9 アオアの花
依頼ボードを見てみます。
「1ランクの依頼、1ランクの依頼。んー、あんまりないね」
「やっぱ1ランクだからなあ」
「スライムコアの納品、はたらくアリの卵の納品、カーラス退治。んー、どれがいいと思う?」
「私達キャバ嬢だから、モンスターを倒さなくてもできる依頼がいいよね」
「あ、じゃあこれはどう。やくそうじゃなさ草の納品。これなら葉っぱつむだけだし、簡単じゃない?」
「やくそうじゃなさ草。聞いたことがある」
「知っているのかマトバ!」
「たしか、ダメージを与える効果がある草よ。大きな刺激を与えると爆発するから、取り扱いに注意だったはず」
「え、爆発するの、嫌!」
「そうね。じゃこれも危ないから駄目か」
「あ、これなんかどう。アオアの花の納品!」
「花なら、危険とかないよね」
「そうね。けど、確か何か注意が必要だったような」
「花だから大丈夫だって。きれいだし。私見たことあるから見つけられる!」
「じゃあ、その依頼を受けよっか」
「まあ、それでいいかも。だけど、何に注意するんだったかしら」
ひとまず私達は、アオアの花納品の依頼書を持ってアーミットの元へ戻った。
「アーミットー、私達、キャバクランニングエンジェルスはこの依頼を受けます!」
「ああ、アオアの花ね。んー、ま、たぶん大丈夫でしょう。いいわ、頑張ってね。はい、依頼を受けた証拠のハンコ」
「ありがとうございまーす」
「それじゃあ、頑張ってね」
「はい。ところで、なんでたぶん大丈夫なんですか?」
「教えてあげてもいいけど、本来冒険者は下調べもする知恵も身に着けないといけないわけだから、ちゃんと情報量もらうわよ?」
「じゃあ、いってきまーす」
「はい、いってらっしゃい」
こうして私達は、アオアの花を手に入れるために町の外へくりだすことにした。
「アーオアー、アーオアー、どーこにー咲くー」
「わーたしーの近くにー、さーいてーておーくれー」
「どうする、手分けして探す?」
マトバのその提案が、魅力的すぎる。
「そうね。じゃあ、あ!」
ここで私達の前に、はたらくアリが現れた!
「ふたりとも、戦闘だよ!」
「合点承知の助!」
「ヒート、アーップ!」
私達は鞭を手に、ビシバシはたらくアリを叩きのめした。
戦闘終了後。
「皆、キャバクラッシュに遊びに来てね!」
倒したはたらくアリはどこかへ去っていった。やっぱりモンスターって、皆体力あるなあ。
「それにしても、手分けして探すのは無理っぽいね。今みたいにモンスターに襲われたら大変だもん」
「そうねー。じゃあやっぱり、地道に探すしかないか」
「今日が駄目なら、明日、明後日も続けるしかないかしら?」
「たった一つの依頼に?」
「そう考えると、効率すごく悪い気がする」
「受ける依頼を間違えたかしらね?」
ちょっとばっかし不安をいだきながらも散策を続けると、そろそろ帰ろうかなあっという時に、アオアの花畑を見つけた。
「やったー、アオアあったー!」
「これだけあれば、ミッションコンプリートね!」
「早速つみましょう!」
私達は喜び勇んで、三人で一斉に別々の花をつかんで引き抜く。
すると、花の下の根っこが、なんか宇宙人みたいになっていた。
それと、目が合う。
めきょっ。
私達は思わず、引き抜いたアオアを地面に押し付けた。それで宇宙人が地面に押し付けられ、ひしゃげる。
「なにこれ、なにこれ、なにこれ!」
「私ちょっとこれ軽くトラウマなんだけど」
私は慌て、マイミはもう片方の手で額をおさえた。そしてマトバがつぶやく。
「思い出したわ」
「ナイスマトバ。でももうちょっと早く思い出してほしかった」
「アオアはモンスターなのよ。地面の下で成長して、大きくなると」
マトバの言葉の途中で、いくつかのアオアが自分から動き出して、その下の大きめ宇宙人達が複数現れた。
「モンスターとなって、相手をおそう」
「ちょっとホラーかも」
「ちょっと量多すぎかも」
「こうなったら、戦闘よ。ウタハ、マイミ、鞭をとって!」
「おうよ!」
「ちょっと待ったふたりとも。依頼の花は傷つけちゃ駄目だよ。ここは接客バトルで抵抗してみない?」
私は血気盛んな二人にそう提案した。
「なるほど、一理ある」
「でも、アオアに私達の接客が通じるかしら?」
「まずはやってみよう。おしゃべり攻撃。皆ー、元気だして?」
私がそう言うと、アオア達はダメージを受けた!
「ギイヤー!」
「ギイヤー、ギイヤーギイヤー!」
そしてアオア達のテンションが上がっていく!
「ひいっ、怖い!」
「マイミ、ひるまないで、たたみかけて!」
「えー、えっと、じゃあ、おしゃべり攻撃。皆ー、私に、夢中になれー!」
「ギイヤー!」
よし、アオア達はやっぱりダメージを受けている!
「次にマトバ!」
「任せなさい。私もおしゃべり攻撃よ。皆、そのお花、きれいね!」
「ギイヤー!」
あ、アオア達が昇天していく!
「これは、勝ち?」
「私達、勝ったの?」
「どうやらそのようね」
やった、なんとかアオアを接客できたよ!
「それじゃあいつもの決め台詞を言う前にい、アオア、あなた達の頭の花、全部ちょうだいね?」
「ギイヤー!」
「いいって」
「マイミ、相手の言葉がわかるの?」
「こういうのはフィーリングっしょ。さ、早速花だけ切り取ろう!」
「うん!」
私達は同時にうなずいて、アオア達から花を切り取った。
まだ地面から出てこないアオアの花も、全部切り取る。
こうして私達は、いっぱいのアオアの花を手に入れた。
よし。依頼完了、まであとちょっと。あとは届けるだけね!
「ギイヤー!」
「あ、皆。アオア達が、アオアジュースをくれるって」
「なにそれ、おいしいの?」
「折角だから、いただきましょう」
私達はそれぞれ、コップ一杯のアオアジュースを手渡しで受け取った。
「ごく、ごく、ごく、意外と美味しい!」
「結構爽やかね。あと、香りが甘い」
「健康にも良さそうね」
「ギイヤー!」
「え。これをドリンク攻撃でいつでも出せるようにしてくれる?」
「ギイヤー!」
「ありがとう、アオア達!」
「それじゃあここで、せーの」
「皆、キャバクランニングに遊びにきてね!」
「ギイヤー!」
アオア達はうなずくと、地面に潜ってしまった。
「よし。それじゃあ用は済んだし、今日中に納品しちゃおう!」
「おー!」