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“影の騎士”の物語  作者: 夜夢
第七部 “影を討つ影”
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第五章:追い詰められし……

「ふう、危ない、危ない――」

 クリックは、チュザーラ邸の近くの路地裏で、漆黒の右腕を手にそう呟く。

「……これが見付かればいろいろと厄介なことになるっていうのに……シェアナさんは――」

「何が、厄介になるって言うのかな……クリック?」

 次の瞬間クリックは、恐怖にも似た驚きの表情のまま振り返る。あの黒騎士の襲撃をポルたちに “言葉送り” で報せて以来、“姿隠し” の魔法をかけたまま一部始終を見、人知れず魔鎧の腕を回収してここまで来た筈なのに――

「……!」

 振り返った先に立っていたのは……

「リュ、リュッセル――」

「……やぁ、クリック。僕としては、その腕とシェアナさんとの関係に興味があるんだ…………教えてくれない?」

 笑みを浮かべて歩み寄るリュッセルに対し、クリックはただ目を見開き凍りつく。

「……さあ、話して貰おうか。」

 静かにそう言った彼の瞳は、普段の人の瞳ではなく、針の如く細まった竜の瞳へと変貌を遂げていた。


 その時 “影の騎士” は、夜闇に紛れて街を離れ、郊外の目星を付けていた廃屋に入っていった。

 シェアナは魔鎧を脱ぎ去ると、その具合を確かめ……渋面を浮かべた。

「……これは――」

 その時、階上よりポルが駆け降りてきた。そして、彼女の見ているものを見て、同じように痛ましい顔になる。

 “影色の魔鎧” の右腕は悲惨な状態になっていた。飛槍は肘関節部に被弾したらしく、その部位は完全に大破し、上腕より無残に千切れた鋼線や薬液管が露出している。無論、下腕部は喪われていた。幸いにして、魔鎧の腕部は完全な機械腕であり、シェアナ自身には怪我はなかったが。

「……これは、ファルト老でも治せそうにないかな――」

 そう彼女が呟いた時、廃屋の扉が開いた。不意の出来事に驚き、彼女は振り向く。

 そこに立っていたのは、騎士ショーネル=ヴァルターであった。



 今回にて第七部“影を討つ影”は終了となります。次回より第八部(最終部)“伝説に消えし影”が始まります。

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