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86 魔王現る

 今日は珍しく早く起きた。

「お父さんお母さんおはよーう」

「おはよう、ウタハ」

「おはようウタハ」

 二人共いつも早いなー。やっぱり日の出と共に起きる族は一味違う。

 そして私にその習性はない。まあ、なくても困らないからいいよね。

「ピリピリピリ。時刻、6時6分。時刻6時6分。バズッ!」

 あ、目覚めよテレビだ。久しぶりに朝のテレビでも見るかな。

 ズザザザー。ザッ。

 ん?

 なんか、テレビ画面が変わった?

 そこに映し出されたのは、のみさんではなく青白い肌の不健康そうな青年。

「人間の諸君、ごきげんよう」

 なんだこれは。

「なんだこれは」

「あなた、どうしたの?」

「まずは自己紹介を。余の名はキャバク。現代に現れた魔王である」

「馬鹿な、魔王だって!?」

「え、信じるの、お父さん!?」

「突然だが、間もなくそなた達、人の国は終わる。それも、すべての国だ」

「なんということだ。だが、こちらにも魔王と戦う戦力はある!」

「でもそれお父さん自身はカウントされてないよね!」

 むしろ、私が数合わせに入っている可能性がある。微粒子レベルで。

「神はこの世界を7日で創ったといわれている。であるならば、余らは6日でモンスターたちの楽園を築き上げよう。その間に、そなたら人間は一体何人生き残っていられるかな?」

「ふっ。愚か者が。いくら魔王だろうと、そんなことできるわけがない!」

「うん。私もそう思う」

 ていうか、できるんなら今の内にもうやればいいのに。

 へーん。どうせできないんだーやーいやーい。

「もうすぐそなたらの元に余の手勢が押し寄せる。これは宣戦布告、いや、一方的な蹂躙の合図である。そなたらはなすすべなくやられるがいい。ふーっハッハッハッハ。ハーッハッハッハッハ!」

 うわ、高笑い上手。

「く、今に見てろよ魔王。すぐに王国の精鋭部隊がお前の野望を打ち砕いてみせる!」

「そうだねー。そういう人達もきっと動くんだろうなー」

 例え嘘でも、この人は魔王を名乗ったのだ。きっとそれなりの人がお叱りに行くだろう。

「はーい、朝ごはん出来たわよー」

「ああ」

 あ。お父さんがテレビを消した。

「ごはんの時は、テレビは消さないとな」

「うん。そうだね。お父さん!」

「はい、召し上がれ」

「いっただっきまーす!」

 その数時間後、私達の町にモンスターの軍勢が現れた。


 私、マイミ、マトバ、リューラはキャバクランニングエンジェルスとして冒険者ギルドから緊急招集をかけられた。

 なんでも、北からモンスターがこちらに向かってダッシュしているらしい。

 その数、一万匹。

 えらいこっちゃ。

「まずは町の外で一度交える。そこで相手の数を減らしてから、町の門壁を使いつつ防戦だ。いいな、お前ら!」

「おー!」

 今日初めて見るこの町のギルマスが、そう作戦を伝える。

 いや、作戦というか、無策というか。けれど、私達以外の冒険者たちは皆士気が高い。

 一方私達は微妙だ。

「門の外で戦うって、要するに私達捨て駒じゃん」

「まあ、生存率は限りなく低いだろうな」

「せめてモンスターの数が普通ならいいんだけどねえ」

 マイミ、マトバ、私が言う。

「あの、私達はよくないんで、門まで下がってもいいですかー?」

 お、マイミが神経図太く言った。

「いいぞ。臆病者は帰れ。士気が下がる!」

「はーい。じゃあ、そういうわけで」

「え。マイミちゃん達は戦わないのか?」

「じゃあ、俺も帰ろっかな」

「マトバちゃんがいなくなっちゃうなら、やる気無くなっちゃうなあ」

「ま、待て。女のパーティ。お前たちは特別だ。最前線で戦え。絶対。これも士気のためだ!」

「うおい、その言葉取り消せー!」

「ああ。帰れという言葉は取り消した!」

「そっちじゃなーい!」

「マイミ、もう諦めよう」

「そうだぞ。どうせもうここまで来てしまったんだ。モンスターの軍勢というのも見過ごせないし、ちゃんとここで戦っておこう」

「うえー。ウタハ、マトバ、やる気なのー?」

「ああ。そして」

「いざとなったら、ドラゴンモードのリューラに乗せてもらって逃げる!」

「おお、その手があった!」

「はいですわ。おまかせください、お姉様方。万が一の時は私がお助けいたしますわ!」

「ありがとう、頼もしすぎるよリューラ!」

「まさに、困った時のドラゴンだな」

「うおっしゃー、そうなりゃいっちょ暴れてやるかー!」

「よし。その意気だ、お前たち!」

 ギルマスがそう言った、直後。

 遠目に、モンスターの大群が見え始めた。

 ゾロゾロゾロ。

 うへえ。いっぱいいるー。

「まるで町を飲み込もうとしているかのようだな」

「おお、マトバ。それ言えてる!」

「実際町に向かってるしねー」

 あのモンスター達が、私達の町を壊そうとしているのか。

 許せない!

 けど、それ以上にやっぱり、数多すぎ!

「あ、あんなやつらと戦うのか?」

「ここには戦士団もいるが、それだけじゃ」

「とても、太刀打ちなんて」

 ああっ。周りの冒険者たちの士気がいざという時になって下がっていく!

「お前ら、どのみちここで勝てなきゃ人類に未来はない。俺たちの手で、明日への光を掴むんだ!」

「おお、ギルマスがかっこいいことを言っている!」

「そうだ。やるんだ。俺たちが!」

「それだけできれば英雄!」

「さーっ、オーライ!」

「やるぞー!」

 おお、皆の士気がV字回復している!

「けれど、たしかに少し、多いですわね」

「あ。リューラ。それは、まあ、うん」

「じゃあ、ちょっと減らしてきますわ」

「え」

 リューラはドラゴンモードになると、私達を置いて飛んでいった。

 すると、なんということでしょう。

 あんなにいるモンスターの大群が、リューラの空からの遠距離攻撃で徐々に減っていくではありませんか。

 そして、モンスター達がこちらに来る頃には、もう数は半数以下。

「これだけ減らせば、まあいけるでしょう。お姉様方、出番ですわよ!」

 そして空からドラゴンリューラが言う。

 これは、なんというか。

 最初から、彼女一人で良かったのでは?

「お前ら、この機を逃すなー、進めー!」

「おー!」

「よし。私達もいこう」

「あ、うん」

「よっしゃー。思ったより楽な仕事だー!」

 こうして、マトバ、私、マイミも戦った。

 そして今、つくづく思う。

 ドラゴンが敵に回らなくて、良かったー。




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