第六章:騎士を追う者
今回の話は短めとなっております。
闇に包まれたさる一室。跪いているのは侍女に扮していた密偵の女性。彼女は静かにあの事件を報告する。
「そうか。……ボルラも存外使えん奴だ。」
彼女の報告を特に感慨もなく聞いていた部屋の主は、そう言って手にした杯を呷る。その様子を彼女は無言で見詰める。
「…………」
「奴の正体を探れ、場合によっては殺しても構わん。」
部屋の主の言葉に、密偵の者は軽く礼をして、部屋より消えた。
ボルラ=ホズボーン卿の急死はあまりに急で、夢の如き中で起こった為、真相を把握した者は少なく、様々な憶測が飛んだ。
しかし、そこに “影の騎士” の介入の事実は伝えられていった。
それとともに、一つの推測が確定したものとして伝わっていった。
即ち、“影の騎士” とは戦死したシェユラス卿の変わり果てた姿である、と。
「……では、行って参ります。」
街道に立つ白きドールホースに騎乗せし騎士、ショーネルは王都フォーサイトに振り向き、そこにいる王と伯父に別れを告げる。
彼は、伯父にして直属の上官であるドレイル卿より与えられた密命の為、街道を行く。
……ボルラ=ホズボーン急死の報が伝わったのは、ショーネル=ヴァルターが王都を発ったその翌日であった。
今回にて第二部“幽霊騎士”は終了となります。次回より第三部“陰の騎士”が始まります。




