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81 キャバ寮

 ミチノコは依頼主の偉そうなおじさんに渡された。

「うむ。これがミチノコか。美しい。確かに。ではこれが報酬だ」

「わーい、ありがとうございまーす!」

 マイミは笑顔で現金を受け取る。

「ミュー」

「ミチノコ、そんな寂しそうな顔しないで」

「これも依頼なのだ。素直にお金になってほしい」

「ミュー!」

「え、もう一杯ビールちょうだい?」

「じゃあこれで妥協してね」

「ミュー!」

 檻に入れられたミチノコは上機嫌にムギュムギュビールを飲みながらつれられていった。

「よーし、大金ゲットー!」

「んまあ、それは良かったね」

「そうです、お姉様方。私、明日は二番目のお母様の護衛があるので、お仕事はご一緒できませんわ」

「そうか。それもあったね」

「ええ。ですが朝夕の鞭打ちはかかさずお願いしますわ!」

「ぶれないね。リューラ」

「お姉様との逢瀬が私の一番の楽しみなのです」

「じゃあ、明日はお休みにするか」

「そうだね。リューラと稽古はするけど」

「それでは、今日も夕方の分、私を鞭打ってください!」

「リューラ、ムギュムギュ麦畑でも打たれたのに、まだやるのか」

「あれは別腹ですわ!」

「いや鞭打ちに別腹とかないし」

「じゃあ。ここは人の目があるから、先輩の屋敷でね」

「はいですわ!」

 こうして私達は期待通り、またリューラを鞭で叩いた。

「あはああーん!」

 リューラ、飽きないのかなあ。


 翌朝もリューラに会いに行って鞭で叩くと、その時先輩がやって来て、相談を受けた。

「あなた達、ちょっと相談にのってくれない?」

「はい、なんでしょう。先輩」

「先輩の話なら、なんでも聞きますよ!」

「どのような話でしょうか?」

「実は私、今回冒険者やマイミを屋敷で泊めてて、皆がいるって良いなって思ったの。だから、今後もそういうのを続けたいって思ったから、この町にキャバ嬢の寮を作って、そこで皆で暮らしてほしいって思ったの」

「おお、キャバ嬢寮!」

「略してキャバ寮!」

「良いんじゃないでしょうか?」

「そう言ってくれるとうれしいわ。もう他のキャバクランニングの皆とも話をして、ガリューの財力で実現させるって流れにはなったんだけど、肝心の場所が問題でね。候補地は3箇所あるんだけど、あなた達の意見も聞かせてほしいの」

「なるほど」

「わかりました。私達にお任せください!」

「できるかぎり力になりましょう」

「お姉様方、私からもお願いいたしますわ」

「じゃあ、今からざっと地図を見せるから、それぞれ意見を言ってちょうだい」

 そういうわけで、一度応接室に行って、そこで地図を広げる。

 更にお茶とお菓子までごちそうになってしまった。

「先輩、お茶ありがとうございます」

「とっても美味しいです」

「いつもありがとうございます!」

「ええ、私もマイミの食べっぷりにはいつも感心してるわ。それで、寮の候補地はこの3つの丸。1つが、この屋敷の近くの高級地ゾーン。2つ目が、キャバクランニング近くの中級ゾーン。3つ目が貧民街の入り口に建てる計画の低級ゾーンよ」

 先輩が指をさして説明してくれる。

「貧民街の方のパターンもあるんですね」

「ええ。低級ゾーンのメリットは、多くのキャバ嬢の安心感よ。キャバ嬢は半数以上が、貧民街から来てる子達だから。だから移り住むことに抵抗はないみたい。家から通っている子もいるから、全員寮に住むってわけじゃないし。何より、立地条件による家賃の低下もメリットね」

「私低級ゾーンでも問題ないよー」

「マイミはそっち暮らしだからね」

「うん。ちなみに、家賃っていくらくらいですか?」

「そうね。おそらくだけど、低級ゾーンが1としたら、中級ゾーンが2。高級ゾーンが4ね」

「4とか!」

「だが、低級ゾーンの家賃の4倍なだけだろう。冷静に見れば安いんじゃないか?」

「いや4倍違ったら貯金も3倍できるし。長い目で見たら圧倒的だし!」

「どうやらマイミは高級ゾーンがダメみたいだね」

「だってただ住むだけで4倍とられたら詐欺だもん!」

「けど、それ以外のメリットもあるわよ。高級ゾーンはよく警官が巡回してるから、不審者とかいないのよ。皆を守るという点においては高級ゾーンが一番良いのよ」

「しょっぱい警官なんていなくても十分ですよ。私達強いですし!」

 そう意気込むマイミ。でも先輩は浮かない顔だ。

「そうは言っても、キャバ嬢の皆が強いわけじゃないでしょう。最初の頃のあなた達だって、そんなに強くはなかったはずよ」

「それは、そう、ですけど」

「そんな時もあったのですね」

「ですが、強いキャバ嬢も圧倒的に多いです。ですから警戒する面で言えば、それほどセキュリティが高くなくてもよいのでは?」

「でも、万が一ということがあるでしょう。私はイヤよ。寮に住んでくれた子が事件に巻き込まれるの」

「じゃあ、中級ゾーンはどうなんですか?」

「中級ゾーンは、無理を言ってキャバクランニングの近くに作ってもらうこと。土地の買い取りはバカみたいにかかるけど、まあガリューのお金だし、そこは大丈夫。治安もそこそこは良いはずよ。けどちょっと気がかりなことがあるとすれば、低級ゾーンより市場がちょっと遠いのよね」

「あ、本当だ」

 確かに地図を見る限り、低級ゾーンの場所の方がいろいろな店に近い。

「買い物が楽な方が、生活的に楽じゃない?」

「うむ、確かに」

「でしょ。じゃあやっぱり低級ゾーン一択だよ!」

「いや、マイミ。それはまだ早い。というかそれマイミの意見」

「うん!」

「ですが、距離的なことを言えば、中級ゾーンでキャバクランニングに通うのも楽では?」

「そう。マトバの言う通り。キャバクランニングにはほぼ毎日通うから、そこも加味しなくちゃいけない。でも低級ゾーンならそこまで遠くもないし、どこもいまいち決め手に欠けるのよねえ」

「なるほど。つまり、安全面を考慮するなら、高級ゾーン。キャバクランニングに行くなら、中級ゾーン、お店で買い物したいなら低級ゾーンなんですね」

「そういうことね。ということであなた達の意見を参考にしたかったんだけど、どう?」

「私は低級ゾーン。何より家賃が一番安い!」

「マイミはぶれないね」

「もちろん!」

「思ったんだが、買い物は誰かに頼めばいいのではないか?」

「え?」

「頼むって、誰に?」

「例えば、商人、いや、買い物係を雇うのだ。その人物が一週間や3日に一度、寮の者たちから買い物リストを受け取る。それを一気に買いに行ってもらう。というのはどうだろう?」

「さすがマトバ!」

「それめっちゃ楽じゃん!」

「ああ。名付けてゾンアマ、いや天楽、いやいや、楽アマ。そう。楽アマだ」

「なるほど。良いかもしれないわね」

「じゃ、じゃあ、キャバクランニングにも馬車で送り迎えしてもらえばいいじゃん!」

「それは運ぶものが人になる分、行列になる。運ぶならまとめられる日用品だろう」

「なるほど。良いかもしれないわね。わかったわ。そんな商人を雇えないか、交渉してみる」

「ありがとうございます、先輩!」

「となると、候補は高級ゾーンか中級ゾーンね」

「セキュリティは本当に考えなくていいんじゃないですか? なんなら皆から余計に請求して、家賃3で警備の人をつけてもらうのもありかもしれませんよ?」

「そうね。専属の人がいれば安心できるものね。その方が良いかもしれないわ。それじゃあ、今のところは中級ゾーンに寮を作る。で良いんじゃないかしら?」

「私は良いと思います!」

「うーん。まあ、それでもいいか」

「私も中級ゾーンが無難だと思います」

「さすがお姉様方、完璧ですわ!」

「久しぶりにしゃべったね、リューラ。ていうかなんも意見無かったね」

「はい!」

 どうやら、話し合いは決まったようだ。

「それじゃあ、一応決まりということで。後は他のキャバ嬢や、ガリューとも更に話をつめてみるわ」

「はい。寮かあ。ちょっと住んでみたいかも」

「私も少し気になるな。今までずっと家にいたものだし」

「私もずっと先輩の家で養ってもらうのもなんだし、寮に行こっかなー」

「うふふ。皆、その時が来たら、よろしくね?」

「はい!」


 その日、私は家でお母さんに何気なく今日の話をふってみた。

「ねえ、お母さん。私、寮ができたら寮暮らししてもいい?」

「お父さんが心配するから、やめておきなさい」

「はあい」


「ということになった」

「そうだったか。実は私もだ」

「お互い家族が心配性だねえ」

「そっか。ウタハもマトバも寮には来ないのかあ。ちょっと寂しいね」

「じゃあ寂しい分、いつもの時間を思いっきり楽しもう!」

「ああ、そうだな!」

「おっしゃー、まあ、今はリューラを鞭打たないといけないけどねー」

「お姉様方、さあ、よろしくお願い致しますわ。今日も遠慮なくビシバシやってください!」

 まる。


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