71 地下牢でおしおき
「ウタハ、マイミ。同時攻撃は悪手だ。ここは連携攻撃で倒す!」
「おうよ!」
「じゃあまず私から行くよ!」
私がそう言った瞬間に、カエルが動いた。狙いはマトバだ。
この接近が一番速かったが、私が既に技を出すモーションに入っていたため、なんとか迎撃に間に合う。
「ウェルカムトゥヘブン、イチコロの型!」
鉈でガードされたが、全部当たった。カエルがマトバに当たる前に、私が鞭でカエルを打ち上げる。
「ウェルカムトゥヘブン、胸キュンの型!」
そして今度はマトバが攻撃した。
カエルは舌を伸ばして天井に足をつけ、更に移動して間合いから外れる。けどその際に、2、3発は当たった!
「ウェルカムトゥヘブン、骨抜きの型!」
マイミが更に追い打ちし、相手に息をつかせない。
けれど、ここで私達は戦慄した。
なんとカエルは、床の上で回避に専念したと思ったら、マイミの必殺技を軽やかなステップで完全回避したのだ。
「な、こいつ、当たらない!」
「どうやら、私達よりも圧倒的に戦闘力が上らしいな」
「じゃあ、どうするの!」
私は困惑した。私達の鞭が通用しないなら、こいつには勝てない!
「一応言っとくが、私らは悪魔にかかりっきりだから、助太刀なんてできねえぞ!」
ジュアリーさんが悪魔と戦いながらそう言ってくれた。そうだ。敵はまだ他にもいる。だからこのカエルは、どうしても私達が倒さないといけないんだ!
でも、どうやって?
「ウタハ、マイミ、マトバ。こうなったら一か八か、接客バトルをしかけるのよ」
ここで先輩がそう言った!
「でも、もし通用しなかったら!」
「大きな隙をさらしますよ!」
「下手したら、大ピンチに陥ります!」
「あなた達、先輩に口ごたえしない!」
「はい!」
ああっ、すっかり後輩魂が反応する!
すると、先輩はニッコリと微笑んだ。
「大丈夫よ。自分たちのキャバ嬢魂を信じなさい」
「キャバ嬢、魂」
「私達の、ソウル」
「そうだ。私は、キャバ嬢だ」
私、マイミ、マトバはそう言った。
そして次の瞬間には、覚悟を決めて唱和する。
「私達が、キャバ嬢だ!」
よし、腹は決まった。カエル様が何様じゃ、こっちは通常戦闘が通用しなかったら、接客バトルがあーる!
「カエルさーん、誘惑攻撃!」
私は精一杯カエルを誘惑した!
「続けて、おしゃべり攻撃!」
マイミも一気にいく!
「ドリンク攻撃!」
マトバもワインをボトルごと投げつけた!
「ゲロ?」
するとカエルは、ワインに反応した!
「ごく、ごく、ゲロ」
「おお、飲んでる!」
「いいぞ、マトバ!」
「いつか役に立つかもしれないと思って携帯していたアルコールが役に立ったな!」
「マトバ、もっとやっちゃって!」
「いっけーマトバー!」
「ああ、もう一度ドリンク攻撃!」
「私は誘惑攻撃!」
「私はおしゃべり攻撃!」
「ゲロ、ゲロゲロゲロー!」
すると、カエルはすぐにお酒で撃沈されてしまった。
「よし、気合い十分、ニューチャームスマイル!」
「私も、ファインフォルテッシモ!」
「お酒はもう終わりだ、清楚トレビアンヌ!」
「ゲーロー!」
とどめを受けて、カエルは見事ダウン!
ばったりと仰向けに倒れた!
「やったー、勝ったー!」
「よーし後はー!」
「悪魔と召喚士を倒すだけだな!」
「頑張って、皆!」
「はい、先輩!」
私達はすぐに、マーミさん達の戦闘に参戦した!
「く、まさかエビルバーサークフロッグがやられるとは。仕方ない、増援を出すしか」
「えいっ」
ブスリ。
「な、この、卑怯な。背後から、槍で、刺すとは」
「安心しろ。もっと刺してやるぞ。死なない程度にな。えい、えいっ」
ブスリ。ブスリ。
「あ、ちょっと、やめ、これしぬっ」
「リーゼルン、私も手伝います」
「私も矢で刺しちゃおっかなー。みねうちの判断は私がするわ」
「ああ、頼んだライハ」
「どうやら味方は全滅のようね。でも」
悪魔はここで目を光らせて、自身から発するオーラの衝撃でおっぱいをぷるんぷるんさせた。
「ここで本気を出したら、逆転くらいできるかしらね!」
「く、こいつ、ここまでの力を!」
「マーミ、手伝います!」
「えーい、ウェルカムトゥヘブン!」
ビシーンバシーンピシャーン!
幸い悪魔は私達の鞭を全てまともにくらってくれた。
「きゃ、きゃあ! なに、この衝撃、胸がビクンビクンする!」
「お前の胸はプルンプルンしすぎじゃー!」
「さあ、マーミ、今のうちに。必殺技とかあるんですよね!」
「ええ、とびっきりのがね。ホーリーパンチ!」
「ぎゃー!」
悪魔は顔面を殴られ、そのまま倒れた。
そして辺りは静かになる。
「あ、新緑の刃も無事だったのね!」
「ええ。運良く2階から戻ってきたら、敵の背後をとれました。後は後ろからズブリですよ」
「そいつ、生け捕りにしてくれたのよね。ありがとう。それじゃあ、私がこいつから洗いざらい聞き出すわ」
「え、先輩がやるんですか?」
「ええ。護衛と家をこんなに傷つけてくれたんですもの。ちょっぴりおしおきしないとね?」
先輩がにっこり微笑む。
そういえば、室内で戦ったから辺りはメチャクチャだ。
「あー。2階もひどいことになってますよ」
リーゼルンさんがそう一言告げた。
「それじゃあ、こいつを地下の牢屋に入れてくれないかしら?」
先輩がそう、楽しそうに言った。
「あ、ここって地下牢、あったんすね」
マイミがそう言ったところで、私達は作業にとりかかった。
新緑の刃が召喚士に包帯を巻いた後、地下牢へとひきずっていく。それじゃあ私達は、まずは掃除、かな。




