84 メッキナイト
その夜。
「皆ー、今日はキャバクランニングに来てくれて、ありがとー!」
「いえーい!」
「折角皆で助かったんだから、ここでしこたまお金を落としていってよね!」
「はーい!」
「それでは、炭鉱夫達の無事を祝って、乾杯!」
「かんぱーい!」
私達は炭鉱夫達の無事生還パーティを、キャバクランニングでおこなった。
助かった炭鉱夫達だけではなく、生産ギルドの炭鉱資源担当の人たちも来てくれた。おかげで店は大盛況だ。
久しぶりに店内業務だ。なんでも助けた私達がいなければ盛り上がらないからという配慮。よし、今日ははりきろー!
と、いうことがありました。
宴もたけなわ。お客さんは皆酔い潰れたから、お金だけもらって店の前に捨てる。
「ふー。これでよし」
「久しぶりに働いたねー」
「ああ。流石に働きすぎでもうくたくただがな」
「後はぐっすり眠ろっかー」
「そうだねー」
「お疲れ様だな。皆」
私達がそう言って帰ろうとすると、アンミ先輩がやってきた。
「ちょっと待ちなさい、あなた達」
「はい、なんでしょう、アンミ先輩」
「あなた達、とうとう冒険者ランクが4にまで上がったって言ってたわよね」
「はい。言いました言いました」
「そうすると、何かあるんですか?」
「もしや、おこづかいですか?」
「いいえ。でも、それに近いわ。やっと4ランクにまで上がったんだから、客引きのターゲットを絞ろうと思ってね。これからはこちらが選んだモンスターを積極的に客引きしてもらうわ」
「あ、そういえばそんな機能もありましたね」
「私達は狙ったモンスターをお店につれこむ役も兼ねてましたね」
「説明おつ、マトバ」
「そういうこと。もうおまけが本編みたいになってるけど、とにかく、今度からは狙った獲物を客引きしてちょうだい」
「はい、わかりました!」
「で、一体何をつれてくればいいんですか?」
「今回あなた達に狙ってもらうモンスター。それは、メッキナイトよ」
「メッキナイト」
「詳しくは自分たちで調べてちょうだい。それじゃあ、よろしくね」
「はーい」
アンミ先輩はそう言って行ってしまった。
「とうとう私達の仕事に新たなミッションが加わってしまった」
「というか、ようやく客引きの効果をこなすって感じだよね」
「まあ、客引き要素もおまけから始まっているが、まずは、メッキナイトの情報を集めることから始めないとな」
「うん!」
「じゃあ、明日から本気出す!」
「今夜はもう遅いしな。さて。それじゃあ帰るか」
「さよならー」
「また明日ー」
「うむ。また明日だ」
私達ももう帰って、家に帰ってぐっすり休むことにした。
翌朝。というか、もうお昼頃。
「お姉様方、もう遅いですわ!」
私達は先輩の屋敷でリューラに怒られていた。
「朝はもうとっくに過ぎてしまっているのに、なんで、お姉様方は、私を鞭で打ちにこないんですの!」
うん。その発言もおかしいんだけどね。いつものリューラだ。
「ごめん、リューラ。昨日は夜まで仕事だったから、寝坊しちゃった」
「お願い、許して、たまにはいいでしょ!」
「今日は一層念を込めて鞭打ちする。だからそれで手をうってくれ」
「まったくもう。次は許しませんわよ?」
「うん!」
良かった。リューラがちょろくて助かった。
そして今日も私達は、リューラを鞭で打った。
「ヘブンストーム!」
スパアンスパアンスパアーン!
「ひやあああーん、気持ち良いですわー!」
今日も平和である。
リューラを満足させた私達は、図書館に行ってメッキナイトの情報を集めた。
冒険者ギルドの図書室でも調べたんだけど、情報が無かったんだよね。職員さん曰く、閲覧可能の資料には近場のモンスターと有名なやつの情報しか置いてないんだって。メッキナイトはここじゃマイナーモンスターみたい。
「あったぞ、メッキナイト」
「おお、さすがマトバ。頼りになる」
「メッキナイト。金色の鎧のモンスターなんだが、純金製じゃないらしい」
「金じゃないのに金色とは。なんかダサい。いや、ショボい?」
「まあ言わんとすることはわかる。詐欺だよね」
「出現場所は、草原全般、たまに森や山。一番現れやすいのは、アビノアの平原らしい」
「アビノアの平原かあ。聞いたことないね」
「地図も調べないといけない。うへえ」
「丁度草原全集もあったな。それで大まかな位置を確かめよう」
こうして出現場所を絞っていると、日が暮れてきた。
今日はもうリューラを鞭打って一日を終わりにしておこう。
翌日はリューラが先輩の護衛担当日だった。なので私達もお休み。
先輩のお腹も少しふくらんできた。どうやらお腹の赤ちゃんは順調に育っているらしい。
どうかガリューみたいにならないでほしい。
翌日。リューラを鞭打って昇天させてから、アビノア平原につれていってもらおうと相談する。
「アビノア平原ですか。聞いたこともない場所ですが、良いですわよ」
「やったー、リューラに飛んでいってもらわないとすっごく移動大変だったんだよねー」
「片道だけでもしんどいのに、往復とか。何日かかることやら」
「だが、リューラならそれも一瞬だ。道案内は私達がするから、リューラは言う通りに飛んでくれ。いいな?」
「はい。わかりましたわ。お姉様のため、私、頑張ります!」
というわけで、今日もリューラに空を飛ぶをしてもらった。
空を飛ぶ。便利だ。
アビノア平原に着いた。
「よし、きっとここだ!」
「念のため、近くの町がアビリアか確かめるか?」
「いいよ、マトバの指示に間違いはないよ!」
「そうですわ。私もここがアビノア平原だと思います!」
「よし、じゃあ、探そう!」
「おー!」
ちょっと探すと、本当にメッキナイトがいた。
全身金色の鎧が、剣と盾を持って歩いている。知らなかったら人だと勘違いしそう。でも本に書いてあった通りの格好だ。
「よーし、あれがメッキナイトだ。それじゃあ早く客引きしよう!」
「キャバクランニングに誘うんだから、接客バトルで戦った方が良いよね!」
「そうだな。では試してみよう」
「ということで、メッキナイト、勝負!」
私達が近寄ると、メッキナイトは剣を天にかかげて相対した。
「まずは私から。誘惑攻撃!」
どうだ、兜をかぶっていて顔が見えないから反応がわからん!
「私はおしゃべり攻撃!」
これも同じ!
「ドリンク攻撃。ここはムギュムギュビールだ」
マトバが出したビールを、メッキナイトが飲んだ!
すると!
ガクッ。
なんと、メッキナイトは片膝をつくと、そのまま大の字に寝転がった!
「やった、勝利!」
「楽勝、いえーい!」
「まさか、アルコールにこんなに弱いとは」
「さすがお姉様方ですわ。これで先輩からの要望もクリアですわね」
「じゃあ、さっさと運んじゃおう!」
「うん。けどその前に」
「キャバクランニングに、遊びにきてね!」
「ですわ!」
そして倒したメッキナイトは、ドラゴンリューラが前足でつかまて運んだ。
帰りも空を飛ぶだ。楽ちんである。
「あ、リューラが飛んでくれれば他の町の観光とかもできるね」
「本当だ。リューラ、その時も頼んだ!」
「はい、任せてください、マイミお姉様!」
「まあ、遊ぶのはほどほどにな。だが、リューラのおかげでモンスターハントが助かるのも確かだ。今日はありがとう。リューラ」
「はい、お役に立てて光栄ですわ、マトバお姉様!」
まる。




