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67 自害する侵入者

 侵入者達は言葉ではなく、攻撃で返答した。

 武器は短い剣だが、鋭い突きで喉を狙ってくる。鞭では防御し辛いが、狙いがわかりやすい分かわしやすい!

「ほ!」

 私は横に動きつつ、カウンター気味に鞭を振った。

 と思ったら、回避した分相手の腕が追尾してくる!

 一瞬ひやりとした。けれど相手の攻撃より先に、鞭が相手の脇腹に当たる!

「!」

 相手はよろけ、その分攻撃がそれる。私の首に刃がかすった。

 死んだかと思ったけど、今がチャンス!

「とりゃー!」

 全力で連撃をしかける!

 相手は一度はかわし、更に剣で弾いたが、それでも怒涛の連続攻撃をかわしきれない!

 ビシーンバシーン!

 いい攻撃をお見舞いしてやった。けれど急に後ろに退いて、背中を向けて逃げられる。

「逃がすかー!」

 そう思った私だったが、相手の方が速い。あっという間に姿を見失う。

「うう、マイミ、マトバ!」

「大丈夫、こっちは倒したよ!」

「捕まえておこう」

 幸い、もう1人の侵入者は2人が倒してくれていた。

「ウタハ、木魔法で縛り上げてくれ」

「わかった!」

「く、ぐはっ」

「あーっ、侵入者が血を吐いたー!」

「これは、口の中に毒物を仕込んでいたか。やられたな。こいつはもう、死んでいる」

「そんな。まさか、自殺だなんて」

 私は思わず血の気が引く。こいつ、自分の死すらもためらわないの?

「どうしよう、マイミ、マトバ!」

「ここは先輩の元まで戻ろう。他にも侵入者がいたら不安だ。守りを固めよう」

「よしわかった!」

「こ、この死体は!」

「放っておけ。今は先輩の方が大事だ」

「う、うん」

「ウタハ、ドンマイ!」

「わ、わかってる。まずは、先輩だね!」

 私達はダッシュで先輩の元まで戻った。

 先輩は、無事だよね?


 部屋まで戻ると、先輩は部屋の真ん中で立って不安そうにしていて、窓辺にシュミリーさんとライハさんがいた。

「こっちは大丈夫ですか!」

「今交戦中!」

「丁度いい、奥方の周囲を守れ」

「はい!」

 私達は先輩を囲んで扉と窓の方を注意する。すると、ライハさんが数度矢を放ったところで、シュミリーさんがこちらを見た。

「壁を登ってきていた敵は、追い払えました。まだ注意は必要かもしれませんが。そっちは何がありましたか?」

「階段で侵入者と遭遇しました。戦いましたが1人は逃走。もう1人は毒を飲んで自殺、みたいです」

「そうですか。よく戻ってきてくれましたね」

「壁を登ってきてたんですか? 手で?」

 マイミが訊く。

「そう。数は三人。こっちの方が多かったから、本命はこっちだったか。でも、まだ敵が来るかもしれない。可能性は低いけど」

 ライハさんがうなずいてそう言う。

「どうして可能性が低いといえるんですか?」

 マトバが質問した。

「相手が逃げたから。こういうのは、足並みをそろえるでしょ。仲間がもっといたら、もっと強引にきていた」

「なるほど」

「じゃ、じゃあ、これから、どうしましょう」

 私が不安混じりにそう訊くと、シュミリーさんがうなずいた。

「今から三人で警官を呼んできてほしい。行けるよね?」

「は、はい!」

「三人で行ってもいいのか?」

 マトバがそう言ったけど、シュミリーさんがうなずく。

「1人ぼっちじゃ不安でしょ。今はなおさら。2人でもいいけど、ここは私達がいれば大丈夫よ。それとも、1人ここに残る?」

「わかりました。では、ウタハ、マイミ、三人で行こう」

「う、うん。でも、2人でもよくない?」

「そうだよね。何もここを手薄にしなくても」

「それは、不安だからだ。狙われてるのは先輩だろうが、私達が新たに狙われないともいい切れない。私は2人が心配だ」

 そうだ。もしかしたら、警官を呼びに行った私達が途中でやられる、なんてこともあるかもしれない。

「わかった。それじゃあ、三人で行こう」

「シュミリーさん、ライハさん、ここは任せました!」

「ええ。新緑の刃を信じて」

「急ごう!」

「オッケー!」

「ああ!」

 私達はダッシュで部屋を出た。

 屋敷を出る時、血まみれのリーゼルンさんと会った。

「あ、リーゼルンさん。無事だったんですね!」

「良かった、生きてた!」

「リーゼルンさん、ケガはありませんか?」

「ああ。私は大丈夫だ。なんとかな。それより、1人賊を倒したが、自害されてしまった。奥方は無事か?」

「はい、先輩は無事です!」

「今はシュミリーさんとライハさんが守ってます。リーゼルンさんはどうしますか?」

「私もあいつらと顔を合わせてくる。少し血なまぐさいから、部屋には入らないがな」

「そうしてくださると安心です。では私達、今から警官の所に行ってきます!」

「ああ。気をつけてな」

「はい!」

「わかってます!」

「特に後ろを警戒しとけよ」

「わかりました!」

「全方位警戒します!」

 私達は急いで警官詰め所に向かった。


 幸い私達が道中狙われることはなく、夜番の警官2人が現場に駆けつけてくれた。

 それからは何事もなく時間が過ぎ、やがて朝がきた。


「皆、本当にごめんなさい。まさか、こんなことになるなんて」

 朝ごはんを皆でとっている時、先輩がそう言って申し訳無さそうにした。

「いいんですよ、先輩。むしろ、先輩が無事で良かったです!」

「そうですよ。私達そのためにいるんですから!」

「むしろ、少しでも役に立てて良かったです」

 私、マイミ、マトバがそう言う。

「それに、護衛はこれで終わりではありません。おそらくしばらくの間、警戒が必要でしょう」

「もっとも、私達が護衛として合格なら、な」

「そこらへんは、どう?」

 シュミリーさん、リーゼルンさん、ライハさんが言った。

「もちろん、合格よ。命を助けてもらった恩は忘れないわ。そしてこれからも、よろしく」

 先輩が微笑んだ。

「では、これからも護衛、謹んでお引き受けいたします」

「ええ。でも、あのガリューったらどこいったのかしら。こんな時こそ、彼がいてくれればいいのに」

「1つ言わせてもらいますが、奥方。おそらく、ドラゴンがいないから昨晩狙われたんだと思います」

「え?」

「敵は奥方の寝室をまっすぐ目指していまいた。屋敷の間取りや護衛状況等、こちらの下調べは万全にしているはずです」

 シュミリーさんにそう言われ、私達は思わず黙り込む。

 もしかしたら今回の件、とんでもなく危ないのかもしれない。

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