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49 盗賊団現る

 護衛一日目は、何事もなく終わろうとしていた。

 もともと、町から出てまだ一日目だ。強い敵が現れる可能性は極めて少ない。

 移動速度も、速歩き程度。いつもの走り込みペースじゃないし、進み具合もまあまあといったところか。

「移動日数は3日の予定です。あと2日、よろしくお願いします」

 夜。焚き火を囲んで、アンドンさんにそう言われる。

「はい。無事依頼を完遂してみせます」


「モンスターもあまり出てこないし、楽勝ね!」

「ああ。油断はできないけどな」

「ウタハちゃん達。私も同じテントに入れてもらって本当にいいの?」

「はい先輩。モンスターが出たら起こしてしまうかもしれませんが、それでも良ければどうぞ!」

「そんなの構わないわ。第一、モンスターが出てきたら眠れないし。それじゃあ、夜も頑張ってね」

「はい。任せてください!」

「あー、ウタハちゃん。これ、ドライフルーツなんだけど、良かったら食べる?」

「ありがとうございますカンドンさん。当然皆の分もありますよね!」

「あ、ああ。あるけど」

「見てて不憫だな。彼」

「いや、キャバ嬢は貢がれるのが自然だ。つまりこの姿は正しい」

「む、殺気! マイミ、マトバ、敵が来るよ!」

「おお、冒険者としての勘が冴えてきたね、ウタハ!」

「敵はあまりいないようだ。だが、今は護衛対象もいる。全力最速で倒すぞ」

「うん!」

 野宿中はあまり眠れないけど、まあ二日間だけだから大丈夫だろう。楽ではないが、若さでカバーだ。

 こうして護衛は二日目に突入し、風景が半分荒れ地に変わった。

「ワンワン!」

「ワンワン!」

 ここで現れるモンスターは、ダイヌというモンスター。

 胴体が六面ダイスで、その面が光ると数字に対応した魔法を使ってくるという、6種類の魔法を使ってくるという厄介なモンスターだ。

「うう、ダイヌの光魔法のせいで、体が勝手にかっこいいポーズをとってしまう!」

「く、まさか地獄の猛獣がその鋭き牙を聖なる使徒である私達に突き立てようとするとは。駄目だ、相手の闇魔法のせいで言葉が勝手に中二病になる!」

「きゃー、このワンちゃんかわいー! お持ち帰りー!」

「マイミは魅了魔法で大変なものを盗まれちゃったみたい。あなたの心的な!」

「おのれ、聖なる使徒としてふがいない!」

 幸い、ダイヌは数が少なかったからなんとかなったけど。倒すのが大変だった。護衛と先輩が傷つかなかったのは幸いだ。

「うー、護衛対象がいるのに、弱くない新敵が現れるのって、きついね」

「そうね。護衛はまだ明日も残ってるし、思ってた以上に大変」

「まあ、なんとかやれているのが幸いだな。今度からはちゃんと下調べをして、できると判断してから護衛依頼を受けよう」

「うん」

「その方が良いかもねー」

 そう相談しあっていた、お昼ごろのことだった。

「うわあ!」

「ヒヒーン!」

 移動中、突然馬車が止まった。そして次の瞬間、突然目の前に謎の男たちが現れる。

 彼らは今まで地面と同色の布をかぶっていて、私達が接近するまでじっと動かず潜んでいたのだ。

「ヒャッハー、獲物だー!」

「俺たちジャイアー盗賊団がお前らを捕まえるぜー!」

「突然だから驚いたけど、敵は倒す!」

 私は馬車の後ろから走り寄ってくる二人の盗賊に向けて、鞭を構える。

「マイミ、マトバ、こっちに敵。数2!」

「こっちは3!」

「こっちも3だ!」

「あ、じゃあ私がすぐ加勢にいく!」

「こっちはなんとかする、マトバの方よろしく!」

「オフコース!」

 自分から相手に近づいて、素早く鞭を振るう。

「とりゃー!」

「うわ、なんだこいつ、強い!」

「ただの女じゃない!」

「そう、私は可憐な淑女、ウタハ!」

 ビシーンバシーン!

 幸い、相手は大したことなかった。このまま鞭でしばく!

「ばたんきゅー」

「よし、倒した。待ってて、マトバ!」

 二人の盗賊が倒れるのを確認してから、マトバの方へ走った。

「マトバ、大丈夫?」

「ああ、なんとか!」

 そう言うマトバも、既に二人の盗賊を倒し終えていた。残り一人も、余裕っぽい。

 ビシーンバシーン!

「うひゃー、気持ち良いー!」

 3人目の盗賊もそう言って倒れた。これでマトバの危機も去った。けど、状況はどうなってる!

「マトバ、そういえば馬車が止まってる!」

「つまり、前方にも敵がいるということだな!」

「マイミ、無事ー!」

「うん、無事ー! 今そっち行くー!」

「じゃあ、前で合流だ!」

「よし、ダッシュ!」

 どうやらマイミもなんともないようだ。でも、私達が無事だからって、護衛対象が無事じゃなければ意味がない。

 アンドンさん達は、先輩は無事? 駆けつけてみると、馬車の前に立っていたのは鞭を持った先輩だった。

「また放て!」

「へい!」

 前にいた盗賊は三人。彼らが弓矢を使って先輩や後ろにかばわれているアンドンさん達をおそう。

 けど。

「ふっ」

 ビシーンバシーン!

 先輩の華麗なる鞭さばきが、全ての矢を打ち落とした!

「先輩!」

「さっすがー!」

「ウタハちゃん達。私はアンドンさん達を守っているから動けない。三人でかたをつけて!」

「はい!」

「先輩のお言葉ならば!」

「私達はただ、従うのみ!」

 私達はダッシュで最後の三人に近寄った。

「ふん、こしゃくな!」

 三人は剣に装備を変える。ふん、そんなの、どうってことないやい!

「それー!」

 ビシーンバシーン!

 私達は鞭を振るう。

 けど、私が狙った男は、剣で鞭をさばききった。

「ふん。なかなかやるが、このジャイアー盗賊団リーダー様を仕留めるにはまだ力が足りないぜ!」

「それはどうかな!」

 ビシーンバシーン!

「ふん、まだまだ。そら、隙あり!」

 痛い、ダメージを受けた!

「うう、強い」

「当たり前だ。俺はジャイアー盗賊団リーダー。ただではやられんのだ」

「でも、キャバ嬢を傷つけた礼は高くつくよ!」

「ふん。やれるもんならやってみろ!」

「そうか。では」

「遠慮なくぶっとばすかんね!」

「え?」

 リーダーは周囲を見回すと、マイミとマトバに囲まれていることにようやく気づいた。

 他の二人は、既に倒れている。

「お、お前ら、3対1なんて卑怯だぞー!」

「お前がそれを言うかー!」

「盗賊なんて、許さない!」

「ウェルカムトゥヘブン!」

 ビシーンバシーンピシャーン!

「ぎゃー!」

 こうして私達は、盗賊団を返り討ちにしたのだった。

「よし、それじゃあ!」

「いつもの通りに!」

「あの言葉を言っておこう!」

「皆、キャバクランニングに遊びに来てね!」


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