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63 ダンジョン探索のアドバイス?

「うーん」

「あーん」

「むうー」

 私達は掲示板を見ながらうなる。

 3、★3ランクの依頼は多い。多いけど、目的地が遠いんだよね。

 護衛依頼なんて、基本町から町へ移動の長旅。その他の、モンスター討伐や素材入手も、北西にある山での依頼が多い。

 その山へ行くのに、数日かかる。往復で更に倍。そんなの大変すぎる。だから私達は今、手軽に行けて半日で終わるような依頼を探していた。

 ガチムチリスの討伐も無いし、森の素材を採取するのも、やはり行くまでが遠いし、それに採取は見つからなければ何日でもさまよう危険さも抱えている。他の討伐依頼は無いし。悩ましい。

 でも、ここは選り好みしてはいられないかな?

 今お金には困ってないけど、どんどん活躍して実績増やしたいんだよね。

「あ」

「お、マトバ。なんか見つかったー?」

「一応見つけた。お金もそれなりに稼げて半日で終わりそうで、しかも町中で片付く依頼だ」

「お、やったじゃーん!」

「じゃあ、それ受けよう!」

 マイミと私がそう言うけど、マトバはまだ難しそうな顔をしていた。

「まず、これを見てくれ。これをどう思う?」

「ん?」

「えっとお、どれどれ?」

 私とマイミは、マトバが指さした依頼書を見た。


 ★3〜 ダンジョン探索のアドバイス。

 条件。礼儀正しい。強い。新ダンジョン、フルーツダンジョンを攻略した方。

 依頼主。セルジ。


「おー、こんな依頼もあるのか。3ランクの周りにないから見逃してた!」

「からって依頼、初めて見るね。でも、アドバイスだけで済むなら、いいんじゃない?」

「私達礼儀正しいし強いし、たぶんこれ、西の森の私達が見つけたダンジョンのことだよね。なら私達にピッタシじゃない?」

「私もそう思う」

 私はマイミに賛同する。でもマトバの表情はまだ明るくない。どうしたのかな?

「そうか。2人はセルジを知らないか」

「うん」

「マトバは知ってるの?」

「少しだが知っている。セルジはエルビ子爵のご子息で、その、凄く気位が高い」

「気位が高い」

「それって、嫌なやつってこと?」

 マイミの発言がストレートすぎる。

「少なくとも、あまり良い噂も聞かないな。まあ、私も会ったことはあるが。少し、いやかなりわがままだ。少しでも気に入らなければ町から追放したり、警官の牢屋に入れられたりする。何かあればお金で解決するような男だ」

「それってクズじゃん!」

「なんか、絵に描いたような悪い貴族様なんだね」

 やはりマイミの発言がストレートすぎるが、私もこの時点で良い感じがしない。

「ああ。だからセルジの評判は普通に悪いはずなんだが、きっとそのせいでこの依頼はまだ残っているんだろうな」

「じゃあ、そんな依頼も無しだね」

 依頼主が最低なら、受けないのが賢明だ。

「いや、私はそれで良いと思う」

「ちょっとマイミ、本気? マイミが一番ひどいこと言ってたじゃない」

「そうだけどさ。でもただアドバイスするだけでお金もらえるんでしょ。だったらちょろいじゃん。ちょっとやさしくしてあげて、速攻報酬もらおうよ!」

「そんなに上手くいくかなあ?」

「いける。私達の接客レベルは既に高い。もっと自信をもつんだ、2人共!」

 どうやらマイミはやる気のようだ。いやきっとたぶん、目の前のにんじんに釣られているお馬さんモードなのかもしれない。

 たぶん今マイミの目は、お金の形になっている。

「私は反対。大体アドバイスにお金をかけるっておかしくない? ちょっと不自然だよ。この依頼」

「私もそう思う。だが、依頼の条件が、少し気にかかる。もし他に依頼を受ける者がいなければ、私は受けてもいいと思うんだが。2人に嫌な思いはさせたくない。受けるかどうかは、慎重に話し合いたい」

「マトバ」

「つまりマトバも賛成ね。さあ、ウタハ、どうする? ていうかいこーよー!」

「もう。マイミったら」

 私はちょっと笑って、そして決めた。

「2人がそこまで言うなら、これを受けてもいいよ。きっと大した依頼じゃないし!」

「よーし、それじゃあ今日の依頼はこれだあ!」

「すまないな、2人共。もしもの時は、私がなんとかする。2人に何かあるようなことはない」

「もう、マトバ、気負いすぎ。こんなのいつもの依頼に比べたらちょろいって!」

「そうだね。丁寧に話せば、きっとすぐ終わるよ」

 私達はそう言って、アーミットに依頼を確定してもらった。

 さて、久しぶりにエルビ子爵の屋敷に行くぞ。エルビ子爵にはよくしてもらったから、今回は親身になろう。


 エルビ子爵の屋敷なう。

「僕がセルジだ」

 客間で私達は、セルジに会っていた。

 けど、いるのは私達だけじゃない。セルジの後ろには、四人の冒険者っぽい人たちがいた。

「私はウタハです!」

「はーい、私はマイミでーす!」

「私はマトバです。お久しぶりです、セルジ」

「ああ、久しいな、マトバ。随分大人になったじゃないか」

 セルジがそう言ってマトバの胸を見て、すぐに顔へと移す。こっちは見てるのバレバレだっつうの。

「しかし、お前たちが本当に冒険者なのか? 随分と疑わしいが」

「本当ですよ。例のダンジョンを発見したのも私達です」

「速攻で攻略したんだよー!」

「なに、本当か?」

「嘘ではない。冒険者ギルドに聞いたら、情報提供者のことも話してくれるかもな」

「そうか。ふーん」

 マトバの言葉を聞いたセルジは、改めて私達を見た。

 なんか、品定めしてる感じ? 感じ悪い。

「では、お前たちからダンジョンのことを教えてほしい。が、その前に」

「前に?」

「ダンジョンを攻略した者の実力がどの程度か知りたい。庭で僕が用意した護衛達と戦ってみてくれないか?」

 なんだそりゃ。

 思わずセルジの後ろの人たちを見たら、皆やる気な目をしてうなずいた。

 これは、避けられない感じかな。

「わかりました。では軽く模擬戦をしましょう」


「ルールは簡単。全員が倒れたら負け。命を失っても文句は言うなよ。僕は真の実力が見たいんだからさ」

 庭に出るとセルジがそう言った。

「何それ、聞いてない」

「2人共、全力でいくぞ。少なくとも今は、数の差で負けている」

「うん。なんというか、マトバの言う通りになったね」

 マイミ、マトバ、私が言う。

 わがままで悪い貴族というのは、すっごく質が悪いようだ。

「では、そちらからどうぞ」

 剣士の男にそう言われた。

「おい、ジーゴ。聞いてないぞ」

「今言った。数の上では有利なんだ。これでいいだろう」

 大盾を持った男は、そう言われて黙る。

「よーし、それじゃあいっくよー」

「マイミ、マトバ、せーのでいくよ!」

「ああ。用意はいいぞ」

「じゃあ、せーの!」

 私達は一斉に駆け出した。

 それを見て、盾の人が素早く前に出る。自然と盾の人に目を向ける。

「マイミ、マトバ、この人は私に任せて!」

「合点承知の助!」

「では私は剣士を狙う!」

「させるか、ターゲットシールド!」

 盾の人がそう言うと、自然と盾の人に視線が吸い寄せられた。

「な、通り越せない!」

「視線が、吸い寄せられる!」

「俺の横をすり抜けられると思うな!」

 どうやらこれが盾の人の能力らしい。

 でも、それならそれで、この人を3対1で倒すまで!

「皆、必殺技、合わせるよ!」

「おうともよ!」

「こうなったら、それしかないか!」

「必殺、ウェルカムトゥヘブン!」

「な、ぐあー!」

 私達の必殺技を同時に受けた盾の人は、凄い勢いで真上にふっとんだ。

「なっ!」

 セルジが驚いている間に、私は後ろの杖を持った男を狙う!

「覚悟!」

「く、油断した。プロテクト!」

 どうやらこの人は防御魔法を使うらしい。でも、私ができることは1つしかない!

 ひたすら鞭で、打つべし!

「ごめんなさーい!」

「く、ダメだ、防げない、うわー!」

 防御魔法の人もそれなりに戦えるようだったけど、私の敵じゃない!

 苛烈に攻めたら、わりとすぐ倒せた!

「ぐうう、気持ち良いー!」

 防御魔法の人を倒し終えたら、まずは周囲を確認する!

 すると、マイミも杖を持った女性を倒したところだった。マトバはまだ剣士とバトル中。

「マトバ、今加勢する!」

「そいつを倒せば終わりだあー!」

「いや待て、2人共。2人にはセルジを倒してもらいたい!」

「え!」

「いいの、それ!」

「ああ。セルジはどちらかが倒れるまで決着はつかないと言った。つまり彼らを雇っているセルジも戦う対象だ!」

「な、なんだと!」

 セルジはうろたえている。でも、貴族を攻撃していいの?

 ちょっと逡巡していると、マトバと戦っている剣士が口を開いた。


 よろしくおねがいします。


 今、完璧に口パクでそう言った。

「よっしゃーやってやらー!」

 あ、マイミが勢いよく行った!

 それじゃあ、私は!

「う、うわあ、僕に近寄るなあ!」

「問答無用ー!」

「あーマイミーちょっとまってー」

「そこのお前棒読みすぎるだろう、ちゃんと止めろー!」

 よし、これで私はマイミを止めようとしたっていう言い訳ができる!

 だからマイミ、私の分までお願い!

「良い声で鳴けー!」

 ビシーンバシーン!

「ふわあああー!」

 よし、セルジは思いっきりふっとんだ!

「私もこれで決める。ウェルカムトゥヘブン!」

「ぐわー!」

 剣士も倒せた!

「よし、勝った!」

「最初は焦ったけど、これでよし!」

「ふう。ではいつものを言っておこう」

「皆、キャバクランニングに遊びに来てね!」


 セルジが気を失っている間、私達は護衛の皆さんから事情を聞いた。

 なんでも、セルジはとある貴族のお嬢様にプロポーズをしたらしい。

 その返事は。


「強い方でなければお付き合いできません」


 その問題をなんとかするために、新しくできたダンジョンを攻略して、自分の強さを証明しようとしたらしい。

 けれどそれに、護衛の人たちがまったをかけた。

 ダンジョンに行くなら、事前の準備や知識が必要だ。

 そう言って、できるだけセルジに備えさせようとした。というか、行くのを止めた。

「いくら俺達が強くても、スライムより弱い雇い主を守りきれるかは未知数なんです」

「たしかに」

 というわけで、冒険者の手も借りて、セルジを止めたかったらしい。


「これでセルジ様も戦いの危険さがわかったでしょう。依頼は成功という形でいいはずです。もし足りなかったら後で追加の依頼を出します。指名依頼でいいですよね?」

「はい!」


 一応、護衛の皆さんにダンジョンの様子を思い出せる限り教えてから、セルジが起きる前にアドバイスの依頼を終え、達成した。

「確かにお付き合いできない感じの人だったね。セルジ」

「でも、この手でぶっとばせてスッキリしたよ。せめてもうちょっと戦えるようになってからダンジョンに行くべきだよね」

「同感だ。しかし、やはりセルジに関わるべきではなかったな。それなりに危険だった」

「ま、このくらいなら平気だよ。どんまい、あんま気にしないで」

「むしろマトバが警戒してくれて助かったよ。心の準備ができて」

「そうか。そう言ってくれると助かる」

 まる。


ベストキュンキュンが終わったら、続きを投稿していきます。(その予定)


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