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68 新たな護衛

 朝早くに警官がたくさんやって来て、まずは事情聴取。

 私達のところにも警官が事情を聞きにきたけど、ガリューからの依頼を受けたら、こうなったとしか話せない。

 私達だけギルドの依頼書から依頼を受けたわけじゃなかったけど、先輩が私達を保証してくれた。

 ていうか、先輩の護衛って☆5〜依頼だったんだって。私達じゃ本来受けられないはずだよ。

 自殺した侵入者からはあまり手がかりを見つけられなかったらしい。さすが侵入者。証拠は残さない、か。

 その後、しばらくの間警官が屋敷周辺を念入りに警備してくれることになった。これは正直助かる。警備があれば、新たな侵入者は来づらいはずだ。

「もう曲者が来なければいいんですけどね」

「わからないわ。時間が経てば安全という保証はないもの」

「先輩、気持ちはわかりますが、常に怯えていても仕方ありません。まずは、ガリューが来れば一安心だと思っていいのではないでしょうか」

「そうね。不安に苛まされてもしょうがないし、あまり心配しないようにするわ。だから、それまでの間、護衛よろしくね?」

「はい!」

 先輩の心のケアも欠かせない。自分が狙われてると思ったら、気が気じゃないもんね。ここは私達がしっかり心の支えもしよう。

 新緑の刃も一緒に屋敷の客間でお茶をしていると、朝早くに新しい護衛がやって来た。

「5ランクパーティ、怒涛の角だ。護衛依頼を受けにきた」

 彼らは皆男で、長い槍を持っていた。私達はひとまず全員で彼らと面談する。

「ちょうどよかったわ。昨晩騒ぎがあって、まだ不安だったの。あなた達も守ってくれるなら、安心できるわ。まあそれも、この子達と仲良くできるならだけど」

「それなら心配ご無用。俺達は見ての通り槍を使う。槍は長さの関係上室内では使い勝手が難しい。故に俺達は常に全員で外を見張る。曲者は1人たりとも通さないと約束しよう」

 ちょっとイケメンな青年が自信たっぷりに言う。

「それじゃあ、おまかせしようかしら。それじゃあお庭をお願いね。何かあったらメイドに言ってちょうだい」

「ああ、わかった」

 怒涛の角との話し合いは、なんだかあっさり終わってしまった。

「私達も時折庭に行くとしよう。いざという時、連携ができるようにな」

「ああ。そうしてもらえるとありがたい」

「キャバクランニングエンジェルス。お前たちも庭に行く順番を決めておけ。連絡をマメにしあうんだ」

「あ、はい。わかりました」

 冒険者同士、協力し合おうというわけか。確かにその方が良いかもしれない。

 けどひとまず新緑の刃と私達三人は、基本先輩を間近でボディーガードするという役目になった。


 それから私は、連携のために呼笛を買いに行ったり、冒険者同士で話をしたりして午前中を過ごす。すると、お昼ごはんを食べた後に新たな冒険者がやって来た。

「6ランクの小進軍だ。護衛の依頼を受けに来た」

 彼らは男女2人ずつの4人パーティだった。この申し出も先輩は受ける。

 すると小進軍の皆さんは女性だけ先輩の近くに残って、男2人は庭で警護すると言ってくれた。

 先輩のことを慮ってくれたのだろう。先輩の近くが大所帯になってしまうのもどうかと思うので、提案通り分かれてもらう。

「これだけいてくれれば、安心ね。ちょっと雇いすぎた気もするけど、折角来てくれたんだからいいわよね」

「はい、そうですよ先輩!」

「この布陣で乗り切りましょう!」

「後は、ガリューが帰ってくればこちらの勝ちですね」

 その後、午後はカードゲームも飽きたということで、先輩はちょっと散歩すると言い出した。

 散歩といっても、庭の中まで。それだけでも結構歩ける。庭にはちょっとした花壇もあった。ちょっとは気晴らしになるだろう。

「そういえば、新緑の刃とあなた達の活躍はあったけど、今日来た皆さんのことはわからないわね」

「では、ここで一度模擬戦でもしますか?」

 先輩がぽつりとつぶやくと、小進軍の女性が言った。

「じゃあ、頼めるかしら?」

「おまかせを。奥方。ジュアリー、少し体を動かしますよ」

「はいよー。といっても、私は手加減ありありだけどねえー」

 小進軍の魔法使いがジュアリーさん、僧侶がマーミさんというらしい。

 その2人が、少し離れて軽く戦った。

「ふ!」

「よっと、ウインドガード」

 マーミさんは僧侶と言っていたが、杖を隙無く構え、素早い動きでジュアリーさんを叩く。

 けれどジュアリーさんは突風を上手く操り、接近するマーミさんをことごとく吹き飛ばし続けた。それが何度か続く。

「ロックシュート」

 何度もマーミさんをいなしたジュアリーさんは、今度は石を複数出現させて、それをマーミさんにぶつける。結構仲間に容赦ない。

「よ、は!」

 けれど、マーミさんもすごかった。

 マーミさんは杖で飛来する石をことごとく叩き割っていた。あの杖普通に凶器だよ。つえー。

「さて、こんなところでいいかな?」

 ジュアリーさんが偉そうに言う。

「ええ。凄いわ。とても心強い」

 先輩も満足そうに言った。

「えっへん。これでもランク6だからね」

「男二人はこれ以上やれることを保証しますよ。まあ、私達もまだ本気ではありませんでしたが」

 うへえ。6ランクって凄いんだなあ。

「6ランク冒険者ってこんなに強いんですね。尊敬します!」

 あ、マイミがすかさずよいしょした!

「まあね。キャバクランニングエンジェルスは3ランクだっけ。頑張ってね」

「はい!」

「そういえば、キャバクランニングエンジェルスはどうやって護衛依頼を受けたの? 5ランク以上が条件だったと思うけど」

「ガリューに捕まって、そのままスカウトされました」

「ふうーん。コネかあ。まあ、きちんと戦力になるなら文句はないけどね」

「さて、次はどうします?」

「それでは、怒涛の角の強さも見に行きましょう。気晴らしにもなるでしょうし」

 シュミリーさんがそう言ったので、その通りに怒涛の角に会いに行った。

 まず1人、捕まえる。

「ん、奥方。庭に出てきて、どうかされたのですか?」

「いいえ、これはただの散歩よ。でも折角だから、皆さんの実力を知りたいと思って。折角ですから、ここで誰かと模擬戦してもらえませんか?」

「そうですか」

 彼は私達を見ると、ジュアリーさんを見て言った。

「では、小進軍の方と手合わせ願いたい」

「私パース。さっき運動したばかりだし。マーミもパスね」

「え、ええ」

 ええ、2人共ここで断るの?

 そう思ったら、ジュアリーさんが私を見て二イッと笑った。

「そのかわり、キャバクランニングエンジェルスの実力を見たいなあ。ね、良いでしょ?」

「えっ」

「え!」

 私とマイミは露骨に反応する。

「わかりました。いいでしょう。私がお相手します」

 けれどマトバが果敢に飛び込んだ!

「ちょっとマトバ、大丈夫?」

「何、やるのは模擬戦だ。危険はない。むしろ、上のランクの者と戦える機会などそうはない。これはむしろチャンスだ」

「凄い、マトバ、戦闘バカだ!」

「じゃあ、ここはマトバに任せるよ!」

「ああ。戦闘はそれなりにする程度だが、少し頑張ってくる」

「俺の相手は彼女か。それじゃあ、少し張り切るかな。俺はローレット。よろしく」

 彼、ローレットさんはそう言うと、微笑んだ。


「それでは模擬戦、はじめー!」

 マイミがそう言うと、ローレットさんが素早く間合いを詰めた。

「ふっ!」

 そのままリーチを活かして槍で突く!

「はあ!」

 マトバは鞭を振って槍を弾き、かろうじてしのいだ!

「ふ、は!」

「は、やあ!」

 その後もローレットさんが攻撃をしかけ、マトバが必至に防御、回避に専念する。

 まだ決着はつかないけど、マトバが苦しそうだ。がんばれ!

「いけーマトバー!」

「マトバ、頑張って!」

「ふ、ウェルカムトゥヘブン!」

 私達が応援すると、マトバは必殺技をくりだした。

 でも、ローレットさんに当てるにはあと一歩踏み込みが足りない。暴れ狂う鞭はひたすら、ローレットさんの槍を打ち付ける!

「く!」

 そこで、ローレットさんが顔を歪めた。ああっ、ローレットさんの槍がどこかへとんでいきそうな程それる!

 そこですかさず、マトバが相手へととびこんだ。

「ここだあ!」

「なんの!」

 槍と鞭が、同時に振られた。

 ばしーん!

「くうう!」

 ローレットさんが顔を歪める!

 けど槍の先もマトバのすぐ目の前を通り過ぎ、あと少しでも伸ばされていればただではすまなかった。

「どうやら、引き分けのようですね」

「ああ、そうだな。けど、鞭って痛いなあ。鎧越しなのに」

 ローレットさんがそう言って笑った。

「へえ。3ランクには見えないねえ」

「ええ、そうですね」

 ジュアリーさんとマーミさんはマトバを見てそう評する。

「それじゃあ、引き分けね。どちらも強くて私、安心だわ」

 先輩が笑顔で言う。

「マトバー!」

「マトバー!」

 私とマイミはマトバに近づいた。

「お疲れ様、危なかったね!」

「やっぱ模擬戦でも危なかったじゃん。無事で良かったよ!」

「ああ。2人共、なんとか意地は通せた感じだ。だが、ローレットさんはたぶん奥の手を隠している。新緑の刃との時もやられたが、私はどうやら、まだまだのようだな」

「そんなことない、と思いたいけど、相手は高ランクだから仕方ない!」

「むしろよく引き分けてくれた。でかした!」

「ところで、マトバ」

 とここで、ローレットさんが話しかけてきた。

「なんですか、ローレットさん」

「君強いね。彼氏いる?」

 な、ナンパだー!

「いえ、いません」

「だったら、これからちょくちょく会わない?」

「いいえ、私はまだそういうお付き合いは考えてないので」

 そしてマトバはあっさりフッた。

「そうか。それは残念。でも、折角知り合えたんだ。暇があれば先輩冒険者のあれこれを教えてあげるから、時間が余った時は俺のこと、思い出してくれよな」

「はい。では、また機会があれば頼りたいと思います」

「よし。では次に行きましょう。またね、ローレットさん。警戒よろしくー」

 先輩がそう言って、私達はまた歩き出した。

 気晴らしとはいえ、軽く模擬戦したらマトバが言い寄られるとか。ちょっと気が緩みすぎた気がする。

 よし、今からちゃんと、心を引き締めよう!

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