45 南に3歩進んだ足元に宝が埋まっている
新ダンジョンに戻ってきました。
「ダンジョンよ、私は帰ってきた!」
「目指すはボス、だね。マイミ、マトバ。倒すよ!」
「おー!」
ということで、意気揚々とダンジョン内を進む。
「オレンジー!」
始めに出てきたのは、オレンジ一体だけだった。昨日私達が倒しまくったから、数が減ってるのかもね。
あ、でも倒した跡は残ってない。誰かが回収、もしくは美味しくいただいたのだろうか?
「前に倒したモンスターは残ってないね」
「あ、本当だ」
「まあ、その方が好都合だ。進みやすいからな」
ビシーンバシーン!
「オレンジー!」
このオレンジもあっさり倒す。飛び散るオレンジ汁に気をつけて、結構せわしなく動いた。
「よし、いこう!」
「うん!」
「それ、突撃ー!」
私達は順調にダンジョンの下りる階段まで到達し、未探索の地下二階に飛び込んだ。
ここからはオレンジ、キウイに加え、ラフランスモンスターも登場。しかし変わっているのはここだけで、上の階と大した差は無かった。
宝箱を3つばかり見つけて、収穫はその程度。宝箱の中にはお金も入っていたが、大した額ではなかった。
「なんか私達、たまに跳んだり跳ねたりするけど、なんだろうね?」
「なんか嫌な感じして避けるんだよね」
「たぶん、猫の加護がダンジョントラップを察知してくれて、本能で避けているんだろう」
「なるほど」
「まさかここでファイアキャットの件が役に立つとは」
「あ、階段発見」
「地下三階か。この階はもう調べ尽くしたかな?」
「どっちみちいいじゃん。階段あったんだから先行こうよ。どうせこの階をこれ以上うろついても大したものは出ないって」
私、マトバ、マイミが言う。
「確かにそうだね。よし、それじゃあ下に行こう!」
「気をつけろよ。また新手が出てくるかもしれない」
「これくらいの相手ならだいじょーぶだいじょーぶ!」
マイミの期待が通った。地下三階のモンスターは前の階と同じ。ただちょっと強くなってるぐらいで、手強くはなかった。
「オレンジー!」
「アーモンドー!」
「はいこいつらも秒殺!」
「次いこう次。お宝が私達を待っている!」
「だからと言って気を抜くなよ。ここは安全な場所ではないんだからな」
「はーい」
「まったく。まあ、相手がこの程度だからいいが」
勢いを削がずにどんどん進むと、やがて私達は、変わった場所にたどり着いた。
行き止まりだったんだけど、そこは広い四角い空間になっていて、下が土だった。
そんでもって土部屋の真ん中に、立て札がある。
「なになに、ここから南へ3歩進んだ足元に、宝が眠っている」
「おー、お宝。やった、良いじゃん。これが私達が求めていたものだよ!」
「しかし南か。ここからでは太陽の位置も見れないな」
「はっ、そうだ!」
「南がわかんなきゃお宝の場所もわからないじゃん。こんなのインチキだ!」
「まさか、人をぬか喜びさせる罠!」
「流石に罠とは言い難いが、いや、罠じゃない可能性も否定できないが、とにかく、じゃーん。コーンーパースー」
「おお、マトバさすが!」
「でかした。それがあれば南がわかる!」
「自分で買っておいてなんだが、まさか役に立つとはな。さて、それでは使ってみよう。どれどれ」
「なになに?」
「南はどっち?」
「あっちだな。左だ」
「よーし、オッケー。じゃあ看板の前から、1、2、3!」
マイミがそこで立ち止まって、そのまま棒立ちになった。
「あー、掘れない」
「え、なんで。手で掘れば」
「いや、手が汚れたくない。土なんか触りたくない。なんか土の中にも危険がいっぱいあるんだって。この前テレビでやってた」
「でもそれじゃあお宝が取れないじゃん。もういい、私が」
そこまで言ったところで、動きを止める。
「マイミが休んでいる間に私だけ犬のように土を掘るなんて、なんか嫌」
「やっぱウタハもそうじゃんー」
「マイミ程じゃないいっ。でも確かに、いざやろうとすると躊躇する」
「冷静に考えてみよう。私達は立て札を見つけた。そこに書いてあった通りの場所を掘ろうとする。はたから見ると私達はどう映って見える?」
「バカじゃない?」
「バカじゃないけど、この立て札が釣り針だったらすごくムカつく!」
だんだんお宝探しより、お宝を求めて頑張ったあげく何も得られない未来の方が気にかかってきた!
「発想を変えよう。素手で掘るのではなく、楽に掘ればいい。せめてはたから見てバカに見えないように、かしこくかっこよく美しくお宝を手に入れよう。というわけで、誰かスコップとかは持ってないか?」
「持ってなーい」
「お泊りセットの内容にも無かったよね」
というか、それがかしこくかっこよく美しく掘るやり方なのか、マトバよ。
「じゃあ、かわりになるようなものはないか?」
「かわりのものかあ」
「うーん。あ、私木魔法使えるよ!」
「なるほど。魔法で木製スコップを出せれば掘れるな」
「さっすがウタハ、たのもしー!」
「ううん。そんな器用なことできないよ。でも、まず木魔法で木を出してー」
えい。私は木魔法で掘るべき土の上に木を生やし、ある程度成長させる。
「それで、この木を引っこ抜いて、根っこごと土を取ったら、すぐにお宝が見えるはず!」
「なっるほどー。ウタハ、天才!」
「まるでビッグなカブみたいだな。よし、やってみよう」
「それじゃあ力を合わせて、いくよー!」
私達は一緒に目の前の木を引っ張り上げた。
「うんとこしょういち!」
「どっこいしょうすけ!」
「それでもカブは、カブは、ふんぬぬぬ!」
「ふんす!」
「でりゃー!」
一分後。
「木って、簡単に引っこ抜けないね」
「そりゃまあ、冷静に考えたら木だしねえ」
「はたから見て、私達は滑稽だっただろうな」
「はっはっはー。あー、可愛い女の子三人の頭脳って、こんなにもか弱かったっけ」
「か弱いっていうか、足りないっていうか」
「ふむ。一度考え直そう。そうだ、私の水魔法で土をぬらして柔らかくすれば、木も引っこ抜けるんじゃないか?」
「それだ、マトバ!」
「冴えてる、天才!」
「それではやってみよう」
マトバが水魔法で土をぬらし、ドロドロにする。
「よし、これで後は引っこ抜けば!」
「お宝が手に入るって寸法よー!」
「ではもう一度引っこ抜くぞ」
「おー!」
一分後。
「ただ足元が濡れただけだったね」
「あー、靴が泥でドロドロだよお」
「すまん。私も浅はかだった」
「タイムマシンがあったら少し前の自分たちを止めたいよね」
「んじゃー、どうする。お宝、諦める?」
「うーん、そうだねえ。結局私達、ここで時間しかくってないだけだし」
「よし。また思いついた。マイミ、火魔法で木を燃やしてくれ」
「あいよー、諦めるってわけねー」
「いや、そうじゃない。もう一回私がチャレンジしてみる。それが駄目だったら諦めよう」
「オッケー。それじゃあ、えい、火魔法!」
おお、木が燃える。燃えていく。
「火力アーップ!」
みるみる内に、木は灰と化した。
「はい、終わったよ」
「よし。では今から水魔法を土の中から湧き上がらせて、間欠泉のように利用してその下のお宝を持ち上げて、土から出してみる。それ」
数秒後。
目の前で水が柱のように湧き出た。
「おー」
感心していると、水の柱から大きなメロンが出てきた。
「メロンだ」
「メロンだね」
「メロンだな」
「お宝じゃなかったね」
「高級品ではあるけどね」
「想像してたものと違うな」
「じゃあ、行こうか」
「うん、行こう」
「時間を使いすぎたな。もっと探索するぞ」
私達はメロンをしまってあるき始めた。
私達のお宝は、どこだー!




