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「平手のハツカ」

ボーイッシュキャラが登場します。

「セトリア先生?どうしたんですか?」

 セトリアは、質問され少しだけ目をハツカに向けた。

 黒い瞳が何か薄暗い、それをじかに見たハツカは、少しだけ体をこわばらせた。

 しかしセトリアは、また目をまたつむって。

「服も汚れていない、リボンもきちんと結んである、それから髪も整え靴も踏まれた

跡は無い」

 セトリアは淡々とハツカの先ほど見た姿を言葉で表現していく、それを聞いたハツカは目を見開いて自分の姿を見た。 本当にその通りである。

「はい……」

 ハツカは多少髪を触りながら、セトリアから煎浬えと視線を変える、少し笑って。

「どうかな?私の格好?」

 質問をして、軽いポーズをとった。

「ん、可愛いね」

「ありがとう!」

 煎浬は姿をじっと見て直ぐに答えてくれた。

 優しく微笑んで彼はそう言うと、それに続くようにグラサンの奥の冷たい表情でハツカを見た。

「ふむ、やはりいつもお前は、姿だけは優等生だな」

 睨むような表情で、皮肉交じりに言い放った。

「あ、はい……」

 ハツカは少し戸惑うような表情をした、ハツカはその後にもう一度自分の格好を見た。

「……服、いつ綺麗にしたっけ……?」

 ハツカは小さな声で呟き、そして直ぐに立ち上がってセトリアに一礼すると

セトリアはさっさと行けと言い放ち、それ以上は沈黙を守った。

「行こう、ハツカ」

「うん、マント忘れないでね!」

 そこで二人は思い出して、直ぐに走って体育館の方へと走っていった。


 そして何事も無く、始業式は開始された。

 ハツカは急いで開いているイスの前に立つ、その後をついていくように、ハツカの立っている場所から

斜め左側の、一つ、ぽつんと開いているイスの前に煎浬は立った。

 生徒達は全員肩から格式があり、古風が漂っていそうな木製の鎧のついた

洋風のマントを羽織っている。

 まるでどこかの世紀末の格好だと思われるが、これが此処では普通の正装であるらしい。

 ハツカは黄色のマントを、そして煎浬の方は赤いマントを羽織る他の生徒の中、唯一黒いマントを羽織っている。

 それからしばらくして、生徒会長らしき人が台に立ち、全体に挨拶をした。

 そして、これはどの学校でも同じだろう、つまらない校長先生の朝の挨拶が始められる。

 しかしどの生徒も顔を背けたり、眠くてもあくびなどは絶対にしないで話を聞いている、もちろんハツカも。

 我体は確かに大きく、威厳のある風貌をしていなくも無いが怖い校長には見えない。

 でも、校長先生の話は始めてからかならず1時間は続くのだ。

「では……これにて、始業式は終了です、詳しいこれからの話は……各教室に戻って担任から聞くように……」

 校長は話し終わると、生徒会長を引き連れて舞台の裏側へゆっくりと去って行った

 姿が見えなくなると、生徒達は軽くゆるんだ表情になるのである。

 

 



 そして今年も1人の遅刻者も無しの、極めて良い滑り出しで新学期が始まった。


 




 始業式が終わり、生徒達はガヤガヤと騒ぎながら、ほぼ全員が足を擦っている。

 ロッカーにある専用の壁掛けにマントをかぶせ、長い廊下をそれぞれのクラスへと歩いていく。

「やっぱり、校長先生の話って長い……」

 ハツカは軽い文句を言いながら自分のクラスへの道をひたすら歩いていった。

 3年である煎浬は最下層の教室のため、ハツカとは階段を登るあたりで別れた。

 そして少しづつ、2階までの階段を上っていく。

「それに……朝っぱらから走ったもん、疲れの上乗せだよ……」

 小さなため息を吐き、ハツカはあと少し歩けばある

自分のクラスに続く角に、一番短かい感覚でもたれながら曲がっていく。

 そして、ほぼ全員が着席しているクラスの中を少し覗いて確かめた。

「あ……まだいない……」

 ハツカは、誰の事かは知らないが軽く呟き、少し塀を使いながら何とか直立して

クラスの中に入ろうとした。

「ぉお、クラスのマドンナよ、おばあちゃんみたいになってどうしたのさ」

「あ……!」

 すると、入ろうとした扉の向こう側面の方から、明るく少し低い女性の声がした。

「クラスのジャッキーをお探しかい?」

 そして、扉の側面から少しボーイッシュな感じの、肌が浅黒い女の子が登場した。

「ずるいよ、私が驚かそうと思ってたのに!……それに何時から私達、ビックスターになったのよ」

 ハツカはその彼女に軽くものを言い、少し唇を前に突き出して拗ねたような表情をした。

 そんな表情をするハツカに、彼女はストレートヘアーを束ねた輪ゴムのポンポンを触り

笑って受け流す。

「いいじゃん!カッコいいし!」

 そんなラキに諦めた表情をして、ハツカは話題を切り替える。

「でもラキ、今日は色々大変だったんだよ」

「ふ~ん、どんな感じに?」

 ラキと呼ばれた少女は、さっぱりした表情で質問をして、ハツカは今日の朝あったことを重要な所をかいつまんで話した。

「て、感じだったんだから!」

 そこまで言ってハツカはため息をついた。

 歩きながら話したため、その頃には二人とも席についた。

 しかし、何故かラキは自分を見つめて黙ったままで、何故か返事や感想を返してこない。

「あれ、もしかしてダメだったかなやっぱり……」

 それを呆れられていると取ったハツカは

反省したような表情をして、ラキを見て軽く顔をかくした。

「まぁ……遅刻だもんね、冗談になるような話じゃないね……ごめんなさい」

 軽く頭を下げて謝った後、ハツカはラキから2席隣にある、窓枠の中の景色を見た。

 外は少しだけ曇りだしている、朝来たばかりの晴天はどこかへ去ろうとしているようだ。

 ハツカは思いを馳せる様に机に肘を立て、ぼぉ、と外を眺める雲が少しづつ風に流れていく……。


 

「あ、いやいや」

「……え?」

 いきなりハツカに明るく垢抜けた声と表情で、何かが分かったような表情で

ハツカを見た。

「煎浬が好きなのは、私もあんたもお互い様だもんねぇ」

「え……あぁそれで!あんな顔したんだね……嫉妬したの?」

 

「いいや、それに私も煎浬君と歩いた事あるし」

 少しだけラキは、その時の感じを軽く手振りでジェスチャーした。

「な、なら黙ったりしないでよぉ!驚くじゃん!」

 そこまでやられて、今度はハツカが頬を膨らませて言い返す。

「へへ、ごめんごめん忘れててさ」

 ラキは直ぐに陽気に笑い、その言葉を軽く払拭した。

 ハツカはアニメならば、頭からしぶしぶと渦巻きを出すような顔をして

 少しだけ肩を落とすと、窓から目線を外して前方を見た。


 何故か目前に、シワすらも直立した黒色のスーツが見えた。

「………………セトリア先生っ!?」

 ハツカはこのスーツが直ぐに誰なのか分かり、驚いて顔を上げた。

 目の前に立つのは、先ほど校門で遅刻者監視をしたいた国語の先生セトリアだ。

 グラサンを掛けた下から見ても長身と分かる細い体系をした男。

 瞳はグラサンごしのために、どこを見ているかもハツカには分からないが

久しぶりの事で椅子に背中をピッタリつけるほど驚いてしまった。 

 横から小さく、何かをぶつけたような音が鳴る。

「……?」

 ハツカは直ぐに音の鳴った横を見ると、セトリアが先に口を開いた。

「どうした、朦朧荒黄もうろう あらき君?俺に何かついているか?」

 そこには、無理やりイスから立ち上がったのか、イスは大きくずれており

 ラキは瞳孔が大きく開き、セトリアの顔をジッと凝視して固まっていた。

「ラキ……?」

 少し不思議な顔をして、ラキの顔色を見るが。

 しかし直ぐにラキは、ハツカの声を聞くといつもの陽気な顔に戻った。

「あぁ、セトリア先生怖いから……驚いた」

 そう言ってラキは頭の後ろに手を回して、直ぐにイスを戻して席につく。

 その後、ハツカはちらりとセトリアの方を見た。 いつもと変わらない、つまらないくらの無表情。

 そしてセトリアは、淡々と言葉を発した。

「そうは見えないぞ朦朧、お前何かしたな?」

 セトリアどころか、前の席にいた数人の男子生徒も、恐怖の色を浮かべて後ろ見ている。

 全員セトリアの顔色を伺っているのだろう、表情など分からないだろうが。

「だからしてないよ、何も」

「荒黄、それは嘘をつくのが上手い人間の言う言葉だ、お前ごとき小娘が口にして良い発言ではない」

 セトリアはきつくラキに言い放った、それは効果覿面だったのか少しずつラキの顔の表情がわなわなと変化していく。

「あの……セトリア先生、ラキは……」

 そこまで言って一度ハツカの方を見る、ハツカはそこで黙った、何も言えない。 

 どうしてもセトリアに対して文句を言う事が出来ないでいる。

 しかし理由はそれだけでは無いだろう、ラキは自分以上に何か不味い事をしたのか

とゆう、好奇心。

 そしてセトリアは直立を保ちハツカの席から離れると、ラキの席の前で止まった。

 軽く腰を下げ、何かをラキの耳に何かを呟く。

 ラキ本人以外には何を言ったのか上手く聞き取れなかったが、薄くハツカの耳に

セトリアの声が響いていた。

『……を言わなければ、私がバラす事になるぞ……』

 何を……?ハツカが薄く呟いたその瞬間。

「……本当に何もしてないって言ってんだろう!!」

 ついにラキは勢いよく立ち上がり、セトリアを払いのけ叫んでしまった。

 その瞬間、今までずっと下ろしていた手を、セトリアは大きく振り上げた。

「あ……っ!!」

 ハツカの視線に、片方の頬を青くした男子生徒達が視線をそらすのが見えた。

 何をしようとしているかは直ぐに理解できる、この学校の制度1管『担任に反抗するものは女でも処罰を下す』この生徒手帳の上記にあった言葉を思い出す、そしてこの場合その処罰は平手打ちとゆう事も。

 一体、何がラキにあったのかは知らない、でも、どうしても話したくない事なんだと

ハツカは内心理解したのかもしれない。

 次の瞬間、勢いよくラキのほう目掛けて平手がとぶ、それはまさしく一瞬の出来事。


 そしてハツカは反射的に目をつむった、どうする事も出来ない。

 ただ、『ラキを助けて』そう思う事しか。

 







 

 一時の騒がしい静寂の間、するはずの音がしない。

 

    


 





 ハツカは少し不思議に思い、ゆっくりと目を開けた。 そこに映ったものは、この展開ならば、絶対にありえない光景。

 セトリアとラキの動きが、スローモーションのようにゆっくりと動いていた。

 

「え……」

 しかし、他の周りの生徒を見ても、誰も気がついていない様子であった。

 ハツカはただ一人、その不思議な空間の中で突っ立っているような。

 ハツカは手だけを強引に伸ばして、恐る恐るセトリアの腕を触った。

 しかし本当に触った手は、かたつむりのようにゆっくりと動いている、だが感触は変わらない。

 直ぐに手を引っ込めるが、セトリアが、ラキが。 お互い自分に何の反応も示さない。

「これって……」

 だがこれを見たハツカは軽く後退した、だが驚く前にハツカはちょっとだけ。

 この光景とシュチュエーションを目を細めて見ながら、ハッとした表情をする。

「もしかして……」

 何かに気がついたハツカは、セトリアの方を伺い

ゆっくりラキの方まで歩くと、腕を掴んで少しずつ後ろにひきずっていく。

 スローモーションになっていても自分がもてば動きは普通のようだ、そして鍛えられた

少し重たい体を約五cm後ろに下げるのは少し大変なようだ。

「お願いだから、まだ戻らないでね……よいしょ!」

 そして何とかラキの移動を終えると、ハツカは軽く駆けて、直ぐに自分の元いた位置に戻った。

 そしてハツカが先ほどのポーズに戻った同時に

風を切る音がハツカの真横で鳴る。

「……うわ!」

「………………っ!」

 二人の動きはその位置のまま、スピードも動きも時間がスローになる前の状態に戻った。

 しかし、一つだけ変わった事がある。

 ハツカが見てみると、ラキは目をつむったまま突っ立ち。

 セトリアは大勢の生徒達の前で、平手打ちが空振りをしていた事だ。


「ひどいよ先公!てあれ……?」

 ラキは叫ぶが何もされていない事に気がつく、頬を触った後

 ただラキは、自分の手の平を見つめながら呆然とした。

「上手く、いった……」

 ハツカは小声で呟いた、少し唖然とした表情をして。


 そして一瞬の空気の間が、セトリアの手の平を覆った。





 



 




 その直後、授業のチャイムが鳴り響いた。

ついでに男子生徒の場合はグゥパンチです

以上「平手のハツカ」でした

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