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85 小判きつね

 キャバクランニングなう。

「あなた達、よくメッキナイトをつれてきてくれたわね!」

「はい、上手くいきました!」

「私達にかかればこんなもんですよ!」

「時間的なことを言えば、リューラの活躍が強いですけどね」

「世の中結果が全てよ。事実、メッキナイトも接客して、なかなかのお金を使ってくれたわ」

「やりましたね、先輩!」

「お互い様よ。さて。それじゃあ次も、新しい客を客引きしてもらうわ」

「なるほど、次の獲物ですか」

「なに、どんなやつも私達にかかればちょろいちょろい!」

「今のところ、適正ランクは4あたりだけどな」

「イグザクトリー。次も4ランクのモンスターが相手よ。その名も、小判きつね」

「小判きつね」

「聞いた感じお金持ってそうですね!」

「アンミ先輩。たしか小判きつねは、人を化かすモンスターだったはずですが」

「その通りよ。小判きつねの特技は幻惑。でもランク的には4だし、ここらでちょっと幻惑し返してきて。あなた達の魅力で!」

「わかりました先輩!」

「私達の魅力にかかればきつねだろうとたぬきだろうと一発ころりですよ!」

「相手は獣なので、期待値は未知数ですが」

「大丈夫。やればできる。あなた達はいつだってそうやってきた。今回もその若い力に期待する!」

「はい、お任せください!」

「このままいつもの勢いですぽぽぽーんとやってきます!」

「全力は尽くします」

「では、いってらっしゃい」

「はーい、いってきまーす」

 こうして私達は、小判きつねを探してつれてくることになった。


 まずは小判きつねについて調べる。

 小判きつねは基本、山ならどこにでもいるらしい。

 というわけで、山行こう。山!

「リューラ、ちょっと山までつれてってー!」

「今回の獲物は小判きつねなの!」

「まあ、そうでしたか。では、それより上の大判きつねや金塊きつねの方が良いのではないのですか?」

 リューラにそう言われて、私達は顔を見合わせる。

「大判?」

「金塊?」

「小判きつねの更に上の存在か」

 私、マイミ、マトバが言う。

「ど、どうする。二人共?」

「たしかにリューラの言う通り、狙うなら大物狙いかも」

「だが、小判きつねで4ランクだぞ。ひょっとしたらそれより上は私達の手にあまるかもしれない。それに、アンミ先輩に言われたのは小判きつねだ。それ以外を狙ってどうする?」

「そっか」

「でも、より大物を狙って、アンミ先輩に更に褒められるってのはどうよ!」

「うっ。マイミは常に積極的!」

「攻めの姿勢は崩さないのがポリシー!」

「いいや、私は反対だ。では、言い出したリューラとしてはどうだ。私達なら大判金塊、狙えるのか?」

 マトバがそう言って、私達はリューラを見た。

「あいつがお姉様方の魅力を理解できるかはわかりませんけど」

 ん、あいつ?

「金塊きつねなら、知り合いにいますわよ」

 私達は顔を見合わせて、同時に言った。

「じゃあ、紹介して」


 金塊きつねのお屋敷なう。

「なるほど。事情はわかった。キャバクラに遊びに来い、ねえ」

 首に金塊でできた首輪を巻いた大きなきつねが渋い声で言った。

「ええ。ですので、お姉様方のために、来やがれ」

「おお怖い怖い。ドラゴンに睨まれちゃ寿命が縮むってもんよ」

「冗談はよしむらさんですわ」

「別に冗談でもねえが。ふうん、行きてえのはやまやまだけど、俺が行くと下の者がゴタゴタするからなあ。そうホイホイ行けねえのさ」

「ふむ、そうですか。では、なにか条件でもつけますか?」

「そうさなあ」

 金塊きつねは私達三人を見回す。

 目、目に力がある。でもここでひるんではいけない!

「あ、あの、金塊きつね、さん!」

 ひ、ひるんではいけない!

「あ、なんだ?」

「私達はこれまで、数々のモンスターを倒してきました。ある時は力で。またある時は接客バトルで!」

「ふうむ」

「なので、私達と勝負して、勝ったら一緒に来てください!」

「なるほど。そこまで言われたら、こっちも勝負してやらんでもない」

「やったー!」

 よし、ここからは私達次第!

 と思ったその時だった。

「あんた!」

「げ、おっかあ!」

「あんたそんな人間の嬢ちゃんにやられたフリして、人里におりようと企んでんじゃないかい?」

「そ、そんなわけねえじゃねえか」

「本当かねえ。化けの皮かぶったひねくれ者を、信じるバカはいねえよ!」

「ひでえ言いがかりだ!」

「問答無用!」

 金塊きつねは、新しく現れた金塊きつねにボッコボコにされた。

「ばたんきゅう」

「というわけで、そいつはリタイアさ。当然あたしもあんたらと勝負はしないよ」

「は、はあ」

「でも、せっかくここまで来たんだ。チャンスをあげる」

 勝った方の金塊きつねは前足を叩いた。

 すると、私達の前にぞろぞろと、おこじょ、いたち、コアラ、猫が現れる。

「この小判きつね達のどれか一匹をつれてってもいいよ。お代を出すなら4匹全員つれていってもいい」

 と言われても。

「あの、その中にきつね一匹もいないんですけど」

 私の心の内をマイミがかわりに言った。

「ん?」

「あ、でもコアラはつれていけるならつれてってもいいぞ。お、お金を出せばいいんだな」

 あ、マトバがなんか反応してる。

「お前たち。こいつらがなんなのか右から順に言ってみな」

「おこじょ、いたち、コアラ、猫です」

「驚いた。本当にこの子達の変化が通用してないみたいだね」

 金塊きつねはそう言うと、耳と尻尾を大体そのままに、美女の姿に変わった。

「それじゃあ、私はどうだい?」

「きれいなキャバ嬢に見えます。あと狐耳と尻尾が可愛いです」

「ふうむ。その様子だと、どうやらたぬきの加護を持っているようだねえ。これは完全にあたしらの負けだ。どうやら化かしそこねたようだねえ。いいだろう。こっちの幻惑を見抜いた褒美だ。小判きつねと、そこのラリアコアラをつれてきな」

「良いんですか!」

「ありがとうございます!」

「おお、コアラっ。写真、写真とらないと!」

「マトバ、良かったね」

「ああ!」

 こうして私達は、リューラのコネとたぬきの加護のおかげで、小判きつねをゲットしたのだった。


 そして。

「きゃー、コアラ可愛い!」

「私にも抱かせてー!」

「癒やされるー!」

 コアラキャバクランニングでも大盛況。

 それをはたから見る除け者扱い小判きつね。

「コン、変化!」

「きゃーっ、こっちの子もコアラになったー!」

「すごーい、可愛いー!」

「コーン!」

 こうして小判きつねも、嬉しそうに溶け込んだ。

 それでいいのか、小判きつねよ。

 まる。





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