64 ガリューはお父さんであった
「おお、お前たち。丁度いいところにいた。折角だ。力を貸してくれ」
冒険者ギルドに行くと、ドラゴンのガリューとばったり出くわした。
「あ、ガリュー。どうしたの?」
「ガリューが冒険者ギルドにいるなんて珍しいね」
「もしかして、冒険者に依頼か?」
「ああそうだ。今すぐに人手が必要でな。依頼内容は、俺の妻の護衛だ。もちろんやってくれるよな?」
「それは先輩の護衛ならやらないこともないけど」
「でもガリューは強いじゃん。ガリューがいればいいんじゃないの?」
「俺もそう思っていたんだが、昨日妻に、うっとうしいからぴったりくっつくなと言われてな。それで仕方なく妥協して、護衛をつけることにしたんだ」
「ガリューそれやりすぎじゃね?」
「やりすぎではない。ドラゴンの愛だ」
マイミの指摘に、平然と言い返すガリュー。
「別に先輩の護衛をするのはいいですけど、何時までやればいいんですか?」
「この先ずっと護衛するってわけにはいかないじゃん?」
「少しの間だけでいいのか?」
「いや、妻の子が生まれるまでの間でいい。子が生まれたらそれからは俺のターンだ。父親として面倒をみまくる。ふふふ」
「あ、そうなんですか」
「ていうか、子供できてたんですねえ」
「おめでとうございます」
「ああ。それにもっと言うと、護衛は俺がつれてくる新しい護衛が来るまでの間でいい。お前たちの護衛は、本命、リューラをつれてくるまでの保険だ」
「へえ、そうなんだ」
「リューラって誰ですか?」
「俺の娘だ」
「ん?」
「え?」
「は?」
このドラゴン、今ナンテ言イマシタカ?
「ガリュー。もしかして、浮気?」
「というか、不倫?」
マイミとマトバがつっこんで訊く!
「違う。これはハーレム作り的正義だ」
「やっぱり遊びだったんだ、不潔!」
「先輩を弄びやがって、許さない!」
「女の敵は、滅べ!」
私、マイミ、マトバは一斉にガリューを非難する。
「いや、違うぞ。俺は本当に新妻を愛している! キュンときたんだ、本当だ! それに、先妻は」
「先妻は?」
「怖い」
「それが言い訳になるかあー!」
「というか凶暴なんだ。癒やしがない。娘も最近冷たいんだ。だから俺は新妻に癒やされてるんだ。彼女も必要なんだ!」
「見損ないましたガリュー!」
「ていうか一回反省しろー!」
「どうやら、ここは天にかわって私達が裁かないといけないようだな」
マトバがそう言ったところで、私達は鞭を構える。
「おい、どうしたお前たち。鞭なんか構えて」
「問答無用、ウェルカムトゥヘブン!」
ビシーンバシーンピシャーン!
私達はガリューに敗北した。
「ふむ。鞭だけじゃない。全体的に能力値が上がっているな。これなら護衛にも使える」
「ううう。かてない」
「なんで、くやしい!」
「腐ってもドラゴンかっ」
「うるさい。俺は立派なドラゴンだ。ということで、妻の護衛、頼めるな?」
「はあーい」
私達は返事をした。
「よし。あと今ギルドで複数パーティへの依頼も出したところだから、きっとすぐに護衛は増える。彼らと上手く連携して妻を守ってくれ」
「はあーい」
「それでは今から屋敷に案内しよう。妻も待ってる」
ガリューにそううながされて、私達は仕方なく移動することにした。
やって来たのは、凄い立派なお屋敷。とっても大きいし、庭も広い。
「すごーい」
「ここに先輩がいるのー?」
「ああ、そうだ。妻は大事だからな。それなりに良い家を用意した」
「金と貢ぐ規模だけは目を見張るものがあるんだがなあ。まさかの不倫とは」
「不倫ではない。新しい愛の形だ」
「はいはい」
「クズにはクズって言っても無駄なのね」
「こうなったら先輩を励まさないといけないな」
屋敷に入って先輩に会う。
「先輩久しぶりですー」
「元気でしたかー」
「私達、護衛に来ました」
「あら。ウタハ、マイミ、マトバ。いらっしゃい。そう、あなた達がガリューがつれてきた護衛ね。ありがとう、あなた達がいてくれれば心強いわ」
先輩は私達を見てにっこり微笑む。なんか、前と雰囲気が違う。もうお母さんって感じのオーラだ。
「妻よ。まだ護衛は増えると思う。もう少しの間それでしのいでくれ」
「一体何をしのぐのよ。もう、護衛なんて、あなたは大げさなんだから」
「お前とお腹の子を狙う不届き者がいるかもしれないだろ! 俺は心配なんだ!」
「はいはい。ありがとうございます。さあ、もう行ってください」
「う、うむ」
ガリューはうなずくと、私達を見た。
「それでは、よろしく頼むぞ。お前たち」
「うん。先輩のことは任せて!」
「そんなに危険なんてないだろうし、大丈夫っしょ!」
「きちんと護衛は果たす」
「護衛の期間中、お前たちもこの屋敷で寝泊まりしろ。そして夜の間も任せたからな。ネズミ一匹近寄らせるなよ」
「はーい」
ガリューは去った。私達は先輩と向き直る。
「それで先輩、本当に赤ちゃん生まれるんですか?」
「ええ。そうよ。まだ小さいけど、すっごい力を感じる。赤ちゃんって強いのね」
先輩がそう言ってお腹をなでる。もう母性があふれてるよ。
「おめでとうございます。夫があの不倫ドラゴンっていうのはダメだけど」
「そうね。まさか私も、先に妻や娘がいるとは思わなかったわ。でも、できちゃったし。しょうがないかなって」
「おおう。なんとも言えませんね」
「それにガリューはお金持ちだし、暮らしは悪くないわ。家事もメイドさんがやってくれるしね」
「いいなー玉の輿ー。私も良い男見つけたいー!」
「そうだな。そんな男がいればいいな」
「ガリューは良い男ではないと思うけどねえ。あ、先輩。先輩の前ですみません」
「うふふ。いいのよ。私もガリューの顔を一度殴ったから」
先輩は笑ってそう言った。
「でも、あなた達が来てくれたから、外出もできるわね。ガリューったら、1人では危ないって、外にも出してくれなかったのよ。まったく。過保護だと思わない?」
「あいつ下半身は最低だけど、でも先輩のことは大事にしてるみたいですよ?」
「護衛も更につくそうです」
「あんまり護衛が増えても大所帯になっちゃいますし、今のうちに外に行きましょう!」
「そうね。皆と楽しい時間が過ごせるように、ゲームか何か買いましょうか?」
「いいですね、いきましょう!」
「おお、護衛中は遊び放題か、いいね!」
「ゲームをするのも久しぶりだな」
私達はメイドさんに外出するむねを伝えて、おもちゃ屋に向かった。
護衛もいつまで続くかわからないし、長期的に考えてた方が良いよね。
PV2千感謝!
ということで続きを投稿することにしました。気力復活しました。
ストックはまだ少ないですが、少しでも面白くなるよう頑張りたいと思います。
ニリハの初恋旅を少し優先したいので、一週間に一度くらいのペースで投稿します。




