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80 ミチノコとビール

 冒険者ギルド内にて。

「おおー、今日の依頼はこれにする!」

 マイミがそう言って一枚の依頼書を取った。

「なになに、どれどれ?」

「ミチノコの捕獲? なんだこれ、報酬が他の依頼の30倍あるぞ」

「これで依頼30回分だよ。絶対お得じゃん!」

 マイミは乗り気だけど、なんだろう。嫌な予感がする。

「ちょっと待ってマイミ。その依頼たぶんやばいよ。気をつけた方がいいって」

「私もそう思う」

「えーなんでーいーじゃんいーじゃん。リューラもそう思うよね?」

「ミチノコ、聞いたことがありますわ」

「知っているのかリューラ!」

「ええ。どこかの山に生息しているという、珍しい生物ですわ。モンスターかも怪しいと言われている程に」

「え、じゃあこれモンスターじゃないの?」

「だが、珍しいのだろう。どうやって探す?」

「そこはお任せください。私のドラゴンセンスレーダーがあれば、きっとミチノコなんてすぐに見つかりますわ!」

「でもそれって結局勘だよね」

「はいですわ。ですがこれでも勘は鋭い方です!」

「ほら、リューラもこう言ってくれてることだし、受けようよ依頼!」

「もう、仕方ないなあ」

「では、今回だけだぞ」

「よっしゃあ! じゃあ皆しぶったから、分け前は私が多めでいいよね!」

「いや、そこは4等分だ。リューラも仲間になったしな」

「私はドラゴンなので、お金なんて気にしませんが」

「私達が気にするの。リューラも一緒にお金貯めよ!」

「はい、わかりましたわ。では、私はお姉様方のいざという時の財布としてお金を貯めておきます!」

「んーまあ、一緒にミチノコ探してくれるならそれで良いか!」

 というわけで、依頼書をアーミットのもとへ持っていった。


「あー。あなた達、これを受けるのね」

「はい。大丈夫です。やる気と自信はあります。主にマイミとリューラが!」

「ううん。ドラゴンがいたらなんとかなるか。きっと。でも、一応言っておくけどこういう珍しいターゲットの捕獲依頼は基本、捕獲に成功してから依頼を受けるものよ。珍しくない場合は引き取り手を確定するために手早く受注するけど」

「あ、じゃあやっぱ他のを受けま」

「はい。受注完了。もちろん依頼失敗したらポイントマイナスだから」

「アーミットーっ。今わざとやりましたね!」

「やる気と自信はあるんでしょ。たまには苦労しなさい。いや、苦労するかはわからないけど」

「くう、ぬかった」

「わ、私が悪いわけじゃないよ!」

「大丈夫ですわ。お姉様方。生き物一匹くらい私が難なく見つけてみせます!」

「よし、それじゃあリューラ。頼んだよ!」

「ええ、絶対捕まえますわ!」

 というわけで、ちょっとドタバタしながらもドラゴンリューラに乗せてもらい、飛んだ。


 山なう。

「とうちゃーく。きっとここにミチノコがいますわー!」

「本当にいるかなあ」

「どうせ見つけなければならないんだ。やるぞ」

「よっしゃー、即見つけてやらー!」

 私達がそう言ってドラゴンの背から降りた瞬間。

 目の前に、尾が2つに別れたオーロラボディーの蛇を発見した。

 本当に体がオーロラのように輝き、常に変色しているのだ。それは本当に、きれいな蛇だった。

 数秒間、見つめ合う。

 ガサガサっ。あ、蛇が茂みの中に隠れた。

「きっと今のがミチノコですわー!」

「なにー!」

「急展開すぎるっ」

「追えー!」

 私、マトバ、マイミが叫んだ瞬間、山のモンスターが現れた。

「ダー!」

「タイ!」

「ヘン!」

「わー、どこにでも現れる中堅モンスター、ダータイヘンが三体も現れた!」

「戦うしかないか!」

「お前ら邪魔だー!」

 ビシーンバシーンピシャーン!


「ダーッ」

「タイッ」

「ヘンッ」

 どさりばたり。変態達は倒れた。あいや、モンスターは倒れた。

「ふー、やった。ひとまず」

「皆、キャバクランニングに遊びに来てね!」

「ですわ!」

 ダータイヘン達はすぐに立ち上がり、私達に向けて変なポーズをすると、ドロップアイテムのブリーフを置いて去っていった。

「ブリーフはおいとこ」

「ミチノコはもう遠くに行ってしまったかもな」

「そんなのは許せない。必死に追わなきゃ!」

「よし、とにかくまた探そう!」

「おー!」

 私達はこうして、山の中を歩き始めた。


 しばらくすると。

「何これ、麦畑?」

 山の中で、麦畑を見つけた。

「ふーむ。お前さん達、人間だな。よくこんな所にまで来たな」

 そして麦畑から、小さいおじさんが現れる。

「こんにちはー!」

「おじさんはここの人?」

「おう。わしは麦おじさんだ。ここでこの戦闘食料、ムギュムギュ麦を育てておる」

「ああ、これって戦闘食料なんだ」

「立派なものだな」

「うーむ。本当に立派ならいいんだがなあ。残念ながら今の時期はいまいちなんだ」

「なんでなんですか?」

「ムギュムギュ麦は特殊な性質を持っていてな。美女のあえぎ声を聞いてご立派になるんだ」

「なんだそれ」

「絶対嘘だ!」

「流石にその話は信じられないな」

「本当ですわ」

「え?」

 私達はリューラを見た。

「ムギュムギュ麦は近くで男女がムギュムギュしてると、自然と元気になっていきますの。たぶん声だけでもオーケーですわ。ご立派になったムギュムギュ麦を使ったムギュビールは最高にゴク美味ですわ」

「そ、そうなんだー」

「世の中には、信じられないような本当の話もあるんだな」

「いや、嘘だと言ってよリューラ」

 私、マトバ、マイミはそう言うが、麦おじさんとリューラは平然としている。

「まだこの山でハーピィとオスのハービィが繁殖する時期来ないからな。それまでムギュムギュ麦の調子はいまいちなんだ。だが」

 麦おじさんは真顔で私達を見た。

「お前たち、丁度年頃の女子だな。じゃあちょっとあえいでみてくれ。それで麦が立派になったらムギュムギュビールをごちそうしてやるぞ」

「ふざけんな!」

「そんなことできるかー!」

「ビールも今は飲むべきではない。報酬になると思うな!」

 このエロおじさん調子にのりすぎ!

「まあまあ、お姉様方。ここは麦おじさんの話にのってもいいのではありませんか?」

「なんでリューラ」

「ムギュムギュビールは本当に美味しいのですわ。お姉様方にもぜひ飲んでいただきたいのです」

「そんなこと言って、本当はリューラが飲みたいだけじゃない?」

「ギクッ。な、なんなら私があえぎますわ。それでよろしいのですよね?」

「ああ。もちろん嬢ちゃんでもオーケーだ。ていうか嬢ちゃん、すげー気迫だな。本当にただの嬢ちゃんか?」

「では、ごほん。リューラ、もちろんお姉様方のためにあえぎます。いやーん。あはーん。そこはダメーん」

 しーん。

「なんにも起きないね」

「この麦ども私をバカにしているのですか!」

「リューラ、逆ギレはダメ!」

「やはり私達には無理なことだったのだ」

「はっ、そうだ。お姉様方。私をいつものように鞭で打ってくださいませ。そうすれば必ず、最高のあえぎ声が出ますわ!」

「うっ。本当の話なのがつらい」

「いいの、リューラ。まだ日は高いよ?」

「ええ、かまいません。お姉様方。私のことは気にせず、どうぞ」

「いや、どうしても気にするのだが鞭打つ相手だし」

「そんなに言うんなら仕方ない。いくよ、リューラ!」

「しょうがない。今日は少し早いけど、覚悟!」

「はい、どうぞきてください!」

「ヘブンストーム!」

 スパアンスパアンスパアーン!

「あひー、すごいー、全身喜んじゃうー!」

 リューラはいつも通り、気持ち悪く叫んだ。

 すると、どういうことでしょう。

 たちまちムギュムギュ麦の穂が金色に輝いていくではありませんか。

「おお、成功だ! これでまた美味い麦がとれる!」

 麦おじさんはそう言って、笑顔で麦を刈り取り始めた。


 その後。

「ふう。いっぱい刈り取れて満足した。ではお前さんらにこれをやろう。刈り取ったばかりの麦と、ムギュムギュビールをいつでも出せる権利だ」

「ありがとうございまーす!」

「麦はありがたくいただいておいて、せっかくだからビールも早速飲もう!」

「いでよ、ムギュムギュビール!」

 私達はムギュムギュビールを飲んだ。

「超美味しい!」

「これがビール、信じられない!」

「力が湧いてくる。さすが戦闘食料だ」

「これこれ、これですわ。んー、良い味」

 そうして、私達がムギュムギュビールを飲んでいると。

 ガサガサ。

 茂みの中から、ミチノコが現れた。

「ミュー」

「あ、ミチノコ」

「ひょっとして、ムギュムギュビールが欲しいの?」

「ミュー!」

 ミチノコはうなずく。

 私はそっとムギュムギュビールを生み出して、一歩引いた。

 すると、そろ、そろっと、ミチノコがゆっくりビールに近づく。

 固唾をのんでそれを見守る私達。

 そして、今だ!

「うりゃー!」

 私達は一斉に、ミチノコにとびかかった。

「やったー、ミチノコを捕まえたぞー!」

「よっしゃあー!」

「なんとか上手くいったな!」

 喜ぶ私達。その中で、ミチノコは与えられたビールをごくごく飲んでいた。

「ごく、ごく。ミュー♪」

 ミッション、コンプリート。


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