82 たぬき現る
今日は皆で依頼を受ける。
今回は山で、イルワシとスネークウルフを狙う。イルワシは群れを作る鳥で、スネークウルフは蛇とオオカミの体を持っているらしい。
今日もリューラに飛んでもらう。
「着きましたわ、お姉様方。この近くにスネークウルフがいますわ」
「ありがとう、リューラ」
「よし、探そう!」
「さて、どっちに行く?」
「あっちだ!」
「すすめー!」
当然周囲を警戒しつつも、大して不安や心配等は感じていない。ミチノコの時にリューラレーダーの性能は確かめられてるからね。
「ポコポーン!」
すると私達の目の前に、一匹のたぬきが現れた。
「あ、モンスター!」
「あれはポコポンたぬきだ!」
「狙いじゃないけど、出てきたね!」
私、マトバ、マイミが言う。
「ポコポーン、ポコポーン、ポコポーン!」
ポコポンたぬきが私達の前で踊っている。
「な、なんだろう、このたぬき。緊張感がまるでない」
「むしろ陽気だね」
「気をつけろ、皆。ポコポンたぬきはああやって相手の油断を誘って、気を見計らってアタックしてくるのだ」
「え、そうなの。策士、かな?」
「むしろ自分がめっちゃ油断してるんだけど」
「う、うむ。まあ危険はあまり感じないわ」
「お姉様方ならこの程度の敵、サクッと倒せますわ。さあ、頑張ってください!」
「ポコポーン、ポコポーン、ポコポーン!」
ポコポンたぬきは踊りを続ける。
「ポコポーン、ポコポーン、ポコポ」
「ガウシャー!」
その時、ポコポンたぬきの後ろからオオカミの顔が現れ、ポコポンたぬきを丸呑みにした。
「あっ」
四人でそう声をもらす。
よく見るとオオカミは、胴体が蛇だった。蛇の胴からオオカミの四肢を出していて、凄いアンバランスだ。そしてやけに大きい、胴が長い。
「チャンスだ、皆。あれがスネークウルフだ!」
「聞いてた通りの見た目だけど、やっぱり気持ち悪い!」
「ていうか思ってたより大きい!」
「これは運が良いですわ。お姉様方、手早く倒してしまいましょう!」
「ガウシャー!」
スネークウルフはこっちにおそいかかってきた!
「くるぞ!」
「なんのお!」
「負けるかー!」
ビシーンバシーンピシャーン!
私達は鞭を振るい、スネークウルフの顔を滅多打ちにする!
「ガウシャー!」
するとスネークウルフはひるんだ。チャンスだ!
「2人共、今!」
「合点承知の助!」
「必殺技だな!」
「ヘブンストーム!」
スパアンスパアンスパアーン!
「ガウシャアアアー!」
スネークウルフは私達の必殺技を受けると、その場でばたりと倒れた。
「ふうー。倒した、よね?」
「なんかそのまま倒れられても、すぐ動き出しそうで怖いね」
「倒れたからなんとかなったと思う。とにかく、倒した証をもらわないとな」
「そうだね」
「大丈夫ですわ、お姉様方。スネークウルフはものの見事にダウンしています。私が保証いたします。さすがはお姉様方の鞭ですわ!」
「よし。じゃあリューラのお墨付きももらったから、安心しよう!」
「そうだね!」
「む。おい、あれを見ろ。どうやらまだ安心はできないぞ」
「あれってどこ?」
「上だ!」
上を見ると、上空に鳥の群れが集まりだしていた。
「あれは、イルワシですわ!」
「本当だ、イルワシがいるー!」
「もしかしたら、倒れたスネークウルフを狙いにきたのかもしれないな」
「ポコポン」
「あ、ポコポンたぬきがスネークウルフの口から出てきた」
「皆、上からくるぞ、気をつけろ!」
「ワシー!」
マトバが注意を呼びかけると同時に、イルワシ達が上空から光魔法を降らせてきた。
「わあ、よけろー!」
「もしくは、鞭で迎撃!」
「なんとかなる弾幕だが、こちらの攻撃手段がないな!」
たしかに、これではやられる一方だ!
「なんとかならない?」
「こっちも魔法で反撃だ!」
「それしかないか!」
私、マイミ、マトバが言う。
「えい、木魔法!」
「火魔法!」
「水魔法!」
私達は魔法をとばしたけど、全部避けられてしまった。うう、飛んでるってずるい!
「ダメ、当たらない!」
「こんな時、どうしたら!」
「まさか、ここで苦戦するとはな」
私、マイミ、マトバがそう言った時、私は閃いた。
「そうだ。私の木魔法でなら、捕まえられるかもしれない。えい、木魔法!」
私はツルを生み出して、それを伸ばして空にいるイルワシにひっかけた!
「ワシー!」
「えい!」
「ワシー!」
おもいっきり引っ張ると、捕まえたイルワシが地上に降りてくる!
「それ、今だ!」
「チャンス!」
ビシーンバシーンピシャーン!
私が引き寄せたイルワシを、マイミとマトバが鞭打つ!
「ワシー!」
イルワシの体力は少ないのか、すぐに沈黙した。
「やったー!」
「これならいける!」
「ウタハ、どんどんやってくれ!」
「うん!」
「ポコポン!」
「木魔法!」
私はもう一度木魔法を放ち、新たなイルワシにひっかけた。
「ワシー!」
けれど他のイルワシの光魔法で攻撃され、ツルがちぎれてしまう。そんな、対策を練られてしまった!
「ダメみたい、もう通用しない!」
「そんな、もうダメなの?」
「く、ここまでか」
私達が絶望した瞬間。
「ふっ。どうやらとうとう私の戦闘の出番ですわね」
リューラが不敵に笑いながら前に出た。
「そうか。リューラが戦ってくれるなら空を飛ぶ相手にも勝てる!」
「さすがリューラ、やっつけちゃえ!」
「すまないが、ここは頼む!」
「ポコポン!」
「すみませんが、私はあまり手を出しませんわ。お姉様方がもっと活躍してくださった方が、私も萌えますので」
「リューラ、こんな時でも余裕だ!」
「どうでもいいから早くしてー!」
「まだ、敵の光魔法はとび続けているのだが!」
「私は今からお姉様方に、飛行魔法をかけます。それで空を飛んで、見事相手を倒してくださいませ!」
「飛行魔法!」
「そんな凄い魔法が使えるのか!」
「早くかけて、リューラ!」
私、マトバ、マイミが言う。
「ええ。ではいきますわ。飛行魔法!」
「やった、飛べる!」
「これでかつる!」
「いくぞ、反撃開始だ!」
「ポコポン!」
こうして私達とポコポンたぬきは空を飛んだ。
高速でイルワシに近づいて、鞭打ち!
「えい!」
「やあ!」
「たあ!」
ビシーンバシーンピシャーン!
やった、イルワシ達は落ちていく!
「ポコポン!」
「ワシー!」
「ポコポーン!」
ポコポンたぬきは返り討ちにあっているけど、がんば!
「空を飛ぶのも、鞭で打つのも気持ち良い!」
「ひゃっはー、私飛んでるー!」
「この調子で片付けるぞ!」
私、マイミ、マトバはハイテンションで、イルワシ達を倒していく。
「お姉様ー、その調子ですわー!」
そして地上からリューラに応援され続け、無事イルワシ達も倒したのだった。
「ふう。それじゃあ今回も!」
「皆、キャバクランニングに遊びにきてね!」
「ですわ!」
すると、どうしたことでしょう。いや、いつも通りなんだけど。
倒したスネークウルフとイルワシ達は、すくっと立ち上がると、討伐の証を残して去っていった。
これで、今日の依頼も無事完了だ。
「ポコポン!」
「ん、どうしたの。ポコポンたぬき」
「ポコポン!」
「助けてくれたお礼に、たぬきの加護をくれるって」
「おお、ありがとう。ポコポンたぬき」
「マイミも通訳サンキュー」
「へへ、まあね」
「ポコポーン!」
ポコポンたぬきが前足をこちらに向けると、私達の体がキラキラ光った。
「ポコポーン!」
「じゃあねー!」
「元気でねー!」
「たくましく生きるんだぞー!」
ポコポンたぬきは前足を振りながら去っていく。
その時。
「グワーン!」
突如上空からワイバーンが飛んできて、ポコポンたぬきを捕まえて飛び去った。
「あっ」
皆一瞬、止まる。
「ポコポオオオオオーン!」
ポコポンたぬきの悲鳴が、山中に響き渡った。
うん。
まあ、いっか。
「さて、帰るか」
「まあ、そうだね」
「これは、しょうがないかなあ」
そして、マトバ、マイミ、私はそう言うのだった。
「はい。ではドロップアイテムを回収したら帰りましょう。そしたらまた鞭打ちですわね、お姉様!」
リューラももういつも通りで、うれしそうにそう言うのだった。
まる。




