55 隣町の冒険者ギルド
「さて。それじゃあ観光もしたし、町に帰ろうか」
「うん。宿泊料も結構かさんできたしねー」
観光も終えて満足した私達は、帰るついでに冒険者ギルドに寄っていくことにした。
「あ、町までの護衛依頼がある」
「じゃあそれを受けて依頼ついでに帰ろう」
「それが良いな」
依頼書を取ってカウンターへ持っていく。するとそこには、アーミットに似た受付嬢がいた。
「初めまして。冒険者ギルドにようこそ」
「私達、依頼を受けたいんですけど」
「はい。では冒険者カードを確認させてください」
「はい」
言われた通り冒険者カードとパーティカードを出す。すると受付嬢は表情を険しくさせた。
「あなた達がキャバクランニングエンジェルスね」
「は、はい。そうですけど」
「あなた達、依頼中に盗賊が現れたのに、全然報告にこなかったでしょ!」
「は、はい。そうですけど」
「もしかして、まずかったですか?」
「盗賊や危険モンスターの出没といった情報は重要です。特に今回は盗賊を野放しにしていますし、絶対に報告は必要です。というか常識です!」
「それは、すみませんでした」
「でも、私達盗賊を野放しにはしてません。ちゃんと接客バトルで追い打ちをかけました!」
「その接客バトルというのが信じられないの。それ、信用できるの?」
「はい。キャバ嬢の誇りにかけて!」
「胡散臭いわね。もし自分達に自信があるのなら、ここでその接客バトルの力を見せてもらえないかしら?」
「はい。それは全然オッケーです!」
「そう。なら今から相手を用意するから、その人に接客バトルをしてちょうだい。その効力の程は後で私達が判断します」
「はい!」
「あと、盗賊の出没をすぐに報告しなかったペナルティーとして、この町で依頼を受ける前に、先にギルド指定の依頼を受けてもらいます。それを達成しなければ、他の依頼を受けさせることはできません」
「はあい」
「では、あなた達はギルド裏の訓練場に向かってください。そこに対戦相手をつれてきます」
「わかりましたー」
自分たちの不注意で、ちょっと大変なことになってしまった。でもやってしまったことは仕方ない。今は汚名返上を頑張ろう!
「対戦相手ってどんな人だろうね」
「さあ。無茶振りみたいな人じゃなければいいんだけど」
「まあ誰が相手でも、私達は昇天させるしかないわけだがな」
「あ、どうやら相手が来たみたいだよ」
ギルド裏の訓練場で待っていると、私達の前に、受付嬢と筋肉ムキムキのゴリラ男が現れた。
「はっはっは。君たちが盗賊を倒したにも関わらず、見逃した冒険者達だな。俺の名はリゴラ。今日君たちと戦う対戦相手だ!」
「よろしくお願いしまーす!」
「私達、キャバクランニングエンジェルスでーす!」
「お手柔らかにお願いする」
「うむ。では早速、対戦といこう!」
そう言ってリゴラは武器を持たないまま構えた。
「さあ、どこからでもかかってこい!」
「武器はなくていいんですか!」
「ああ、かまわん!」
「それじゃあ、遠慮なく三人がかりでいくよ!」
「おお、どーんとこい!」
「容赦はしませんよ」
「こちらもそんなものは望んでいない!」
「では、誘惑攻撃!」
「おしゃべり攻撃!」
「ドリンク攻撃!」
「ぬはあー!」
よし。リゴラにはいいダメージが入ったみたい!
「ぬう、この感覚。初めてだ。これが接客バトルか。なかなかやる!」
「まだまだいきますよ。誘惑攻撃!」
「おしゃべり攻撃!」
「ドリンク攻撃!」
「おほあー!」
よし、リゴラはいい調子でダメージを受けている。私の見立てでは、もう体力は半分だ!
「ぬう、なかなかやるな。だが、こちらも反撃をする。ふんーっ、筋肉パワー!」
リゴラがポージングをすると、その身にオーラをまとった。これはヤバそうな雰囲気!
「うー、はー! これで次のターン、お前たちに大ダメージだ!」
「そんなことさせません、誘惑攻撃!」
「おしゃべり攻撃!」
「ドリンク攻撃!」
「うぐううー!」
リゴラはうめく。けど、まだ立ってる!
「ふうー、想像以上の攻めだ。だが勝負は勝負。このまま負けてやるのは駄目だろう。というわけで、くらえ、筋肉ビーム!」
「きゃー!」
「ひゃー!」
「うわー!」
私達は、筋肉ビームを受けた!
そのあまりのダメージに、思わず膝をつく!
「くう、この人、強い!」
「まさか、たった一撃でここまでくらうなんて!」
「もう、後がないぞ!」
「ふはは、どうやら筋肉の前では、自慢の接客バトルもかたなしのようだな!」
「そんなことない!」
「たしかに私達はまだ未熟だけど!」
「それでも女の子の魅力は、無限の可能性をもっている!」
「次の一撃に、全身全霊をこめる!」
「乙女の一撃、受けてみよ!」
「お前の筋肉なんて、ビクンビクンさせてやる!」
「とっておき、ニューチャームスマイル!」
「とっておき、ファインフォルテッシモ!」
「とっておき、清楚トレビアンヌ!」
「ぐわー!」
私達のとっておきを受けて、リゴラは吹き飛んで、倒れた!
「はあ、はあ、どうだ!」
「これが、私達の力だ!」
「これを受けた者は皆、キャバ嬢に貢ぐだけの奴隷となるのだ!」
「ううう。確かに、思い知った。君たちの力は、人を変える力がある!」
リゴラはそう言って、私達に親指を見せた。
「この俺、ギルドマスターリゴラが認めよう。君たちに接客バトルをやられた盗賊たちは、もう無害化していると!」
「えー、リゴラ、ギルマスだったんですかー!」
「そんなー、先に言ってくださいよー!」
「知らぬとはいえ、すみませんでした!」
「なに、かまわぬ。こちらこそ久しぶりにエキサイトできた。若者の力、感じ取れてうれしかったぞ!」
「そう言われると、ありがたいです!」
「ではこれで、キャバクランニングエンジェルスの力を認めるための見極めは終わりとする。次は、こちらが用意した依頼を無事達成してほしい!」
「はい。それは、なんの依頼でしょう?」
「それは、コンコンコーンの納品だ!」




