいんじゃないか?


 しかも目を凝らしてみると、一ピンだけ倒すのが明らかに困難な、後方の九番ピンだけを倒しているスコアがあるが、これは一体どうやって倒したんだ?


 細かいことはさておき、ボウリング中に妹原や弓坂といっぱい会話できたから、よしとするか。



  * * *



「ああ、楽しかった!」


 ボウリングが終わって、また街をぶらぶらと歩く。先頭を行く上月は両手をあげて、かなり上機嫌だ。


 ボウリングは結局上月が勝利したようだ。さっきスコアを見せてもらったが、山野は後半のミスが目立って、結果は百九十二。対する上月は、最後のフレームで脅威のターキーを繰り出して、トータル二百十三。


 後半のミスといっても、最後のスペアがとれなかったとか、一般のプレイヤーではミスと思わないようなものだ。もうなんていうか、勝手にしてくれ。


「わあ、麻友ちゃん、すごいねえ」

「へへん、スポーツだったら簡単には負けないわよ!」


 弓坂に褒められて、上月は得意満面だな。頼むから、そいつをあまり調子づかせるなよ。


「まさか上月がここまでやるとはな。あんなに負けるとは計算違いだったが、どうやらいい好敵手ライバルに巡り会えたようだ」


 山野もさっきから俺のとなりでブツブツとつぶやいているが、気をつけろよ。趣旨が変わっているからな。


 スマートフォンの時計に目を落とすと、すでに三時を過ぎていた。時間が過ぎるのが早い気がする。


 クラスの女子と遊べるのがこんなに幸せなことだったなんて、知らなかった。家でゲームばかりしている場合じゃないな。


 欲を言えば、妹原の携帯電話のアドレスまで入手したいところだが、それはさすがに難しいだろう。


 今日は初日だから、仲良くなれただけでもよかったと思った方がいいだろう。


「次はどこに行くんだ?」


 駅前に戻ってきた頃に山野に尋ねてみると、


「この後は特に何も決めていない」


 悪びれもせずにさらりと言い切りやがった。


「今日のメインはボウリングだったからな。後は適当に時間をつぶすだけで俺はかまわないが」


 つまり、お前が個人的にボウリングをしたかったから、急に集まろうとか言い出したんだな。


「おいおい、帰るにはまだ早い時間だぞ。どうすんだよ、これから」

「カフェとかで適当に時間をつぶせばいいと思うが」


 こいつ、本当に何も考えていないぞ。


 俺が露骨に迷惑そうな顔をすると、山野がまぶたを一ナノメートルくらい細めて、


「なら、八神がプランを立ててみるか? ここでばしっと決めたら、妹原の気持ちがぐっと近づくかもしれないぞ」


 いや、それは技術的に無理だ。


「まあ当初のプランでも、ボウリングの後は適当にショッピングでって、お前が言ってたからな。それでいいんじゃないか?」

「じゃあ商店街の古着屋にでも行ってみるか? あそこは前から行ってみたかったんだが」


 というわけで、古着屋で小一時間を費やして、最後はカフェで締めくくることになった。


 しかしカフェなんていうしゃれた店は一度も来たことがないので、オーダーのシステムとか全然わからないな。


 それ以前にエスプレッソとカプチーノの違いがよくわからないんだが、俺はどっちを注文すればいいんだ?


 上月がカフェモカを注文していたので、流れで同じものを注文すると、「真似するんじゃないわよ」と言いたげな目で上月が見てきたが、いいだろ別に。メニューが偶然重なったことにしておけば。


 そんなやつがいるかと思えば、


「わ、ヤガミンどうしよう。あたしはどれを注文すればいいの!?」


 後ろの弓坂は顔を青くして焦っているし。


 弓坂の注文恐怖症はカフェでも発症するんだな。スマートフォンのメモ帳に残しておこう。


 すると弓坂の後ろに並んでいた妹原も、ほっとしたような顔つきになって、


「実はわたしも、カフェに来るの初めてだから、よくわからなくて」

「あ、じゃあ、いっしょだね。あたしたち」


 なんだ、不安なのはみんないっしょなのか。


 メニューの中ではカフェラテがきっと一番飲みやすいんだろうから、それをふたりに伝えてみたら、「じゃあ、カフェラテにするね」と弓坂が喜んでくれた。妹原も同じメニューにしてくれるみたいだった。


 これで一ポイントは好感度があがったかな。

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