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「羞恥のハツカ」

二人の急接近、煎浬の言葉に何を思うか

ハツカに切り替わっていた視点は、再び元に戻る。



 校門には、緑色の繊細な細工が施された威厳を漂わせる、中世風の巨大な門。

 それは横に大口を開いており、何かを待つように2本の線の間に佇んでいる。

 そして、門が作り出した境界線の上に、一人の男が腕時計を見つめて時間を確かめてた。

 

「時の間まで後9分」

 

 この時間までに遅刻志願者達が一人でも欠ければ、この男はその者達だけならず

ちゃんと登校してきた者まで連帯責任で罰するつもりでいる。

 何故なら彼は国語の教師だからだ。 時間に厳しく、この学校の「時間守護」役である男は

生徒の登校人数をきっかり調べてあるとゆう。

 そして今日は、夏休み明けの始業式の日である。 再び男は時計を確かめた。

「くそ……これはヘタをしでかせば私もクビ決定だな……」

 そして男が数えた結果、今年の遅刻志願者の数は、1200人だったとゆう。

 しかもその中には、最優等生の煎浬も入っていた。

「いや……本当に首にされるな」


 同時刻、煎浬とハツカは延々と続いていく、灰色の道路を黒く横断していった。

 長距離を得意とする煎浬はまだ余力を残している、しかし。

 走ると決めた当の本人は、疲れ果ててもう走る気力すらも失いかけていたのだった。

「…はぁ……足ガクガクだよ、もう走れない……」

 ハツカは呟いて、左にヨタヨタ歩き、ガードレールに持たれかかった。

 それを見た煎浬は、困ったように微笑んだ、しかし時間は星のように止まらない。

 それを分かっていても、少し煎浬のペースに合わせすぎたようだ。

 車の音は現在しない、すると煎浬はあたりを少しだけ見回しだした、一体何をしているのか

ハツカにはよく分からなかった。 そして、見渡し終わると煎浬は少しずつ極力真面目な顔で

彼女に近づいていく。

「え……あの、ちょっと、まって……人がいなくても何か」

 何となく察して、慌てるように言葉を口ずさむが、ついに煎浬はハツカの前でしゃがんで。

少しボサボサの髪の中の顔を覗いてきた、もはや鼻と鼻がぶつかってもおかしく無いくらいの距離に。

「あ、あの……」

「自覚してる、俺は学校の人気者だから、こうゆう時にしか出来ないんだ」

 細く綺麗な声で俺口調で喋り、ハツカの口に風が吹き込む、きっとこれがさらに女子学生の人気を呼んでいるのだろう。

 しかしそんな事は関係なく、意味心な言葉を呟くと、急に言葉を紡ぎだした。

「俺の願いを聞いて欲しい、君は俺がいれば何でもできるよ……それはね」

そして顔を、ハツカの髪の中に顔が入るくらい近づける。

「あ……のぉ……」

「俺の事が、好きだから」

 甲高き喜んでいるともとれる悲鳴が上がった。

ガードレールにもたれかかったまま、顔を熟したイチゴのように赤く染め、前に突き出した手を

上下に振る。 直ぐに煎浬から視界を外した。

「はぁ……ななんなな何でぇ?私は貴方の事……別に」

「え……もしかして、好きじゃないの?嫌いな部類だった?」

 煎浬は、それは当然の常識なのにと言うかのように、首を傾げてキョトンとした顔をする。

「な……!」

 まるでハツカの発言の方がおかしいかのようだ。 しかしハツカも考えは曲げれない。

勢いよく立ち上ると、今度はハツカの方から煎浬に接近して。

「もう、貴方の事が嫌いじゃない! でも、いきなりそんな事言われたらほとんどの女の子は……!」

「君は、他ののように、俺に簡単に好きとは言わないんだね」

「え………………それは」

 その瞬間、少し気が登ったのだろう、ハツカは妄想を膨らませて考えてしまった。

 何を考えているかは分からない、でも何故か、頬をピンクに染めて俯いている。

 けれど、直ぐに煎浬は微笑んでこう言った。

「立てたね、つまり君は俺の事が好きなんだ」

「だからぁ……え、本当だ」

 ハツカの足からは、先ほどまで感じていた疲労が無かったかのようだった。

 どんなに足を曲げても動かしても、疲れの一つも感じさせない。

「もしかして……これが……」

一瞬ハツカは、本当に愛が起こした奇跡なんじゃと小さな声で呟いた。


「さぁ、行こう!」

「……わっ! あの!」

 視線をずらしてぶつくさ呟く彼女の手を優しく持って、今度は煎浬がリードして走りだした。


「大丈夫だよ、もう逆走はしないから」

 心配そうな彼女を見つめて、優しく微笑む煎浬。

 片思いの彼と、今こうしているのは自分だけ、その事実が此処にある。何とか隠しながらも、ほどけた顔をしている。

 頭の中は本当に少女漫画の主人公になった気分でいるのだろうか。

 でもその後、ハツカはきっと、ある重大な事に気がついてくれるだろう。

「はい、分かりました!」

 そして、二人は目前に迫る学校のゲートに向かって、ただひたすら走っていった。







 しかし、遅刻までの残りは後5分。

それはただの御まじない、それから遅刻話は続きますよ

以上羞恥のハツカでした

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