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59 宝石店に行く

「ねえ、今日は休まなーい?」

 マイミがそう言った。

「そうね。今は懐も潤ってるし、そう頑張らなくてもいいかも」

「なら、どうする。どこかに遊びに行くか?」

「んー。あ、そうだ」

「なになに?」

「どうした?」

「私達、ウラムカムカデの時にシェイドさんに助けられたばかりじゃん。だから、シェイドさんにお礼の品を贈ろうよ!」

「いいね!」

「幸い、今の私達にはお金があるからな。牛丼の割引券より良い物を贈ってもいいかもしれない」

「よし、決まり。じゃあ、早速宝石店に行こう!」

「おー!」

「宝石店かあ。贈り物としてはどうだろう?」

「じゃあマトバは一緒に行かないのー?」

「折角だから行こうよー」

「そうか。まあ、折角だからな。よし。私も行こう」

「それじゃ決まり。レッツゴー!」


 宝石店なう。

「いらっしゃいませー。本日はどのような物をお求めでしょうか?」

「はい。今日は命の恩人に贈る物を探しに来ました!」

「さ、左様でございますか」

 あれ。店員さんがなんか引いてる?

「何かオススメの物はないですかー?」

「そうですねえ。贈る相手は男性ですか、女性ですか?」

「女性です」

「きれいです」

「キャバ嬢です」

「左様でございますか。では、こちらのペンダントなどはいかがでしょう?」

 店員さんがすすめてきたのは、小さな宝石がきれいなペンダント。

「こちらは最近仕入れた、当店イチオシの商品となっております」

「宝石が小さいから駄目!」

「まあまあマイミ。気持ちは値段じゃないよ?」

「そうだが、たしかにまだ他の物を見ていないしな。それに私達のおこづかいは結構ある。もっと高そうなものでもいいだろう」

「あのう、ちなみに本日はおいくらくらいのものをお求めですか?」

「かくかくしかじかくらいです」

「そ、そんなに!」

 店員さんはおったまげた。

「シェイドさんのおかげで倒せたウラムカムカデのドロップアイテムが、ありえない値段したんですよねー」

「でもこれもシェイドさんのおかげだから、まあほぼ全額つっこんでも文句はないな」

「異議なーし!」

「自分が使うんじゃないとしても、折角だから超贅沢なお買い物してみたいよねー」

「で、でしたら、こちらの指輪はいかがでしょう?」

 店員さんは次に、大きな宝石の指輪を見せた。宝石が指輪からオチてしまいそうな程アンバランスだ。

「こちらの超高級指輪なら、きっとどのような方にもご満足いただけるかもしれません」

「おおー。これは全乙女の夢かも」

「キラキラしてるー。私これほしいー」

「駄目だぞ。今回はシェイドさんへの贈り物に全力投球する回だからな」

「はあーい」

「宝石には幸運を呼び、不運を遠ざける力もございます。なのでこちらは素晴らしいお守りにもなりますよ」

「なんというプラスパワー」

「じゃあもうこれでいいんじゃね? 深く考えず」

「私もそう思えてきた。でも、私は即決できるほど勢いが良い性分ではない。もう少し見て回りたい」

「じゃあ、こちらが提示した金額で買える、最高額の物はどれですか?」

「はい。それはこちらになります」

 店員さんが案内してくれた先には、宝石で彩られた金の仮面があった。

「こちら、当店名物の美光仮面になります」

「あー、残念ですがこれはちょっと」

「そもそも仮面なんて使えませんわ」

「いや、でもシェイドさんなら、ちょっとは似合うか?」

 マトバがそう言って、私達は想像する。

 突然どこからともなく現れるシェイドさん。カノジョがこの美光仮面をかぶっている。

「あー、イメージは損なわれてない」

「似合うかどうかと問われたら、ギリ似合う感じじゃん?」

「この仮面が似合うシェイドさんの存在が凄いな」

「でも、だからといってこれを贈るのはどうよ」

「ウタハの言う通り。これ贈られて喜ぶキャバ嬢はいない!」

「そうだな。少なくとも、人からもらうものではないな」

「ほっ。良かった。ありがとうございます。実はこの美光仮面、当店の売り物という意味はあまりないのです」

「というと?」

「当店を印象付けるインテリアのようなものでございます。高名な芸術家が作られたので、評判は良いのです」

「なるほど」

「道理で仮面なわけだ」

「ですが値段はつけているのですね」

「ええ。そこもお客様に印象付けるワンポイントでございます」

「なるほどお。じゃあとにかく、この仮面以外のものを探そう」

「うん。あ、ねえ。これいいんじゃない?」

「なんだ、マイミ。それは、櫛か?」

 マイミが目をつけたのは、宝石がちりばめられたプラチナ製の櫛だった。

「お客様、お目が高い。そちらは美貌の櫛。使えば使う程髪の毛が美しくなる魔法のアイテムでございます」

「これ、買います!」

「ウタハが即決した!」

「もっと他の物を見なくても良いのか?」

「うん。だって、飾り物を贈ってもシェイドさんが身につけてくれるかわからないじゃん。でも櫛なら毎日使ってくれる。イコール良いお買い物!」

「たしかに!」

「そう考えればこれで即決だな」

「というわけで、これを買います。買わせてください!」

「はい。お買い上げありがとうございます。では、かわいくラッピングいたしますね」

「はい!」

 こうして私達は財布のほとんどをはたいて、シェイドさんへの贈り物を買ったのだった。

「よし。あとはシェイドさんに渡すだけだね!」

「うん。キャバクランニングに行けば渡せるかな?」

「呼んだ?」

「うお、シェイドさんが現れた!」

「シェイドさん、こんにちは!」

「ちょうどよかったです。私達、シェイドさんに贈り物を買いました」

「ぜひ受け取ってください!」

「ありがとう。カミソリとか危険物は入ってないよね?」

「絶対ないです!」

「シェイドさん、私達のことなんて思ってるんですか。あんまりです!」

「私達、シェイドさんのために一生懸命贈り物を考えたんですよ!」

「ああ、ごめんごめん。ありがとうね。大事にするよ」

「いえ、毎日使ってください!」

「むしろボロボロにくたびれる方が私達喜びます!」

「? そう。わかった。じゃあね」

 そう言ってシェイドさんが消えた。相変わらず闇に紛れて、かっこいい。

「シェイドさん、喜んでくれるかなあ?」

「絶対喜ぶって。間違いない!」

「そうだな。そう信じよう」

「よーし。それじゃあなんかお腹が減ったから、どこかに甘い物でも食べに行こー!」

「さんせーい。私苺ショートが良いー!」

「私はぜんざいだな」

 こうして私達は、のこりの休日時間も楽しんだ。


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