87 魔王退治を決意する
モンスターの軍勢は、倒した。
リューラが結構減らしてくれてたけど、それでも数は多かった。
しかし肝心の敵モンスターの強さが、あんまし弱めだったのだ。
強さ的には、2ランクか3ランクあたり。
一撃で沈む個体が多かったから、なんとかなった。
戦いが終わった後の皆は、祝勝モードだ。
「モンスターの大群に勝ったぞー!」
「おー!」
「町は俺たちが守ったー!」
「おー!」
「これで皆安心だなもー!」
「おー!」
よし。めでたしめでたし。だね。
「用も済んだなら、帰ろっか」
「うん。そうだね」
「だが、その前に。皆、祝杯はキャバクランニングであげてくれ!」
「おー!」
「おお、マトバ、ナイス!」
「せっかくの機会だからな。今日ぐらいは皆財布の紐がゆるいだろう」
「先輩達にもこの戦いの結果は報告しておいた方が良いよね」
「うん。あと団体客の招待もね!」
「お姉様、さあ、もう帰りましょう」
「うん。でも今日はもう疲れたから、リューラ、背に乗せてつれてってー」
「わかりましたわ。さあ、どうぞ!」
よし。この調子で魔王とやらもなんとかなるかなー。
「速報です。ほとんどの町がモンスターの襲撃により大きな被害をを受けました」
「王都にも襲撃はありましたが、防衛に成功。しかし、各町への支援、援軍等の余裕はない模様。国としては致命傷に近い被害を被ったようです」
助かった町の皆は喜びムードだったけど、テレビのニュースは悲惨だった。
ほとんどの町が、大被害?
ひょっとして、隣の町も?
これは、思ったより深刻な事態かもしれない。
頼みの王都も、援軍は出せないらしいし。
ん、援軍が出せない?
ということは、ひょっとして魔王も放置?
こうしちゃいられない。
これ以上この国がモンスターにやられる前に、大本の魔王をなんとかしなきゃ!
「というわけで、なんとかしてよガリュー!」
「そうだよ。たまにはかっこいいところ見せてよ!」
「今、あなたの力が必要なんだ」
私達は先輩の家でガリューの説得を試みた。
「と言われても、ドラゴンが魔王を倒してもなあ」
しかしガリューは顔をしかめるばかりだった。
「この意気地なし!」
「甲斐性無し!」
「やることやっといて結局はそれか!」
「勘違いしないでほしい。ドラゴンが魔王を倒しても事態は好転しないのだ」
「嘘おっしゃい!」
「魔王倒す。世界平和。子供でもわかる仕組みだよ!」
「それとも怖気づいたのか?」
「いいえ、お姉様方。残念ですが、お父様が言っていることは事実なのです」
「そうなの、リューラ?」
「ええ。魔王は人間への攻撃を宣言したのですよね。ならば、それを止められるのは魔王本人の宣言撤回か、狙われた人間側が魔王を倒すことだけです」
「それができなければ、モンスター達の猛攻は止まらないだろう。魔王の力とモンスター達の意識とは、そういうものなのだ」
「そんな」
「本当に、ガリューえもんに全部やってもらうじゃダメなの?」
「人間が、自らの手で、か」
私、マイミ、マトバが言う。
「それができなければ、人類は終わりだ」
「そうですわ。世界に、平和は、訪れないですわ」
「くっそー、LR十回連打すれば強い勇者達やってこないかな」
「マイミ、それ勇者達バグってるよ。たぶん名前もステータスも全部」
「く、それなら、私達でなんとかするしかないか」
「お、マトバ、なにか手があるの?」
「さすが、今日はいつも以上に頼もしいよ、マトバ!」
「いや、手という程ではない。今言った通り、私達の手で、魔王をなんとかするのだ」
それは。
「マトバ、それは」
「ナイスアイディアじゃん、それ!」
「マイミ、覚悟を決めてくれるか」
「覚悟ってほどのものじゃないっしょ。でも、いつもなんだかんだでなんとかなったから、今回もいけるよきっと!」
「そうだ。それに危なくなったらリューラもいるし」
「はい。おまかせください、マトバお姉様!」
「それで、ウタハはどうする?」
「私、は」
「これはとっても重大な選択だ。だから、今回は慎重に結論を出してくれてかまわない。相手は胡散臭いが魔王。おそらく今まで戦ってきた相手以上の相手だろう」
マトバ。
「いや、俺よりは弱いと思うぞ」
「僭越ながら、私も魔王よりは強いと思いますわ。ただ、倒しちゃいけないというだけで」
ドラゴン達はあっさりしすぎだけど。
「マトバ、マイミ、私、決めたよ」
「お、ウタハ、覚悟は決まった?」
「どうする、リーダー」
「私、思ったんだ。もし、魔王に挑んで、ダメだったらどうしようって」
相手はたぶん、モンスターの大群を操れる規格外だ。いや、モンスターの大群が現れたのはただの偶然の可能性もあるかもしれないけど。
でも、だからって、戦う前に白旗上げるのは、らしくない。
「でも、すぐに答えは出たよ。ダメだったら、ダメだった時に後のことを考える!」
「そうだ!」
「その意気だ、ウタハ!」
「キャバ嬢たるもの、常に自分に自信を持つべし!」
「どんな相手の財布もカラにすべし!」
「もらえるものは全て搾り取るべし!」
「魔王ごときに負けるキャバ嬢ではないわー!」
「よっしゃあその意気だー!」
「よし、決まったな」
そう。私達の目的は決まった。
「今から私達は、魔王を倒す!」
「おー!」
「今までで一番の、お大仕事だな」
私達は一緒にうなずく。
「あ、ところで魔王ってお金いっぱい持ってるんじゃね?」
「んまあ、そうかもね。マイミ」
「じゃあ、上手く客として客引きできれば、店のためにもなるでしょ。その時ついでに町への攻撃を止めてもらえばいいし!」
「おお、名案だな。今回はそれも狙おう」
「よし。また荒稼ぎするぞー!」
「おー!」
「それではお姉様方。これから魔王の城までお連れしますわ」
「ありがとリューラ、早速つれてってー!」
「ところで、今の装備で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない!」
「それでは行きますわよ。魔王城までちょっと遠いので、とばしますわ!」
こうして私達は、魔王を倒して世界を平和にするべく立ち上がった。
「ところでリューラ、魔王と知り合いなの?」
「いいえ。今回の魔王との面識はありません。ですが、魔王城はずっと昔から知ってますわ。たまにそこでパーリーとかいたしてましたの」
「魔王城でレッツパーリー」
「それでも魔王側ではないんだな、リューラは」
「ええ。基本ドラゴンは誰の下にもつきません。あ、もちろんお姉様方は特別ですわ!」
「お前の特別は鞭打ち目的だけどな」
「ああん、それはお姉様方だからこそ特別なんですう。これはまさに運命の出会いですわ!」
「んまあ、今リューラのおかげで魔王城直行してるもんね。この後もサポートよろしく、リューラ!」
「はいですわ!」




