54 鳥と戦う
「もうこれでこの町での用事は済んだね」
「じゃあ折角だから観光してかない?」
「それもいいな。折角隣町に来たんだ。いろいろと見て回りたい」
「じゃあ、今日はぶらぶらしよう。マリナにオススメでも訊こうかな?」
「それいいね。マリナ暇かなー?」
すぐにマリナを見つけると、マリナは笑顔で教えてくれた。
「あー、観光名所ねー。それなら、いろつき草畑かな」
「いろつき草?」
「ただの草なのに名所なの?」
「うん。まあ簡単に言うと、地面が草の色で、赤、青、紫と一色ばーって広がってて、結構壮観よ。今の時期は収穫前だから色が濃いし、一度見て損はないわ」
「なるほど。じゃあ、そこに行ってみるか」
「ありがとう、マリナ!」
「うん。場所は町の南側だから」
「わかった。では行ってくる」
こうして私達は、いろつき草を見にでかけた。
見渡す限り、右が青、左は赤。地面が鮮やかに染まっている。
「うわあー、ここがいろつき草畑!」
「おおー、たしかに変わってるねー」
「美しい、かは微妙なところだが、鮮烈な印象ではあるな」
私達は道を歩いて、いろつき草畑を見て楽しむ。
「でもなんだか凄いよ。壮観って感じ」
「この中入ったら怒られるよね」
「でも触ったら肌がかぶれそうで怖いな」
「育ててるらしいから、大丈夫だと思うけど」
そう思って歩いていると、ちょうど空から、大きな鳥が飛んできた。
鳥は畑の中に入り、着地する。
「あ、鳥だ」
「結構大きそうだね」
「ん、あれはもしかして、クサツツキじゃないか?」
「おー、マトバは詳しいね?」
「ここら辺にいる鳥なの?」
「いや、クサツツキは草を食べるモンスターだ。もしいろつき草を食べに来たとしたら、鳥害じゃないか?」
「え、じゃ、大変じゃん!」
「どうする、倒しちゃう?」
「私達でか。ちょうど、私達は冒険者だしな。畑に無断で入るのは気が引けるが、今ここには私達しかいない。よってすぐ動けるのは私達だけだな」
「うん。じゃあ、よし。倒そう!」
「お、リーダー頼もしい!」
「そうと決まれば、行くぞ!」
「ゴー!」
私達はいろつき草畑に侵入し、クサツツキの元まで走る。
「トリー!」
クサツツキは本当にいろつき草を食べていた。そして近づいた私達に気づいて、嘴を向けて威嚇する。
「鳥がトリって言うなー!」
「悪さをするなら、私達キャバクランニングエンジェルスが許さないからね!」
「よく逃げずにいたな。このまま倒してやる」
「トリー!」
こうしてクサツツキとの戦いが始まった。
「トリー!」
まずクサツツキが攻撃してくる。私はなかなかのダメージを受けた。
「くう、なかなかやる。けど犬セクシーを装備しているから、まあまあ平気!」
「よくもウタハをやったなー!」
「キャバ嬢に怪我を負わせた報い、受けろ!」
ビシーンバシーン!
「トリー!」
クサツツキは私達の鞭を受けたが、まだまだ元気そうだ!
「トリー!」
「きゃあー!」
ああ、今度はマイミがやられた!
「くうう、いったーい。けど、猫セクシーのおかげで、まだやれる!」
「よくもマイミを。それ!」
「たあ!」
ビシーンバシーン!
また攻撃をしたけど、今回はクサツツキが素早く動いて、ほとんどかわされた!
「ああ、こいつ速い!」
「く、意外とやる!」
「予想以上の曲者だな!」
「トリー!」
「くうう!」
今度はマトバがやられた!
「マトバ!」
「大丈夫だ。うさぎセクシーのおかげでまだ戦える!」
「このお、たおれろー!」
ビシーンバシーン!
「トリー!」
く、クサツツキはまだ倒れない。しぶとい!
「トリイー!」
あ、クサツツキの体が輝き出した!
「な、なんかまずいかも!」
「これひょっとして、相手の必殺技モーション?」
「ふたりとも、やられる前にやるか、防ぐか、逃げるか決めろ!」
「やられる前にやる!」
「キャバ嬢に逃走はないのだー!」
「よし、決まったな!」
私達は恐れず進み、クサツツキに全力の攻撃を浴びせる!
「必殺、ウェルカムトゥヘブン!」
ビシーンバシーンピシャーン!
「トリイー!」
ああ、まだクサツツキは立っている!
そしてクサツツキは光り輝きながら、私達に突進した。
けど。
スカッ。
「あれ?」
「おや?」
「む?」
クサツツキは私達をすり抜け、通り抜けた。
「トリ?」
クサツツキも首をかしげている。
「あ、もしかしてこれは、死霊騎士の加護のダメージ無効化効果?」
「なるほど、運が良かった!」
「そして相手は今動揺している。チャンスだ!」
マトバの言う通り。私達はまた攻撃をしかける!
「それ、ウェルカムトゥヘブン、イチコロの型!」
「ウェルカムトゥヘブン、骨抜きの型!」
「ウェルカムトゥヘブン、胸キュンの型!」
ビシーンバシーンピシャーン!
「トオーリイー!」
これで、クサツツキは倒れた。
「ふう、やった!」
「いやー、思ったより強かったねー」
「倒せて良かった」
「おーい、大丈夫かー!」
その時ここに、武装した人たちがやって来た。
「あ、はい。大丈夫ですー!」
「クサツツキは私達が倒しましたー!」
「それは良かった。だがここは関係者以外立入禁止だ。感謝はするが、ほめることはできない」
「え」
「今回はクサツツキをすぐに倒してくれて助かった。だから、礼を言うし、入ったことは咎めない。けど、クサツツキハンターとして常に俺たちが警戒している。次からは、クサツツキが現れたとしても入らないでくれ。わかったな」
「あ、はい。わかりました」
「はーい」
「すみませんでした」
「うむ。では早く畑から出てくれ」
「はい。あ、でもこれだけは言わせてください」
「私達、キャバ嬢なんです」
「だから、せーの」
「皆、キャバクランニングに遊びに来てね!」




