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50 護衛完了

「うっ」

 私はその場で、片膝をついた。

「大丈夫、ウタハ!」

 マイミが私の肩に手をそえる。

「なんか、駄目みたい。さっき受けた傷が、深くて。私はもう、長くない」

「そんなこと言わないで。大丈夫、ウタハは無事だよ!」

「ありがとう。でも、なんとなくわかる。どうやら私は、ここまでみたい」

「ウタハ、ウタハー!」

「ごめんね。でも、泣かないで」

「うん、うん。私、ウタハのことは忘れないよ!」

「あり、がとう。私、幸せだった、から」

「はい、回復薬」

 マトバに回復薬を渡される。

「ありがと。ごく、ごく、ごく。ふうー、復活!」

「いやー、リーダーだけちょっと強かったねー」

「まあ、三文芝居ができるくらい安全になって良かった。もう周囲に盗賊団はいないな」

 気を取り直して、私達はいつもの調子に戻る。

「皆ー、大丈夫ー?」

 先輩が鞭をしまって駆け寄ってきた。

「あ、はい。大丈夫です。先輩たちこそ、大丈夫ですか?」

「ええ、アンドンさんもカンドンさんも無事よ」

「ほ、良かった。それじゃあ、この盗賊団どうしましょう」

「このまま捨てといてもいいのかな。アーミットとかに対処マニュアル教えてもらえば良かった」

「復活されても嫌だが、どうする、つれてくか?」

 私達は悩む。でも先輩が、ぽんと手を叩いて提案した。

「そんなことしなくても大丈夫。あなた達はキャバ嬢よ。接客バトルをして骨抜きにしてしまえばもう安心よ」

「そうですね!」

「さっすが先輩!」

「便りになります!」

「それじゃあ早速、盗賊たちを一箇所に集めましょう」

「はい!」

 私達は倒した盗賊達を一箇所に集める。

 そして。

「水魔法」

 ザバーン。盗賊たちに水を浴びせて意識を無理やり覚醒させた。

「は、ここは!」

「そうだ、俺たちは、どうなった?」

「あなた達は今から、私達の働きアリになるんです!」

「悪いことは駄目だよって、骨の髄まで教え込んであげる!」

「だから、大人しくくらうがいい」

「誘惑攻撃!」

「おしゃべり攻撃!」

「ドリンク攻撃!」

「うーわー!」

 こうして盗賊たちはあっけなく、私達に二度の敗北を喫した。

 そして。

「ウタハちゃーん!」

「マイミちゃーん!」

「マトバちゃーん!」

「俺たち、もう三人の働きアリでーす!」

「どうか、もっと俺たちの相手してー!」

 うん。気持ち悪い。

「それじゃあ、もう今度から悪いことはしないこと」

「悔い改め、キャバクラッシュに毎日通うこと!」

「一生懸命働き、死ぬまでキャバ嬢に貢ぐこと」

「それと、皆、キャバクランニングを、よろしくね!」

「はあーい!」

 よし。一件落着!


 傷ついて倒れた馬も、回復薬ですぐ復活できた。私達はそのまま隣町を目指す。

 そしてその日の夜。皆で焚き火を囲んで夜ご飯を食べていた時、アンドンさんに言われた。

「今日は本当に助かりました。いやー、危なかった。護衛してくれるのがキャバクラッシュエンジェルスで良かった」

「いえ、こっちも助かりました。先輩がいなければアンドンさん達の身も危険でしたし」

「そうね。ちょっと護衛人数が足りなかったかな?」

「やっぱり三人じゃ足りないかー。ガチャで仲間を補充できないかなあ?」

「それも考慮しておいた方が良いかもな」

「いいえ、護衛料を更に払ってもう1パーティか一人護衛を増やせばいいことです。人数の心配はそちらがしなくてもいいでしょう」

「そうですか。わかりました、アンドンさん」

「それか、行商人同士で一気に移動して、護衛料を折半するのもありかもしれませんね」

「なるほど。そういう依頼もあるんですね」

「ウタハさん!」

「はい!」

 私は突然、カンドンさんに話しかけられた。

「今日、ウタハさんは盗賊に斬られました」

「はい」

「そんなことが今後も続くかもしれない。俺はウタハさんが心配です!」

「ど、どうも」

「私の心配はしないのかよー」

「マイミ、空気を読め」

「ですので、あの、も、もしよろしかったら、俺と、け、結婚したりして、冒険者をやめませんか!」

「カンドンさん。お気持ちはありがたく思います」

「そ、それじゃあ!」

「でも、私。今が楽しいんです。マイミやマトバと一緒に、先輩からの無茶振りこなして、いろんな体験をして。今の生活がとっても充実してるんです!」

「あっ」

「ですから、私はまだ冒険者続けたいんです。それに、結婚も考えてません」

「あ、ああー」

「でも、カンドンさんの気持ちは本当にうれしいですから、もし良かったら、キャバクラッシュに遊びに来てね?」

「は、はいいー」

「さて、ウタハ、マイミ。それでは、今日はどの順番で寝る?」

「私いちばーん。今日は早くねたーい。いいー?」

「いいよー」

「じゃあ私は最後でいい。ウタハが2番目に寝てくれ」

「うん。オッケー」

 それからは、大した戦闘もなく、朝が来て、出発した。

 こころなしかカンドンさんの顔が落ち込みモードだったけど、まあ、若いからきっとすぐ元気を取り戻すだろう。

 三日目は強いモンスターも現れず、無事隣町までたどり着く。

 町の近くに強いモンスターが現れては町の人達が安心できないため、兵団や冒険者がきびしく目を光らせているのだ。弱いモンスターなら初心者冒険者の相手にもなるし、町近くの道なんて大したことはない。

「無事隣町につけました。キャバクランニングエンジェルスの皆さん、ありがとうございました」

「はい、こちらこそご指名ありがとうございました!」

「また機会があれば、ぜひもう一度依頼を頼みたい。まあ、息子のカンドンがこの調子なので、しばらくは無理そうですが」

「それはうちのウタハがすみませんでした!」

「ですがキャバ嬢ですので、そのあたりの配慮はよろしくお願いします」

「ええ、わかっています。では依頼達成のサインは、荷をおろしたらギルドでしますね」

「はい。では、私達はこれで!」

「先輩もさようなら!」

「ええ、さようなら」

 とにかくこれで、行商人と先輩の護衛は一件落着だ。

「さて。それじゃあ私達はこれから、泊まるための宿を探そう」

「いくらくらいのとこに泊まるー?」

「安すぎても店が悪いと嫌だからな。少しくらい高くていいぞ」

「よし。それじゃあちょっとお高めの宿に泊まろう!」

「おー!」


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